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無の世界・トーマ視点
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「バッドエンド?」
俺はそう呟いていた。
そして俺が今いる場所を見て驚いていた。
何もない真っ暗な空間、その場所は見覚えがあった。
俺が英雄ラグナロクと戦った時に見た夢の空間だ。
俺はどうなったんだ?死んだのか?
じゃあここは死んだ奴が来る場所?
周りを見渡しても誰もいない、歩いても同じ暗闇が続いていた。
確かあの時は変な子供がいて光が見えて…
しかしいくら歩いても何もない。
進んでるのか分からない、時間も分からない。
永遠に続くような道を歩き続けていた。
不思議な場所だ、いくら歩いても疲れない。
しかし精神的には同じ背景でうんざりする。
小さな光が目の前に現れて駆け足で近付く。
てっきりあの子供がいるかと思ったが子供はいなかった。
代わりにぽつんと機械が置かれていた。
この機械はあの少年が持っていたものだ。
手に取り画面を見つめる。
暗い中に光が集中しているからか目が悪くなりそうだ。
画面は上にスクロールされて文字が書かれていた。
読めない、異国の文字か?
耳をすますと悲しげな音楽が流れていた。
なんだこれは、この前と違う。
試しにボタンを押すと画面のスクロールが消えた。
そして文字といつしか見た絵が写っていた。
適当にボタンを押しても何も変わらず首を傾げた。
「それ、スタートボタン押さないと変わらないぞ」
「!?」
突然後ろから声が聞こえて驚いて後ろを見た。
するとそこにはあの時のフードを被った子供が立っていた。
いつの間に現れたんだ?気配は感じなかった。
子供は俺から機械を取り上げた。
そして何度かポチポチとボタンを押している。
何をしてるのか分からず黙って見ていたら機械を渡された。
それはリンディが馬車に乗っている絵だった。
リンディの声が聞こえる、話からしてリンディが王都に来る前のような気がする。
「立ってやるのもしんどくない?座って座って」
別に疲れは感じないからしんどくはないが、子供に肩を押され仕方なく座る。
こんなところでのんびりしててもいいのか微妙だが、もう死んだなら慌てる必要もないか。
ポチポチとボタンを押すと話が進んでいく。
この機械は過去の映像を流すものだろうか、死んだら走馬灯というのを見ると誰かから聞いた事があったが、それだろうか。
途中で変なものが現れて戸惑っていると、横から子供が「これは選択肢って言ってヒロイン…あーこの子ね、ヒロインが考えそうな答えを選択してくんだよ」と言われた。
リンディが考えそうな事?そうは言っても俺はリンディではないから何がリンディらしいのかよく分からない。
とりあえず選択した。
するの話は進んでいった。
子供がコップに飲み物を注いで俺に渡した。
「茶菓子もあるよ」
「……何故、俺にこんな事をさせるんだ?」
「うーん、君のせいでアルトが死んだから?」
その声は棘があり、俺に突き刺さった。
本当の事で子供の顔が見れず画面を見つめた。
画面には俺とリンディが出会ったシーンが映し出されていた。
この時はまさかあんな事になるなんて思わなかった。
この少年はあの場にいなかったのに全てを知っているように思えた。
リンディの心の声が書いてある…普段リンディはこんな事を考えていたのか。
…姫の心の声が分かればいいのにと思った。
しかし過去の映像なのにヴィクトリアは出るが姫は出なかった。
しかもリンディを姫と呼んでいた、確かにリンディは姫だけど…俺にとっての姫はあの子だけなんだ。
「なぁ、これは過去の話ではないのか?ひ…アルトがいない」
「ん?あー、だってそれノエルルートに入ってるもん」
ノエル?何故ノエルの名前が出る?
もしかしてやたらリンディの前に現れるなよなよした気持ち悪い男がノエルなのか?
俺の知るノエルではなくて戸惑う。
これは何処までが過去に忠実なんだ?
また子供に機械を取られ「もう一回やり直し!」とまたリンディが馬車に乗っている場面を見せられた。
かなりあそこまで話を進めるのに時間が掛かったのにとため息を吐く。
ポチポチと進めると子供がぽりぽりとクッキーをかじりながらこちらを見ていた。
「アルトに会いたければトーマに好意的な選択をすればいいよ、自分なんだからどう言われたら嬉しいか分かるだろ?」
俺が嬉しい言葉?もしかしてこの「トーマの訓練に付き合う」「トーマと話す」とかいうやつか?
