31 / 52
警察からの知らせ
しおりを挟む
景子に背中を押された沙耶は土手を転がり落ちた。
「きゃぁぁぁぁぁ」急斜面で勢いがついた沙耶はそのまま土手の下にある橋の土台に頭を強く打ち付けた。
そのまま動かなくなった沙耶を呆然と見下ろしていた景子は、我に返ると足元に落ちている沙耶のバッグを拾い上げた。用心して土手を下り、倒れている沙耶の上に屈みこんでゆすってみた。
「沙耶、ちょっと起きなさいよ大袈裟なんだから」
沙耶は動かない。すると沙耶の額から一筋の血が流れてきた。景子は思わず立ち上がったがその顔は青ざめていた。
「あ、あんたが馨さんを諦めないから悪いのよ」
持っていた沙耶のバッグを放り投げて、辺りを確認した景子は足早にその場を立ち去った。
_______
「沙耶さん遅いねぇ」
「まぁもうそろそろ戻ってくるだろう、先に食べていよう」
義久と結花は夕食を前に沙耶の帰りを待っていた。沙耶が出掛けてから3時間ほど経っていた。
「夕食前には戻るって言ってたんだけどな」
22時を過ぎると馨が帰宅した。
「え、沙耶が帰ってこない?」
「うん、ちょっと用事が出来たって出掛けて行ったんだけど・・」
「どこへ行くか言ってなかったのか?」
「言ってなかった。夕食には戻れると思うって言ってただけで」
馨はスマホを取り出して電話をかけてみたが通じない。
「LINEもしてみたんだけど既読もつかないんだ」
そこへ馨のスマホの着信音が鳴った。「沙耶か?」
『こちらは〇〇警察署の者ですが、そちらは五瀬さんの携帯で間違いないですか?』
馨の心臓が跳ねた。「そうですが・・」
『石井沙耶さんをご存じですか?』
「はい、妻・・です」
『石井さんが〇〇橋の下で倒れているところを発見されまして都内の病院に搬送されました。今の所、命に別状はありませんがそちらにお越し頂けますか?』
「分かりました、すぐ向かいます。どちらの病院でしょうか?」
電話を切るのと同時に結花が口を開いた。「沙耶さんどうしたの? 病院ってどういう事?!」
「沙耶が倒れている所を発見されて、〇〇病院に搬送されたそうだ。これから行ってくる」
「私も行く!」
「結花は待ってろ。どういう状況かまだ何も分からないんだ」
「だからこそ行くんじゃない、なんで兄さんはそんなに落ち着いてるの? 心配じゃ・・」
スマホを持つ馨の手が小さく震えているのに結花は気づいた。
「ごめん、心配だよね。当たり前だよね・・私待ってるから病院に着いたらすぐ電話・・LINEちょうだい」
「分かった。父さんにも伝えておいてくれないか?」
「うん、そうする」
馨は帰ろうとしていた運転手を呼び留め病院へ急いだ。
____
受付で聞いた病室に入ると制服を着た警官が二人立っていた。
ベッドに寝ている沙耶の頭には包帯が巻かれいる。その顔は青白く、人形が横たわっているかのように見えた。
「五瀬ですが、この度はお世話をおかけしました。それで沙耶の容態は?」
「脳震盪を起こしたようだと医者は言っていました、詳しくは担当医から説明を受けて下さい。少しお話をお伺いしたいのですがよろしいですか?」
「はい、構いません」
住所やら職業を聞かれた後、沙耶との関係を警官は尋ねてきた。
「そうですか、結婚されて同居されているが籍はまだ入れてないということですね」
「奥様が発見されたのは〇〇河の○○橋の下なんですが、そこへ行かれた理由に心当たりはありませんか?」
「私が今朝出掛ける時は予定があるような話はしていませんでした。帰宅すると妹から妻がまだ帰ってないと聞かされて。妹には行き先は告げていないようでしたが夕食には戻ると言っていたそうです」
馨にまた2、3質問をした後、沙耶の意識が戻り次第また事情を聞くと言って警官は帰って行った。
警官たちと入れ替わりに涼が病室に入って来た。
「馨君、沙耶さんの容体は?」
