眠り騎士と悪役令嬢の弟

塩猫

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リンディと再会

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「俺の部下以外はほとんどが英雄ラグナロクと繋がっている」

トーマはそう言いきった、まるで見ていたかのような言葉だ。
それが本当かなんて分からない。
でも俺はトーマが何も考えずにこんな事を言う人じゃないって分かっている。

グランはまだ納得出来てなさそうだが、俺はグランに頷いた。
困った顔をしつつ頷いてくれた。

足を止めようとする英雄ラグナロクを乱暴に引っ張り歩かせる。

「…後で説明するから俺の部屋で待っていてくれ」

トーマにそう言われ頷く。

そして無言で歩き、犯罪者でも英雄ラグナロクだからあまり街の人達に気付かれるのも問題だ。
無駄な混乱を避けるためにも…
だから街を通らずそのまま森を進み抜けたところは寄宿舎の裏庭だった。

森ってここまで続いてたんだ、森自体も入るの初めてだったから知らなかった。

英雄ラグナロクは応接室に向かった。
勿論客ではなく、いろいろと聞き出すためだ。

「…ノエル、お前も来てくれ…いけるか?」

「超余裕だって…歩き回らなければ」

ノエルはニッと笑い、頷いた。

二人の信頼関係がちょっと羨ましいなと思いながら俺はトーマの言う通り部屋で待つ事にした。
寄宿舎には何人か騎士団員がいて何事かと驚いている。
何人かトーマに説明を求めて駆け寄る騎士団員がいたがトーマは後で話すとだけ言い三人で応接室に消えた。

何人か俺を見て嫌な顔をする騎士団員がいたが、俺の後ろからグランが睨んでいたからすぐに目を逸らした。
……なにかあったのだろうか。

「アルト様、俺も行きます」

「…あ、でも…トーマの部屋だし…トーマに聞いてみないと…」

「ですが!!」

「グラン、アルト様を困らせるなよ」

ガリュー先生に襟を掴まれたグランはガリュー先生を睨んでいた。
ガリュー先生の手を叩き襟を直した。

俺は大丈夫だと笑うと、部屋の外で護衛をすると言って一歩も引かないからそれくらいならいいかなと頷いた。
ガリュー先生は「グランに甘いですよ」と呆れられた、そうだろうか…二人が居てくれたら安心するからなんだけどな。

トーマの部屋に行こうとしていたら走る足音が聞こえた。
誰だろうと俺は振り返り俺を守るようにグランとガリュー先生が前に立った。

「あ、あの…」

「リンディ様」

グランがそう言った。

俺は二人の間から前に出た。
そこには少し息を切らしたゲームのヒロインであるリンディがいた。
慌ててやってきたのか、俺になにか用か?

周りは俺がリンディを攻撃したと思っているから警戒して、もし俺が少しでも可笑しな事をしようものなら攻撃出来るように武器を構えていた。
ガリュー先生は姉と一緒にいる時にリンディを見た事があったらしいが、リンディを警戒していた。

「えっと、どうしたの?」

「貴方に、あの時のお礼が言いたくて…」

「…お礼?」

「私の事、助けてくれたから…ありがとうございます」

リンディはぺこっと頭を下げた。
俺は慌てて頭を上げるように言った。

周りは驚いた顔をしていて戸惑っているような声が聞こえた。
俺は周りを気にせずリンディに微笑んだ。
謝らなくていい、あれは俺も悪かったんだから…
俺がいたから騎士さんがやってきて結果リンディを巻き込んでしまった。

俺のその気持ちを伝えるとリンディも「謝らないで下さい」と微笑んだ。

リンディとはいい友達になりそうだと思った。

…姉ともこうやって仲直り出来たらいいのに…

ズキッ…

「くっ…」

「だ、大丈夫!?」

「う、ん…」

なんだ、なにか忘れてる気がする…この違和感って…

グランとガリュー先生に部屋に行こうと体を支えられた。
リンディに見送られ、歩き出す。

グランとガリュー先生は入り口に待機して、俺はトーマが来るまでソファーに座る事にした。

頭が痛い、なにかを思い出すと痛くなる。
でも…忘れちゃいけない大切な事だった筈た。

『分からないのよ、好きになった事がないからどうすればいいか、でも、トーマを大好きって気持ちはぶれないの…だからトーマがいない世界なんて私にとって怖いものでしかない』

『誇りを持て、自分の素晴らしい力を…今ゼロの魔法使いの力を最大限に放出出来る装置を開発している、まずは…国王を襲撃し、国民を従わせよう…従わない国民は見せしめに死刑にする……騎士団は皆殺しだ』

『お父様からトーマを助けたい!』

脳内に流れ込んでくる知らない映像と知らない姉と父の声。
これは、現実なのか?…でも今起きているから夢というのはなにか変だ。

怖い……なんだこれは、知らない映像がどんどん流れてくる。
痛い、暗い、苦しい、助けて…トーマ…
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