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トーマの限界・トーマ視点
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誰もいない訓練所で素振りの音が響いた。
足を踏み出し、的に向かって切りつける。
頬から汗がポタポタと床に落ちる。
やはり魔力をコントロールした方がアルトを守れるような気がする。
でも時間は掛けられない、いちいち寝てるわけにもいかない。
でも、数をこなす以外の方法が思い付かない。
『俺はお姫様を助けるために強くなる、再びこの手で抱き締めるために…アルトを迎えにいくために』
リンディに言った言葉は嘘じゃない、アルトを迎えに行くために強くなると決めた。
お姫様を助けるのは騎士の役目だと児童書でも書いてある。
絶対に助けに行く。
もう少し強い的にしないと手応えがない。
新しい的の人形を用意した。
この人形は鉄で作られた人形でちょっとの事じゃ壊れない。
あのシグナム家の事だ、鉄人形の騎士とか居そうだし…
剣を振り上げると大きな音がした。
これならすぐに壊れないだろう。
何度か剣で切る…というよりは叩いていた。
鉄が削れてヒビが入る。
脆い…今度は魔道具でも着せるか。
最後に思いっきり振ると鉄人形が真っ二つに割れた。
地面に響く重い音がした。
隅に置いてあったタオルを取り、容器に入った水で水分補給する。
一息ついて窓を見た。
もう夕方か、一度飯を食べに寄宿舎に戻ってからもう一度訓練所に来よう。
食べないとリンディやノエルが心配するしなと苦笑いして訓練所を出た。
ついでに魔道具もノエルに借りてこようと思い、ふと足を止めた。
何やら寄宿舎の近くで声が聞こえる。
騎士団員とリンディ以外は寄宿舎に滅多に人が来ない筈だが、誰が来たんだ?と気になり近付いた。
声の主達は話に夢中で俺に気付いていなかった。
あれは確か来て日が浅い騎士ではなかったか?
グランの拳から逃れた奴の中で一番姫を敵視していた。
確かリンディに惚れてるって誰かが言っていたな、二人いるからどっちか分からないが…
そしてそんな騎士は今まさに姫に剣を向けていた。
何故姫がこんなところにいるかなんて考える暇はなかった。
気が付いたら腰に下げていた剣を引き抜いて魔力を乗せた。
いつもの冷静さなんてなかった。
魔力を放出したら寝てしまうなんてそんなのどうでも良かった。
……ただ、姫を…好きな人を守りたい…それしか頭になかった。
剣を騎士に当てたら姫も巻き込まれる、それだけは分かっていたから地面に剣を突き立てた。
大きな地割れと大地が揺れ突風が吹き荒れた。
しばらく気絶して近付いてこないだろうと思い姫を抱き締めて安全な場所に移動する。
久々だったからか、眠くて辛いが姫を横抱きにして森に歩く。
ここまで離れてれば見つからないだろう。
姫を地面に下ろす、酷い怪我だ…姫が何をしたんだよ。
守れなかったと悔しさでいっぱいになり抱き締める。
…病院に運びたかったが俺の体力はおそらく病院にたどり着く前に力尽きてしまう。
その間に他の騎士が姫になにかするかもしれない、それだけは絶対に嫌だ。
寄宿舎も安心出来ない。
どんなに考えが違えど騎士は仲間だ、恨みたくはない。
でも、このままじゃ姫は体力が持たず死んでしまうかもしれない。
「…せめて1%未満でも、魔力が残っててくれ」
これは3日どころか1週間は寝たきりかもなと苦笑いしつつ、姫の傷口あるズボンを少し破く。
白い肌が赤く痛々しい傷が見えた。
手で触れると痛かったのか、小さく悲鳴を上げた。
我慢してくれと眠る姫の頭を優しく撫でて痛みが少し紛れればいい。
手に集中すると小さな光が溢れてきた。
良かった、まだ力が残っていた。
ガクッと眠気が一気に襲い、息を乱して気合いを入れて治療する。
ダメだ、まだ…まだ治ってない…寝るわけにはいかない!