「まだ眠っている、これから担当医に話を聞きに行く所だ」
「そうですか。遅れてすまない、友人と食事してたんでスマホを切ってたんだ」
担当医は頭部を強打したために脳震とうを起こして意識がまだ戻らないのだろうと説明した。
「馨君、今日は帰った方がいいよ」
「いや、沙耶が目を覚ますまで付いている」
「だけど・・明日は京都に建設予定のホテルについて重要会議があるから・・」
「ああ、くそっ。明日だったか」
「沙耶さんの傍には僕が付いてるよ、会議の資料やなんかは他の秘書でも分かるようになってるから」
「分かった。とりあえず結花が心配してるから電話してから帰るよ」
運転手を帰らせた馨は、沙耶を心配する心だけを病室に残し自ら車を運転して帰路についた。
「きゃぁぁぁぁぁ」急斜面で勢いがついた沙耶はそのまま土手の下にある橋の土台に頭を強く打ち付けた。
そのまま動かなくなった沙耶を呆然と見下ろしていた景子は、我に返ると足元に落ちている沙耶のバッグを拾い上げた。用心して土手を下り、倒れている沙耶の上に屈みこんでゆすってみた。
「沙耶、ちょっと起きなさいよ大袈裟なんだから」
沙耶は動かない。すると沙耶の額から一筋の血が流れてきた。景子は思わず立ち上がったがその顔は青ざめていた。
「あ、あんたが馨さんを諦めないから悪いのよ」
持っていた沙耶のバッグを放り投げて、辺りを確認した景子は足早にその場を立ち去った。
_______
「沙耶さん遅いねぇ」
「まぁもうそろそろ戻ってくるだろう、先に食べていよう」
義久と結花は夕食を前に沙耶の帰りを待っていた。沙耶が出掛けてから3時間ほど経っていた。
「夕食前には戻るって言ってたんだけどな」
22時を過ぎると馨が帰宅した。
「え、沙耶が帰ってこない?」
「うん、ちょっと用事が出来たって出掛けて行ったんだけど・・」
「どこへ行くか言ってなかったのか?」
「言ってなかった。夕食には戻れると思うって言ってただけで」
馨はスマホを取り出して電話をかけてみたが通じない。
「LINEもしてみたんだけど既読もつかないんだ」
そこへ馨のスマホの着信音が鳴った。「沙耶か?」
『こちらは〇〇警察署の者ですが、そちらは五瀬さんの携帯で間違いないですか?』
馨の心臓が跳ねた。「そうですが・・」
『石井沙耶さんをご存じですか?』
「はい、妻・・です」
『石井さんが〇〇橋の下で倒れているところを発見されまして都内の病院に搬送されました。今の所、命に別状はありませんがそちらにお越し頂けますか?』
「分かりました、すぐ向かいます。どちらの病院でしょうか?」
電話を切るのと同時に結花が口を開いた。「沙耶さんどうしたの? 病院ってどういう事?!」
「沙耶が倒れている所を発見されて、〇〇病院に搬送されたそうだ。これから行ってくる」
「私も行く!」
「結花は待ってろ。どういう状況かまだ何も分からないんだ」
「だからこそ行くんじゃない、なんで兄さんはそんなに落ち着いてるの? 心配じゃ・・」
スマホを持つ馨の手が小さく震えているのに結花は気づいた。
「ごめん、心配だよね。当たり前だよね・・私待ってるから病院に着いたらすぐ電話・・LINEちょうだい」
「分かった。父さんにも伝えておいてくれないか?」
「うん、そうする」
馨は帰ろうとしていた運転手を呼び留め病院へ急いだ。
____
受付で聞いた病室に入ると制服を着た警官が二人立っていた。
ベッドに寝ている沙耶の頭には包帯が巻かれいる。その顔は青白く、人形が横たわっているかのように見えた。
「五瀬ですが、この度はお世話をおかけしました。それで沙耶の容態は?」
「脳震盪を起こしたようだと医者は言っていました、詳しくは担当医から説明を受けて下さい。少しお話をお伺いしたいのですがよろしいですか?」
「はい、構いません」
