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警察からの知らせ

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 景子に背中を押された沙耶は土手を転がり落ちた。

「きゃぁぁぁぁぁ」急斜面で勢いがついた沙耶はそのまま土手の下にある橋の土台に頭を強く打ち付けた。

 そのまま動かなくなった沙耶を呆然と見下ろしていた景子は、我に返ると足元に落ちている沙耶のバッグを拾い上げた。用心して土手を下り、倒れている沙耶の上に屈みこんでゆすってみた。

「沙耶、ちょっと起きなさいよ大袈裟なんだから」

 沙耶は動かない。すると沙耶の額から一筋の血が流れてきた。景子は思わず立ち上がったがその顔は青ざめていた。

「あ、あんたが馨さんを諦めないから悪いのよ」

 持っていた沙耶のバッグを放り投げて、辺りを確認した景子は足早にその場を立ち去った。


_______


「沙耶さん遅いねぇ」
「まぁもうそろそろ戻ってくるだろう、先に食べていよう」

 義久と結花は夕食を前に沙耶の帰りを待っていた。沙耶が出掛けてから3時間ほど経っていた。

「夕食前には戻るって言ってたんだけどな」

 22時を過ぎると馨が帰宅した。

「え、沙耶が帰ってこない?」
「うん、ちょっと用事が出来たって出掛けて行ったんだけど・・」

「どこへ行くか言ってなかったのか?」
「言ってなかった。夕食には戻れると思うって言ってただけで」

 馨はスマホを取り出して電話をかけてみたが通じない。

「LINEもしてみたんだけど既読もつかないんだ」

 そこへ馨のスマホの着信音が鳴った。「沙耶か?」

『こちらは〇〇警察署の者ですが、そちらは五瀬さんの携帯で間違いないですか?』

 馨の心臓が跳ねた。「そうですが・・」

『石井沙耶さんをご存じですか?』
「はい、妻・・です」

『石井さんが〇〇橋の下で倒れているところを発見されまして都内の病院に搬送されました。今の所、命に別状はありませんがそちらにお越し頂けますか?』

「分かりました、すぐ向かいます。どちらの病院でしょうか?」

 電話を切るのと同時に結花が口を開いた。「沙耶さんどうしたの? 病院ってどういう事?!」

「沙耶が倒れている所を発見されて、〇〇病院に搬送されたそうだ。これから行ってくる」
「私も行く!」

「結花は待ってろ。どういう状況かまだ何も分からないんだ」
「だからこそ行くんじゃない、なんで兄さんはそんなに落ち着いてるの? 心配じゃ・・」

 スマホを持つ馨の手が小さく震えているのに結花は気づいた。

「ごめん、心配だよね。当たり前だよね・・私待ってるから病院に着いたらすぐ電話・・LINEちょうだい」
「分かった。父さんにも伝えておいてくれないか?」
「うん、そうする」

 馨は帰ろうとしていた運転手を呼び留め病院へ急いだ。


____


 受付で聞いた病室に入ると制服を着た警官が二人立っていた。
 ベッドに寝ている沙耶の頭には包帯が巻かれいる。その顔は青白く、人形が横たわっているかのように見えた。

「五瀬ですが、この度はお世話をおかけしました。それで沙耶の容態は?」
「脳震盪を起こしたようだと医者は言っていました、詳しくは担当医から説明を受けて下さい。少しお話をお伺いしたいのですがよろしいですか?」

「はい、構いません」

 住所やら職業を聞かれた後、沙耶との関係を警官は尋ねてきた。

「そうですか、結婚されて同居されているが籍はまだ入れてないということですね」
「奥様が発見されたのは〇〇河の○○橋の下なんですが、そこへ行かれた理由に心当たりはありませんか?」

「私が今朝出掛ける時は予定があるような話はしていませんでした。帰宅すると妹から妻がまだ帰ってないと聞かされて。妹には行き先は告げていないようでしたが夕食には戻ると言っていたそうです」
 
 馨にまた2、3質問をした後、沙耶の意識が戻り次第また事情を聞くと言って警官は帰って行った。
 警官たちと入れ替わりに涼が病室に入って来た。

「馨君、沙耶さんの容体は?」
「まだ眠っている、これから担当医に話を聞きに行く所だ」
「そうですか。遅れてすまない、友人と食事してたんでスマホを切ってたんだ」

 
 担当医は頭部を強打したために脳震とうを起こして意識がまだ戻らないのだろうと説明した。

「馨君、今日は帰った方がいいよ」
「いや、沙耶が目を覚ますまで付いている」

「だけど・・明日は京都に建設予定のホテルについて重要会議があるから・・」
「ああ、くそっ。明日だったか」

「沙耶さんの傍には僕が付いてるよ、会議の資料やなんかは他の秘書でも分かるようになってるから」
「分かった。とりあえず結花が心配してるから電話してから帰るよ」

 運転手を帰らせた馨は、沙耶を心配する心だけを病室に残し自ら車を運転して帰路についた。


 
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