リンディなら、別に…だが…それが姫だったらと考えよう。
姫と一緒にいられるならどれでもいいが、訓練はちょっと姫は危ないと思うからのんびりと話したい。
……のんびりと…
選択すると画面の向こうの俺は嬉しそうだった、これでいいのか?
よく分からずまた選択が出たらさっきのように進めていく。
するとさっきまではノエルだったのに俺といる事が増えたような気がした。
そして姫そっくりな子が出てきた。
「なぁ、姫が…」
「ん、そーだねぇ」
子供はアドバイスをしたくせに興味なさそうにクッキを食べていた。
しかし姫は出てきたが性格が真逆だった。
姫はこんな酷い事をするような子ではない。
姫の容姿でアルトと名乗っているが俺は別人だと思っていた。
しかし偽アルトが出てきてから偽アルトに否定的な選択肢しか出てこなくて、周りの騎士達も偽アルトに冷たかった。
同じ容姿だからか少し可哀想に思っていたら画面の向こう側の俺の手でアルトは死んだ。
そして前に見た時と同じようにリンディとハッピーエンドになった。
ゲームを床に置くと飲み物を飲む音が聞こえた。
「ぷはぁ!やっぱりクッキーには熱いお茶だよねー!」
「…これは本当に過去の話なのか?俺はリンディと結婚していないし、王都は…」
「本来なら王都に平和が訪れて君はリンディと結婚して子供作って、喫茶店…だっけ?やっていた筈なんだよ…あの子が転生する前はそれが約束されていた」
「…あの子って、アルトか?」
「そう、アルト…アルトは本当はこの世界とは違う、別の世界の人間だった…魔法なんて使わない平和な国、でもあの子は不幸だった…僅か17歳で死んでしまったんだ」
子供は一つ一つ語りかけた。
姫が生前していたゲームという娯楽の機械に俺達がいた事…そのゲームの結末を変えるために彼はこの世界に転生して一人で頑張っていた事…
俺は何も知らなかった。
子供は可哀想な生前の姫を見て今度こそ幸せになってほしくて俺の前に現れた。
自分が作り物なのかもしれないと聞き、ショックを受けるかと思ったが意外に冷静な自分に驚いた。
…俺は姫と出会って毎日がドキドキして、時に悲しくなり怒る時もあった。
全て姫と出会ったからだ、それはリンディと会って結婚しても同じ感情は芽生えなかっただろう。
俺はゲームのキャラではない、生きている…だから俺は姫が現れて後悔なんてしない…もう君がいない世界は考えられないから…
「さすがの僕も本物のアルトがいるなんて思わなかったよ、まぁゲームのバグを修正するのは開発者としては当然か」
「…バグ?」
「そう、君達の事を邪魔してアルトを殺したがっていた男いたでしょ?アイツは君とリンディをくっつけようとしてたわけだよ」
ふと思い出すのは俺をシグナムの元に案内したあの男だ。
確かに邪魔ばかりしていたな、そうか…このゲームのようにアルトを殺してゲーム通りに俺とリンディが結婚する事を望んでいたのか。
俺の意思は無視か…アルトが死んでも俺の心はアルトから離れないのに…
子供がクッキーを一掴みして俺の口に押し付けた。
さすがに量が多いと子供の腕を掴むと手を離した。
ぽろぽろとクッキーは落ちて口を拭う。
「何処でバッドエンドの選択肢を選んだと思う?」
「…ゲームじゃない、選択肢なんて」
「あったんだよ、どうあがいてもバッドエンドになってしまう選択肢を君は選んだ」
子供はそう言い俺の頭に手を乗せた。
手からじわじわと暖かな温もりを感じた。
この子供はきっと神の化身なのだろう、じゃないとこんな事出来るわけがない。
神はいないと思っていたが、信じてみようと思った。
暗い空間全体が真っ白に変わる。
子供の顔がはっきりと見えた。
まだ10もいかない幼い少年の顔をしていた。
『たった一度だけ、ゲームをコンテニューしてあげる…今度はちゃんとアルトを幸せにしてよね、眠り騎士さん』
俺はそう呟いていた。
そして俺が今いる場所を見て驚いていた。
何もない真っ暗な空間、その場所は見覚えがあった。
俺が英雄ラグナロクと戦った時に見た夢の空間だ。
俺はどうなったんだ?死んだのか?
