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惨劇・トーマ視点
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城内は思ったより慌てていて、俺だけではなく周りも仲間を疑いだしていた。
俺はいなくなった状況をまず聞きたくて英雄ラグナロクを拘束していた看守を探した。
……しかし、俺が知っている看守の顔は何処にもいなかった。
そうか、アイツまでグルだったのか。
きっとこの混乱に紛れて逃げたのだろう。
城にいた俺の部下は全員いる事を確認して、今後の作戦を立てようと戻ろうとした時だった。
俺の隣にいた騎士が小さく呻き声を上げた。
それを確認するまでもなく、騎士は倒れた。
床に真っ赤な水溜まりが出来ていた。
俺達はいっせいに剣を構えた。
口元を歪ませて笑い俺を見るさっき探していた看守がそこにいた。
看守が手にした剣から真っ赤な血が滴り落ちていた。
「お前…」
「この国のため、この腐った世を正すため…英雄様ばんざい」
ぶつぶつと口にする気味の悪い看守を睨む。
ぶらぶらと力のない腕で剣を持っているかと思ったら看守は俺に向かって剣を振り下ろした。
寸前で剣で止めた。
城内で血生臭い戦闘は避けたいが、外に出ろと言って聞くような男には思えない。
剣を叩きつけるように俺の大剣にぶつけている。
他の騎士達もめちゃくちゃな戦い方をしている看守に近付けず緊張が走る。
俺は看守を押し退け峰打ちしようと剣を握る手に力を込めた。
「トーマ様!」と仲間の騎士が叫ぶ声がした。
誰かがトーマの背後に立っているのは背中に突き刺さる殺気で分かった。
しかし看守に気を取られていて背後まで防御するのは難しい。
シールド魔法を使う暇もなかった。
仲間の騎士達は俺が動きやすいように邪魔にならないように遠くにいたから今から助けに向かっても間に合わない。
もう一人いたなんて迂闊だった、何処かに隠れていたのだろう。
トーマは仕方なく大剣に力を込めて看守を峰打ちした。
看守が大剣の衝撃で腹を押さえ崩れた。
すぐに後ろを振り返ったら、後ろでも英雄ラグナロクの元部下である男が倒れていた。
騎士達は俺の身を案じて駆け寄ってくる。
「トーマ様大丈夫ですか?」
「…平気だ、グランありがとう」
「………いえ」
背後にいた奴を倒したのはグランだった。
得意の武術で殴って気絶させたのだろう。
死んでしまった俺の部下を弔ってやりたいが英雄ラグナロクの元部下を全て捕らえなくては騎士だけではない、今度は国民までに被害が及ぶかもしれない。
数人の部下に彼を安らかに寝かせてくれと頼み、他の騎士達と共に寄宿舎に戻るため走る。
もうノエルに書類が渡った頃だろう、なにか分かると思っていた。
目の前の光景を見るまでは………
目の前で真っ赤に揺れるものを呆然と見つめる。
部下が数人崩れ去る。
血の気が引いた。
嫌な事というのはよく重なるものだ。
「リンディ様ぁ!!」という声が聞こえる。
そういえば騎士の数人がリンディに恋しているとノエルが楽しげに話していたっけ…
まるで非現実のように受け入れられない現実に俺は近付いていく。
すぐに後ろにいたグランに腕を捕まれ止められる。
「離せ、グラン…」
「貴方まで死んだら誰がこの惨事を解決するのですか?」
冷静にグランはそう言うが内心俺同様に冷静ではないのだろう。
俺を掴む手が小刻みに震えていた。
グランはリカルドとよく一緒にいた、仲が良かったのかもしれない。
俺は目の前に迫る炎に焼かれた寄宿舎を眺めた。
もしかしたら、もしかしたら…運よく皆避難してるかもしれない。
そうだ、そう信じよう…じゃなくては俺は戦えなくなってしまう。
多くの部下を失い、幼馴染みを…親友を失ったなんて…そんな事…
姫は…アルトだけは助けなくては…
その時だった、耳を塞ぎたくなるような大きな爆発音がした。
地面も小刻みに揺れている、相当な爆発だと分かる。
街の中心地から黒い煙が見えた。
もしかして英雄ラグナロクがなにか仕掛けたのか!?
