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黒猫の正体
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「アルト?こんなところでどうかしたのか?」
「あ、トーマ」
ここで待ち合わせをしていたトーマがやって来ていた。
さっきまで仕事をしていたのか騎士のカッコいい服だ。
前の服は父との戦いで破れてしまったから新しい服を特注していると言っていたがもう完成したのか。
トーマは俺だけを見ていたが少し目線を下げるとトーマ猫達を見つけた。
柔らかい表情を見せて近付いてくる。
トーマ猫はトーマにも慣れているのか逃げなかった。
「久しぶりだな、子供の頃学園の庭で見つけてからずっと遊んでいたんだ」
「そっか、だからトーマのピンチを教えてくれたんだね」
「…ピンチ?」
トーマと再会した時トーマは寝ていたから猫が導いてくれた事は知らないんだよな。
俺はトーマにあの時の話をした。
「それがなかったら俺はずっと何も知らないまま寝ていたのかもな」とトーマ猫と小さな猫の頭を撫でた。
猫は一鳴きして気持ち良さそうに目を細める。
それにしても不思議な事がある。
俺は子供の頃からこの子達を知っている。
となると長生きだ、飼われてる感じはしないし野良猫にしては長生きだな。
トーマは猫から手を離した。
その顔は驚きに満ちていた。
「アルト、この子達は…」
「……どうかしたの?」
「俺の中の真竜が微かに反応した、この子達は魔獣だ」
「えっ!?」
猫達はシンクロするように首を傾げていてとても愛くるしかった。
こんなに可愛いのにあの怖い魔獣だったなんて…
でも魔獣だって思ったら納得できた。
だから長生きなのかもしれない、俺も少し違和感を感じた……それも俺の中の真竜が反応したからなのかな。
トーマは俺を見て微笑んだ。
俺も大丈夫だと頷いた。
真竜が教えてくれる、この子達の事…
「この子達は悪い魔獣じゃないよ、元々魔獣に悪い奴はいない」
「……全部、魔獣の強い力を利用しようとしたシグナムが悪いんだ」
それはシグナム家に生まれたからには背負わなくてはいけない罪。
猫達は走ってまた何処かに向かっていった。
少し歩くと海の音と磯の香りが鼻孔をくすぐる。
知らなかった、王都は森だけではなく海もあるなんて…
トーマは俺に見せたいと教えてくれた、他にも知っている人は沢山いるだろうが今は俺とトーマの二人だけの秘密の場所のようにドキドキする。
街灯だけで照らされた暗闇の中だからか、余計そう思うのだろうな。
海に星が反射してキラキラ光っていた。
「綺麗だね」
「……そうだな」
「………」
「………」
お互いそれ以上は口にしなかったが自然と手が触れて絡み合う。
寒い夜風も全身が温かくなるような気がした。
生前の世界ではきっともうすぐクリスマスの季節かな。
この世界でもクリスマスという名前ではないがそういうイベントがある。
王国民感謝祭とかそんな名前だった気がする。
残念ながらその日は王都全体の盛大な祭で、修復作業を一旦休み嫌な事を忘れようと大盛り上がりだった。
一旦休むのは国民だけで騎士達は祭を楽しく安全に過ごすために見回りをしなくてはいけないらしい。
とはいえ全員は可哀想だからトーマとノエルとグランのみが見回りをするらしい。
3人だけでいいのは、きっと平和な王都が戻って来たからだって思う。
クリスマス…初めての恋人と過ごしたいとは勿論思っている。
でもトーマは仕事だから無理を言えない。
だから、これだけはいいかな。
「トーマ、感謝祭が終わったら二人だけの感謝祭をしたい……ダメかな?」
「二人だけの?」
「うん、美味しい料理を用意してトーマの部屋で待っていたい」
「ダメなわけないだろ?」
トーマの手が俺の頬に触れ、瞳を閉じた。
おでことおでこを合わせるとトーマの考えてる事が分かる気がした。
お互いの薬指には光る指輪が俺達の未来を写していた。
魔法学園でも料理部という部活に入っているからトーマが好きそうな料理を学ぼう。
最近忙しくてしてなかったから……とか変な事を考えて顔を赤くする。
何考えてるんだ俺は!別の事を考えよう、えーっと…えーっと…
「アルト、大丈夫か?寒い?」
「えっ!?うん!大丈夫気にしないで!」
「…もう戻ろうか」
せっかく景色がいいのに気を使わせてしまった。
「あ、トーマ」
ここで待ち合わせをしていたトーマがやって来ていた。
さっきまで仕事をしていたのか騎士のカッコいい服だ。
前の服は父との戦いで破れてしまったから新しい服を特注していると言っていたがもう完成したのか。
トーマは俺だけを見ていたが少し目線を下げるとトーマ猫達を見つけた。
柔らかい表情を見せて近付いてくる。
トーマ猫はトーマにも慣れているのか逃げなかった。
「久しぶりだな、子供の頃学園の庭で見つけてからずっと遊んでいたんだ」
「そっか、だからトーマのピンチを教えてくれたんだね」
「…ピンチ?」
トーマと再会した時トーマは寝ていたから猫が導いてくれた事は知らないんだよな。
俺はトーマにあの時の話をした。
「それがなかったら俺はずっと何も知らないまま寝ていたのかもな」とトーマ猫と小さな猫の頭を撫でた。
猫は一鳴きして気持ち良さそうに目を細める。
それにしても不思議な事がある。
俺は子供の頃からこの子達を知っている。
となると長生きだ、飼われてる感じはしないし野良猫にしては長生きだな。
トーマは猫から手を離した。
その顔は驚きに満ちていた。
「アルト、この子達は…」
「……どうかしたの?」
「俺の中の真竜が微かに反応した、この子達は魔獣だ」
「えっ!?」
猫達はシンクロするように首を傾げていてとても愛くるしかった。
こんなに可愛いのにあの怖い魔獣だったなんて…
でも魔獣だって思ったら納得できた。
だから長生きなのかもしれない、俺も少し違和感を感じた……それも俺の中の真竜が反応したからなのかな。
トーマは俺を見て微笑んだ。
俺も大丈夫だと頷いた。
真竜が教えてくれる、この子達の事…
「この子達は悪い魔獣じゃないよ、元々魔獣に悪い奴はいない」
「……全部、魔獣の強い力を利用しようとしたシグナムが悪いんだ」
それはシグナム家に生まれたからには背負わなくてはいけない罪。
猫達は走ってまた何処かに向かっていった。
少し歩くと海の音と磯の香りが鼻孔をくすぐる。
知らなかった、王都は森だけではなく海もあるなんて…
トーマは俺に見せたいと教えてくれた、他にも知っている人は沢山いるだろうが今は俺とトーマの二人だけの秘密の場所のようにドキドキする。
街灯だけで照らされた暗闇の中だからか、余計そう思うのだろうな。
海に星が反射してキラキラ光っていた。
「綺麗だね」
「……そうだな」
「………」
「………」
お互いそれ以上は口にしなかったが自然と手が触れて絡み合う。
寒い夜風も全身が温かくなるような気がした。
生前の世界ではきっともうすぐクリスマスの季節かな。
この世界でもクリスマスという名前ではないがそういうイベントがある。
王国民感謝祭とかそんな名前だった気がする。
残念ながらその日は王都全体の盛大な祭で、修復作業を一旦休み嫌な事を忘れようと大盛り上がりだった。
一旦休むのは国民だけで騎士達は祭を楽しく安全に過ごすために見回りをしなくてはいけないらしい。
とはいえ全員は可哀想だからトーマとノエルとグランのみが見回りをするらしい。
3人だけでいいのは、きっと平和な王都が戻って来たからだって思う。
クリスマス…初めての恋人と過ごしたいとは勿論思っている。
でもトーマは仕事だから無理を言えない。
だから、これだけはいいかな。
「トーマ、感謝祭が終わったら二人だけの感謝祭をしたい……ダメかな?」
「二人だけの?」
「うん、美味しい料理を用意してトーマの部屋で待っていたい」
「ダメなわけないだろ?」
トーマの手が俺の頬に触れ、瞳を閉じた。
おでことおでこを合わせるとトーマの考えてる事が分かる気がした。
お互いの薬指には光る指輪が俺達の未来を写していた。
魔法学園でも料理部という部活に入っているからトーマが好きそうな料理を学ぼう。
最近忙しくてしてなかったから……とか変な事を考えて顔を赤くする。
何考えてるんだ俺は!別の事を考えよう、えーっと…えーっと…
「アルト、大丈夫か?寒い?」
「えっ!?うん!大丈夫気にしないで!」
「…もう戻ろうか」
せっかく景色がいいのに気を使わせてしまった。
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