じゃあここは死んだ奴が来る場所?
周りを見渡しても誰もいない、歩いても同じ暗闇が続いていた。
確かあの時は変な子供がいて光が見えて…
しかしいくら歩いても何もない。
進んでるのか分からない、時間も分からない。
永遠に続くような道を歩き続けていた。
不思議な場所だ、いくら歩いても疲れない。
しかし精神的には同じ背景でうんざりする。
小さな光が目の前に現れて駆け足で近付く。
てっきりあの子供がいるかと思ったが子供はいなかった。
代わりにぽつんと機械が置かれていた。
この機械はあの少年が持っていたものだ。
手に取り画面を見つめる。
暗い中に光が集中しているからか目が悪くなりそうだ。
画面は上にスクロールされて文字が書かれていた。
読めない、異国の文字か?
耳をすますと悲しげな音楽が流れていた。
なんだこれは、この前と違う。
試しにボタンを押すと画面のスクロールが消えた。
そして文字といつしか見た絵が写っていた。
適当にボタンを押しても何も変わらず首を傾げた。
「それ、スタートボタン押さないと変わらないぞ」
「!?」
突然後ろから声が聞こえて驚いて後ろを見た。
するとそこにはあの時のフードを被った子供が立っていた。
いつの間に現れたんだ?気配は感じなかった。
子供は俺から機械を取り上げた。
そして何度かポチポチとボタンを押している。
何をしてるのか分からず黙って見ていたら機械を渡された。
それはリンディが馬車に乗っている絵だった。
リンディの声が聞こえる、話からしてリンディが王都に来る前のような気がする。
「立ってやるのもしんどくない?座って座って」
別に疲れは感じないからしんどくはないが、子供に肩を押され仕方なく座る。
こんなところでのんびりしててもいいのか微妙だが、もう死んだなら慌てる必要もないか。
ポチポチとボタンを押すと話が進んでいく。
この機械は過去の映像を流すものだろうか、死んだら走馬灯というのを見ると誰かから聞いた事があったが、それだろうか。
途中で変なものが現れて戸惑っていると、横から子供が「これは選択肢って言ってヒロイン…あーこの子ね、ヒロインが考えそうな答えを選択してくんだよ」と言われた。
リンディが考えそうな事?そうは言っても俺はリンディではないから何がリンディらしいのかよく分からない。
とりあえず選択した。
するの話は進んでいった。
子供がコップに飲み物を注いで俺に渡した。
「茶菓子もあるよ」
「……何故、俺にこんな事をさせるんだ?」
「うーん、君のせいでアルトが死んだから?」
その声は棘があり、俺に突き刺さった。
本当の事で子供の顔が見れず画面を見つめた。
画面には俺とリンディが出会ったシーンが映し出されていた。
この時はまさかあんな事になるなんて思わなかった。
この少年はあの場にいなかったのに全てを知っているように思えた。
リンディの心の声が書いてある…普段リンディはこんな事を考えていたのか。
…姫の心の声が分かればいいのにと思った。
しかし過去の映像なのにヴィクトリアは出るが姫は出なかった。
しかもリンディを姫と呼んでいた、確かにリンディは姫だけど…俺にとっての姫はあの子だけなんだ。
「なぁ、これは過去の話ではないのか?ひ…アルトがいない」
「ん?あー、だってそれノエルルートに入ってるもん」
ノエル?何故ノエルの名前が出る?
もしかしてやたらリンディの前に現れるなよなよした気持ち悪い男がノエルなのか?
俺の知るノエルではなくて戸惑う。
これは何処までが過去に忠実なんだ?
また子供に機械を取られ「もう一回やり直し!」とまたリンディが馬車に乗っている場面を見せられた。
かなりあそこまで話を進めるのに時間が掛かったのにとため息を吐く。
ポチポチと進めると子供がぽりぽりとクッキーをかじりながらこちらを見ていた。
「アルトに会いたければトーマに好意的な選択をすればいいよ、自分なんだからどう言われたら嬉しいか分かるだろ?」
俺が嬉しい言葉?もしかしてこの「トーマの訓練に付き合う」「トーマと話す」とかいうやつか?
リンディなら、別に…だが…それが姫だったらと考えよう。
姫と一緒にいられるならどれでもいいが、訓練はちょっと姫は危ないと思うからのんびりと話したい。
……のんびりと…
選択すると画面の向こうの俺は嬉しそうだった、これでいいのか?
よく分からずまた選択が出たらさっきのように進めていく。
するとさっきまではノエルだったのに俺といる事が増えたような気がした。
そして姫そっくりな子が出てきた。
「なぁ、姫が…」
「ん、そーだねぇ」
子供はアドバイスをしたくせに興味なさそうにクッキを食べていた。
しかし姫は出てきたが性格が真逆だった。
姫はこんな酷い事をするような子ではない。
姫の容姿でアルトと名乗っているが俺は別人だと思っていた。
しかし偽アルトが出てきてから偽アルトに否定的な選択肢しか出てこなくて、周りの騎士達も偽アルトに冷たかった。
同じ容姿だからか少し可哀想に思っていたら画面の向こう側の俺の手でアルトは死んだ。
そして前に見た時と同じようにリンディとハッピーエンドになった。
ゲームを床に置くと飲み物を飲む音が聞こえた。
「ぷはぁ!やっぱりクッキーには熱いお茶だよねー!」
「…これは本当に過去の話なのか?俺はリンディと結婚していないし、王都は…」
「本来なら王都に平和が訪れて君はリンディと結婚して子供作って、喫茶店…だっけ?やっていた筈なんだよ…あの子が転生する前はそれが約束されていた」
「…あの子って、アルトか?」
「そう、アルト…アルトは本当はこの世界とは違う、別の世界の人間だった…魔法なんて使わない平和な国、でもあの子は不幸だった…僅か17歳で死んでしまったんだ」
子供は一つ一つ語りかけた。
姫が生前していたゲームという娯楽の機械に俺達がいた事…そのゲームの結末を変えるために彼はこの世界に転生して一人で頑張っていた事…
俺は何も知らなかった。
子供は可哀想な生前の姫を見て今度こそ幸せになってほしくて俺の前に現れた。
自分が作り物なのかもしれないと聞き、ショックを受けるかと思ったが意外に冷静な自分に驚いた。
…俺は姫と出会って毎日がドキドキして、時に悲しくなり怒る時もあった。
全て姫と出会ったからだ、それはリンディと会って結婚しても同じ感情は芽生えなかっただろう。
俺はゲームのキャラではない、生きている…だから俺は姫が現れて後悔なんてしない…もう君がいない世界は考えられないから…
「さすがの僕も本物のアルトがいるなんて思わなかったよ、まぁゲームのバグを修正するのは開発者としては当然か」
「…バグ?」
「そう、君達の事を邪魔してアルトを殺したがっていた男いたでしょ?アイツは君とリンディをくっつけようとしてたわけだよ」
ふと思い出すのは俺をシグナムの元に案内したあの男だ。
確かに邪魔ばかりしていたな、そうか…このゲームのようにアルトを殺してゲーム通りに俺とリンディが結婚する事を望んでいたのか。
俺の意思は無視か…アルトが死んでも俺の心はアルトから離れないのに…
子供がクッキーを一掴みして俺の口に押し付けた。
さすがに量が多いと子供の腕を掴むと手を離した。
ぽろぽろとクッキーは落ちて口を拭う。
「何処でバッドエンドの選択肢を選んだと思う?」
「…ゲームじゃない、選択肢なんて」
「あったんだよ、どうあがいてもバッドエンドになってしまう選択肢を君は選んだ」
子供はそう言い俺の頭に手を乗せた。
手からじわじわと暖かな温もりを感じた。
この子供はきっと神の化身なのだろう、じゃないとこんな事出来るわけがない。
神はいないと思っていたが、信じてみようと思った。
暗い空間全体が真っ白に変わる。
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