そう思っていたがグランが「あれは?」と呟き皆グランが見ている空を見た。
そして目を見開いた。
空を覆い尽くすように蠢く黒鳥のような物体。
一瞬なにか分からなかったがすぐに魔獣だと分かった。
あんなに大量な数、見た事がない。
そして魔獣が現れている場所には巨大な魔法陣が空を覆っていた。
あの黄色い魔法陣には見覚えがあった。
「……あ、ると?」
あれはゼロの魔法使いの力を発揮する時に現れた魔法陣だ。
しかし可笑しい、あんな大きな魔法陣初めてみた。
アルトになにかが起こっている、そう感じた。
街を襲っているのは魔獣のようで、英雄ラグナロクは魔獣を飼ってはいない筈だ…魔獣を従わせる術を知らないから…
ならばかつて魔獣で英雄ラグナロクと戦ったシグナム家だろう、それならアルトがいるのも納得だ。
この混乱に気付いて王都が崩れていく隙に王都を恐怖で支配しようとしているのか。
「トーマ様、ご命令を」
リンディの死が受け入れられない顔をしつつも皆、王都を救おうという強い瞳を向ける。
敵は二つ、英雄ラグナロクとシグナム…この混乱に紛れて他国の騎士が攻めてきたら王都は終わる。
早くこの最悪な地獄をどうにかしなくては…
とりあえず街に向かおうと全員で歩き出した。
俺はいなくなった状況をまず聞きたくて英雄ラグナロクを拘束していた看守を探した。
……しかし、俺が知っている看守の顔は何処にもいなかった。
そうか、アイツまでグルだったのか。
きっとこの混乱に紛れて逃げたのだろう。
城にいた俺の部下は全員いる事を確認して、今後の作戦を立てようと戻ろうとした時だった。
俺の隣にいた騎士が小さく呻き声を上げた。
それを確認するまでもなく、騎士は倒れた。
床に真っ赤な水溜まりが出来ていた。
俺達はいっせいに剣を構えた。
口元を歪ませて笑い俺を見るさっき探していた看守がそこにいた。
看守が手にした剣から真っ赤な血が滴り落ちていた。
「お前…」
「この国のため、この腐った世を正すため…英雄様ばんざい」
ぶつぶつと口にする気味の悪い看守を睨む。
ぶらぶらと力のない腕で剣を持っているかと思ったら看守は俺に向かって剣を振り下ろした。
寸前で剣で止めた。
城内で血生臭い戦闘は避けたいが、外に出ろと言って聞くような男には思えない。
剣を叩きつけるように俺の大剣にぶつけている。
他の騎士達もめちゃくちゃな戦い方をしている看守に近付けず緊張が走る。
俺は看守を押し退け峰打ちしようと剣を握る手に力を込めた。
「トーマ様!」と仲間の騎士が叫ぶ声がした。
誰かがトーマの背後に立っているのは背中に突き刺さる殺気で分かった。
しかし看守に気を取られていて背後まで防御するのは難しい。
シールド魔法を使う暇もなかった。
仲間の騎士達は俺が動きやすいように邪魔にならないように遠くにいたから今から助けに向かっても間に合わない。
もう一人いたなんて迂闊だった、何処かに隠れていたのだろう。
トーマは仕方なく大剣に力を込めて看守を峰打ちした。
看守が大剣の衝撃で腹を押さえ崩れた。
すぐに後ろを振り返ったら、後ろでも英雄ラグナロクの元部下である男が倒れていた。
騎士達は俺の身を案じて駆け寄ってくる。
「トーマ様大丈夫ですか?」
「…平気だ、グランありがとう」
「………いえ」
背後にいた奴を倒したのはグランだった。
得意の武術で殴って気絶させたのだろう。
死んでしまった俺の部下を弔ってやりたいが英雄ラグナロクの元部下を全て捕らえなくては騎士だけではない、今度は国民までに被害が及ぶかもしれない。
数人の部下に彼を安らかに寝かせてくれと頼み、他の騎士達と共に寄宿舎に戻るため走る。
もうノエルに書類が渡った頃だろう、なにか分かると思っていた。
目の前の光景を見るまでは………
目の前で真っ赤に揺れるものを呆然と見つめる。
部下が数人崩れ去る。
血の気が引いた。
嫌な事というのはよく重なるものだ。
「リンディ様ぁ!!」という声が聞こえる。
そういえば騎士の数人がリンディに恋しているとノエルが楽しげに話していたっけ…
まるで非現実のように受け入れられない現実に俺は近付いていく。
すぐに後ろにいたグランに腕を捕まれ止められる。
「離せ、グラン…」
「貴方まで死んだら誰がこの惨事を解決するのですか?」
冷静にグランはそう言うが内心俺同様に冷静ではないのだろう。
俺を掴む手が小刻みに震えていた。
グランはリカルドとよく一緒にいた、仲が良かったのかもしれない。
俺は目の前に迫る炎に焼かれた寄宿舎を眺めた。
もしかしたら、もしかしたら…運よく皆避難してるかもしれない。
そうだ、そう信じよう…じゃなくては俺は戦えなくなってしまう。
多くの部下を失い、幼馴染みを…親友を失ったなんて…そんな事…
姫は…アルトだけは助けなくては…
その時だった、耳を塞ぎたくなるような大きな爆発音がした。
地面も小刻みに揺れている、相当な爆発だと分かる。
街の中心地から黒い煙が見えた。
もしかして英雄ラグナロクがなにか仕掛けたのか!?
そう思っていたがグランが「あれは?」と呟き皆グランが見ている空を見た。
そして目を見開いた。
空を覆い尽くすように蠢く黒鳥のような物体。
一瞬なにか分からなかったがすぐに魔獣だと分かった。
あんなに大量な数、見た事がない。
そして魔獣が現れている場所には巨大な魔法陣が空を覆っていた。
あの黄色い魔法陣には見覚えがあった。
「……あ、ると?」
あれはゼロの魔法使いの力を発揮する時に現れた魔法陣だ。
しかし可笑しい、あんな大きな魔法陣初めてみた。
アルトになにかが起こっている、そう感じた。
街を襲っているのは魔獣のようで、英雄ラグナロクは魔獣を飼ってはいない筈だ…魔獣を従わせる術を知らないから…
ならばかつて魔獣で英雄ラグナロクと戦ったシグナム家だろう、それならアルトがいるのも納得だ。
この混乱に気付いて王都が崩れていく隙に王都を恐怖で支配しようとしているのか。
「トーマ様、ご命令を」
リンディの死が受け入れられない顔をしつつも皆、王都を救おうという強い瞳を向ける。
敵は二つ、英雄ラグナロクとシグナム…この混乱に紛れて他国の騎士が攻めてきたら王都は終わる。
早くこの最悪な地獄をどうにかしなくては…
とりあえず街に向かおうと全員で歩き出した。
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