手の光も消えかかっていた。
「姫、俺が…絶対…に、助けっ」
魔力は尽きて意識もなくなった。
でも、俺は夢を見た…姫の夢だ。
幸せな夢の筈なのに姫は泣いていた。
泣かないでくれ、俺は姫の笑顔が好きなんだから…
足を踏み出し、的に向かって切りつける。
頬から汗がポタポタと床に落ちる。
やはり魔力をコントロールした方がアルトを守れるような気がする。
でも時間は掛けられない、いちいち寝てるわけにもいかない。
でも、数をこなす以外の方法が思い付かない。
『俺はお姫様を助けるために強くなる、再びこの手で抱き締めるために…アルトを迎えにいくために』
リンディに言った言葉は嘘じゃない、アルトを迎えに行くために強くなると決めた。
お姫様を助けるのは騎士の役目だと児童書でも書いてある。
絶対に助けに行く。
もう少し強い的にしないと手応えがない。
新しい的の人形を用意した。
この人形は鉄で作られた人形でちょっとの事じゃ壊れない。
あのシグナム家の事だ、鉄人形の騎士とか居そうだし…
剣を振り上げると大きな音がした。
これならすぐに壊れないだろう。
何度か剣で切る…というよりは叩いていた。
鉄が削れてヒビが入る。
脆い…今度は魔道具でも着せるか。
最後に思いっきり振ると鉄人形が真っ二つに割れた。
地面に響く重い音がした。
隅に置いてあったタオルを取り、容器に入った水で水分補給する。
一息ついて窓を見た。
もう夕方か、一度飯を食べに寄宿舎に戻ってからもう一度訓練所に来よう。
食べないとリンディやノエルが心配するしなと苦笑いして訓練所を出た。
ついでに魔道具もノエルに借りてこようと思い、ふと足を止めた。
何やら寄宿舎の近くで声が聞こえる。
騎士団員とリンディ以外は寄宿舎に滅多に人が来ない筈だが、誰が来たんだ?と気になり近付いた。
声の主達は話に夢中で俺に気付いていなかった。
あれは確か来て日が浅い騎士ではなかったか?
グランの拳から逃れた奴の中で一番姫を敵視していた。
確かリンディに惚れてるって誰かが言っていたな、二人いるからどっちか分からないが…
そしてそんな騎士は今まさに姫に剣を向けていた。
何故姫がこんなところにいるかなんて考える暇はなかった。
気が付いたら腰に下げていた剣を引き抜いて魔力を乗せた。
いつもの冷静さなんてなかった。
魔力を放出したら寝てしまうなんてそんなのどうでも良かった。
……ただ、姫を…好きな人を守りたい…それしか頭になかった。
剣を騎士に当てたら姫も巻き込まれる、それだけは分かっていたから地面に剣を突き立てた。
大きな地割れと大地が揺れ突風が吹き荒れた。
しばらく気絶して近付いてこないだろうと思い姫を抱き締めて安全な場所に移動する。
久々だったからか、眠くて辛いが姫を横抱きにして森に歩く。
ここまで離れてれば見つからないだろう。
姫を地面に下ろす、酷い怪我だ…姫が何をしたんだよ。
守れなかったと悔しさでいっぱいになり抱き締める。
…病院に運びたかったが俺の体力はおそらく病院にたどり着く前に力尽きてしまう。
その間に他の騎士が姫になにかするかもしれない、それだけは絶対に嫌だ。
寄宿舎も安心出来ない。
どんなに考えが違えど騎士は仲間だ、恨みたくはない。
でも、このままじゃ姫は体力が持たず死んでしまうかもしれない。
「…せめて1%未満でも、魔力が残っててくれ」
これは3日どころか1週間は寝たきりかもなと苦笑いしつつ、姫の傷口あるズボンを少し破く。
白い肌が赤く痛々しい傷が見えた。
手で触れると痛かったのか、小さく悲鳴を上げた。
我慢してくれと眠る姫の頭を優しく撫でて痛みが少し紛れればいい。
手に集中すると小さな光が溢れてきた。
良かった、まだ力が残っていた。
ガクッと眠気が一気に襲い、息を乱して気合いを入れて治療する。
ダメだ、まだ…まだ治ってない…寝るわけにはいかない!
手の光も消えかかっていた。
「姫、俺が…絶対…に、助けっ」
魔力は尽きて意識もなくなった。
でも、俺は夢を見た…姫の夢だ。
幸せな夢の筈なのに姫は泣いていた。
泣かないでくれ、俺は姫の笑顔が好きなんだから…
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