住所やら職業を聞かれた後、沙耶との関係を警官は尋ねてきた。
「そうですか、結婚されて同居されているが籍はまだ入れてないということですね」
「奥様が発見されたのは〇〇河の○○橋の下なんですが、そこへ行かれた理由に心当たりはありませんか?」
「私が今朝出掛ける時は予定があるような話はしていませんでした。帰宅すると妹から妻がまだ帰ってないと聞かされて。妹には行き先は告げていないようでしたが夕食には戻ると言っていたそうです」
馨にまた2、3質問をした後、沙耶の意識が戻り次第また事情を聞くと言って警官は帰って行った。
警官たちと入れ替わりに涼が病室に入って来た。
「馨君、沙耶さんの容体は?」
「まだ眠っている、これから担当医に話を聞きに行く所だ」
「そうですか。遅れてすまない、友人と食事してたんでスマホを切ってたんだ」
担当医は頭部を強打したために脳震とうを起こして意識がまだ戻らないのだろうと説明した。
「馨君、今日は帰った方がいいよ」
「いや、沙耶が目を覚ますまで付いている」
「だけど・・明日は京都に建設予定のホテルについて重要会議があるから・・」
「ああ、くそっ。明日だったか」
「沙耶さんの傍には僕が付いてるよ、会議の資料やなんかは他の秘書でも分かるようになってるから」
「分かった。とりあえず結花が心配してるから電話してから帰るよ」
運転手を帰らせた馨は、沙耶を心配する心だけを病室に残し自ら車を運転して帰路についた。
1
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ヤンチャな御曹司の恋愛事情
星野しずく
恋愛
桑原商事の次期社長である桑原俊介は元教育係で現在は秘書である佐竹優子と他人には言えない関係を続けていた。そんな未来のない関係を断ち切ろうとする優子だが、俊介は優子のことをどうしても諦められない。そんな折、優子のことを忘れられない元カレ伊波が海外から帰国する。禁断の恋の行方は果たして・・・。俊介は「好きな気持ちが止まらない」で岩崎和馬の同僚として登場。スピンオフのはずが、俊介のお話の方が長くなってしまいそうです。最後までお付き合いいただければ幸いです。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
待鳥園子
恋愛
―――申し訳ありません。実は期限付きのお飾り婚約者なんです。―――
とある事情で王妃より依頼され多額の借金の返済や幼い弟の爵位を守るために、王太子ギャレットの婚約者を一時的に演じることになった貧乏侯爵令嬢ローレン。
最初はどうせ金目当てだろうと険悪な対応をしていたギャレットだったが、偶然泣いているところを目撃しローレンを気になり惹かれるように。
だが、ギャレットの本来の婚約者となるはずの令嬢や、成功報酬代わりにローレンの婚約者となる大富豪など、それぞれの思惑は様々入り乱れて!?
訳あって期限付きの婚約者を演じているはずの塩対応令嬢が、彼女を溺愛したくて堪らない脳筋王子様を悪気なく胸キュン対応でオーバーキルしていく恋物語。
男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~
富士とまと
恋愛
リリーは極度の男性アレルギー持ちだった。修道院に行きたいと言ったものの公爵令嬢と言う立場ゆえに父親に反対され、誰でもいいから結婚しろと迫られる。そんな中、婚約者探しに出かけた舞踏会で、アレルギーの出ない男性と出会った。いや、姿だけは男性だけれど、心は女性であるエミリオだ。
二人は友達になり、お互いの秘密を共有し、親を納得させるための偽装結婚をすることに。でも、実はエミリオには打ち明けてない秘密が一つあった。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる