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48・いよいよダンジョンへ
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手を鷲掴みにされたるり子さんは目をまん丸くして俺を見上げた。バチっとるり子さんと目が合った。
「あの、好きです、るり子さん! 俺ずっとるり子さんが好きで‥あの、だから、その‥るり子さんの手が荒れたら困るから・・イヤ、俺が困る訳じゃないですけど、いや、手が荒れたるり子さんは嫌だとかじゃなくて‥俺が言いたいのは・・」
「プフッ」
るり子さんが吹き出した。
「これくらい平気よ。だから手を放してくれたらすぐ洗ってしまうから待ってて」
「わあっ、すみません」俺はずっとるり子さんの手を握りっぱなしだった。慌てて手を放して俺は横を向いた。
あああああもうううううう! なに言ってんだよ俺! なにやってんだよ俺! 落ち着け俺! ええとだから・・飲み物を用意しないと。紅茶でいいかな、夜にコーヒー飲むと寝られなくなるとかだったら困るしな。
「うおっ、このバウムクーヘンうまっ!」
「でしょう? 辛いカレーの後に甘い物って最高よね」
俺の告白なんて聞こえてなかったかの様に無邪気にバウムクーヘンを頬張るるり子さん。もしかして聞こえてなかった? いやそんな事ないよな。あの距離で言ったんだから。
あーあれか、断るにしても俺が可愛そうだから『聞こえなかったでスルー』作戦か。考え込みながら俺は黙々とバウムクーヘンを口に運んでいた。
「なんだか・・切羽詰まってるというか、焦ってるというか。何かあったの?」
「えっ、えーと・・」
フォークをテーブルに置いて真剣な顔つきでるり子さんは質問してきた。
るり子さんは大人だから俺の感情なんてお見通しなのかな。でも明日命がけでダンジョンに潜りますとは言えないや。
「明日から数日、少し遠出するんです。行った事のない場所なんで少し緊張してるのかも」
るり子さんはじっと俺の顔を見てから言った。「じゃあ帰ってきたらまた出掛けましょうね」
ん? どこか行きたい所でもあるのかな。でもそれってまたるり子さんとデートできるって事だよな。
「俺はるり子さんの行きたい所、どこでも大丈夫です!」
「お付き合いするんだから、いっぱいデートしないとね」
「へ?」
「私達、好き合ってるんだからお付き合いしないと!」
「!!」
「だから無事に帰って来てね」
『無事に帰って来て』
どうしてるり子さんがあんなことを言ったのか分からない。るり子さんも俺に好意を寄せてくれてたって事で、俺はすっかり舞い上がっていたから今になってやっと気が付いた。
そう今になって、今、こんな状況で。
「は、早く! 早くしてくれえ~~~~」
「くそっ雑魚がうざ過ぎる」
「俺もう、めまいがして吐きそうだ」
「少しくらい耐えろ!」
少し位じゃないんだぞ! もうかれこれ1時間近くも俺は踊りっぱなしなんだから。スケルトン相手に!
―――1時間ほど前
「ここって‥」
「そう、駅前公園だ」
「でもなんで‥あっ!」
「やっと気づいたか。早く池に向かうぞ」
そうだった。以前リヴァイアサンを追いかけて池に開いた黒い穴に入った時、穴の中はゲームの世界に通じていたんだった。
「なあ、俺と宏樹が最初に会ったのも駅前公園だったよな。もしかして宏樹がゲームから出てきたのもあの池からだったのかな?」
「そうかもしれん。俺は気づいたらベンチに座っていたからよく分からんな」
「そうなのか・・」
リヴァイアサンを倒した後、この穴からクリーチャーは出て来ていない。調査団が俺たちを救出した後、中を探索したらしいが、リヴァイアサンのボス部屋の扉はただの壁になっていて先に進めなかったらしい。
池は水を抜かれたままで穴の入り口はコンクリートで塞がれていた。だが今は夜だ、ヴァンパイアキングとなった宏樹にかかるとコンクリートなんて煎餅みたいに軽く割れた。
コンクリートの割れ目から覗く竪穴は深く暗く、静まり返っていた。行きは前回と同じように宏樹が俺を抱えて飛んで入った。底に着いてフラッシュライトを付けた時、初めて俺たちは中の様子が違う事に気づいた。
「あれ、この洞窟・・なんか違う」
リヴァイアサンのいる地下70階の扉までは天井の低い曲がりくねった1本道を歩いたはずだ。ゲームでもそうだった。でも目の前に広がる洞窟は天井が高い。そしてその天井には無数の光る眼がこちらを見ていた・・。
「ここ1階だ! コウモリの洞窟だ!」
俺が声を上げると天井にぶら下がっていたコウモリが一斉に俺たちに襲い掛かって来た。
・・・・だがまあ1階だ。ものすごい数のコウモリではあったが、宏樹の氷結魔法で一網打尽だ。
進んだ先にある10階のボス部屋は空だった。リアル世界でボスの大コウモリを倒したせいなんだろうか? リアル世界で大コウモリを倒した後にゲームの『The Prizoner』で10階に来てみたが普通にボスはいた。強さに変化もなかった。ここはPrizonerはPrizonerでも同じゲームの中ではないみたいだな。
11階から19階まで宏樹一人の戦闘力で難なく進むことが出来た。
だけどさっきからずっと『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』って聞こえてくるんだけど何なんだ?
さて20階のボスはネクロマンサーだ。雑魚キャラはスケルトン。ダガーを振り上げ襲ってくる骸骨だがさして戦闘力は高くない。ただ倒しても倒してもネクロマンサーがスケルトンを復活させるのでキリがない。
宏樹はスケルトンを倒しながらネクロマンサーに攻撃を仕掛けるが、ネクロマンサーはスケルトンを盾にしながら宏樹の攻撃をかわしている。この20階を二人で攻略するのはちょっときつかった。
スケルトンが全滅するのはこれで3度目だ。スケルトンがいなくなって自分のHPが下がるとすぐネクロマンサーはスケルトンを復活させる。リヴァイアサンの時と違ってHPゲージが表示されているから目安にはなるが・・。
4度目に復活したスケルトンの一部がダガーを拾わず俺に突進してきた。俺もゴルフクラブで応戦しようと構える。
何体かはバラバラにしてやった。だがこっちはたったの一人。すぐゴルフクラブを奪われてしまった。
「くそっ、来るな! あっちへ行け!」
突進してきたスケルトンは俺の両手首を掴んだ。これではゴルフクラブを拾えない。どうにかして振りほどかなければ‥と思っているのになぜか俺はダンスのステップを踏み始めた。
「直巳! 何やってるんだ!」
「俺にもわかんねーよ、体が勝手に‥」
俺が1体のスケルトンと踊り出すと他の奴らは宏樹にターゲットを変更して、またダガーを振り上げた。一体どうなってるんだ?! 自分の意思とは裏腹に俺はダンスを止められない。
こんなの俺がゲームしてた時は無かったぞ。俺はゲームの知識があるからまだ役に立つ事もあるかと思ってたのに、これじゃあ・・・・。
それから俺は延々と踊り続けた。宏樹も健闘しているがまだスケルトンのHPはやっと半分を切ったところだ。俺、このままじゃ踊り疲れて死んじゃうよ。死んじゃう‥そうだ!
「あっ、分かった。これ『死の舞踏』だ!」
かなり低確率で発生するイベントだからすっかり忘れてたぜ。このイベントをクリアすれば宝箱が出るはずなんだ。
「で、どうすればいいんだ?」
宏樹が叫んだ。
「あの、好きです、るり子さん! 俺ずっとるり子さんが好きで‥あの、だから、その‥るり子さんの手が荒れたら困るから・・イヤ、俺が困る訳じゃないですけど、いや、手が荒れたるり子さんは嫌だとかじゃなくて‥俺が言いたいのは・・」
「プフッ」
るり子さんが吹き出した。
「これくらい平気よ。だから手を放してくれたらすぐ洗ってしまうから待ってて」
「わあっ、すみません」俺はずっとるり子さんの手を握りっぱなしだった。慌てて手を放して俺は横を向いた。
あああああもうううううう! なに言ってんだよ俺! なにやってんだよ俺! 落ち着け俺! ええとだから・・飲み物を用意しないと。紅茶でいいかな、夜にコーヒー飲むと寝られなくなるとかだったら困るしな。
「うおっ、このバウムクーヘンうまっ!」
「でしょう? 辛いカレーの後に甘い物って最高よね」
俺の告白なんて聞こえてなかったかの様に無邪気にバウムクーヘンを頬張るるり子さん。もしかして聞こえてなかった? いやそんな事ないよな。あの距離で言ったんだから。
あーあれか、断るにしても俺が可愛そうだから『聞こえなかったでスルー』作戦か。考え込みながら俺は黙々とバウムクーヘンを口に運んでいた。
「なんだか・・切羽詰まってるというか、焦ってるというか。何かあったの?」
「えっ、えーと・・」
フォークをテーブルに置いて真剣な顔つきでるり子さんは質問してきた。
るり子さんは大人だから俺の感情なんてお見通しなのかな。でも明日命がけでダンジョンに潜りますとは言えないや。
「明日から数日、少し遠出するんです。行った事のない場所なんで少し緊張してるのかも」
るり子さんはじっと俺の顔を見てから言った。「じゃあ帰ってきたらまた出掛けましょうね」
ん? どこか行きたい所でもあるのかな。でもそれってまたるり子さんとデートできるって事だよな。
「俺はるり子さんの行きたい所、どこでも大丈夫です!」
「お付き合いするんだから、いっぱいデートしないとね」
「へ?」
「私達、好き合ってるんだからお付き合いしないと!」
「!!」
「だから無事に帰って来てね」
『無事に帰って来て』
どうしてるり子さんがあんなことを言ったのか分からない。るり子さんも俺に好意を寄せてくれてたって事で、俺はすっかり舞い上がっていたから今になってやっと気が付いた。
そう今になって、今、こんな状況で。
「は、早く! 早くしてくれえ~~~~」
「くそっ雑魚がうざ過ぎる」
「俺もう、めまいがして吐きそうだ」
「少しくらい耐えろ!」
少し位じゃないんだぞ! もうかれこれ1時間近くも俺は踊りっぱなしなんだから。スケルトン相手に!
―――1時間ほど前
「ここって‥」
「そう、駅前公園だ」
「でもなんで‥あっ!」
「やっと気づいたか。早く池に向かうぞ」
そうだった。以前リヴァイアサンを追いかけて池に開いた黒い穴に入った時、穴の中はゲームの世界に通じていたんだった。
「なあ、俺と宏樹が最初に会ったのも駅前公園だったよな。もしかして宏樹がゲームから出てきたのもあの池からだったのかな?」
「そうかもしれん。俺は気づいたらベンチに座っていたからよく分からんな」
「そうなのか・・」
リヴァイアサンを倒した後、この穴からクリーチャーは出て来ていない。調査団が俺たちを救出した後、中を探索したらしいが、リヴァイアサンのボス部屋の扉はただの壁になっていて先に進めなかったらしい。
池は水を抜かれたままで穴の入り口はコンクリートで塞がれていた。だが今は夜だ、ヴァンパイアキングとなった宏樹にかかるとコンクリートなんて煎餅みたいに軽く割れた。
コンクリートの割れ目から覗く竪穴は深く暗く、静まり返っていた。行きは前回と同じように宏樹が俺を抱えて飛んで入った。底に着いてフラッシュライトを付けた時、初めて俺たちは中の様子が違う事に気づいた。
「あれ、この洞窟・・なんか違う」
リヴァイアサンのいる地下70階の扉までは天井の低い曲がりくねった1本道を歩いたはずだ。ゲームでもそうだった。でも目の前に広がる洞窟は天井が高い。そしてその天井には無数の光る眼がこちらを見ていた・・。
「ここ1階だ! コウモリの洞窟だ!」
俺が声を上げると天井にぶら下がっていたコウモリが一斉に俺たちに襲い掛かって来た。
・・・・だがまあ1階だ。ものすごい数のコウモリではあったが、宏樹の氷結魔法で一網打尽だ。
進んだ先にある10階のボス部屋は空だった。リアル世界でボスの大コウモリを倒したせいなんだろうか? リアル世界で大コウモリを倒した後にゲームの『The Prizoner』で10階に来てみたが普通にボスはいた。強さに変化もなかった。ここはPrizonerはPrizonerでも同じゲームの中ではないみたいだな。
11階から19階まで宏樹一人の戦闘力で難なく進むことが出来た。
だけどさっきからずっと『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』って聞こえてくるんだけど何なんだ?
さて20階のボスはネクロマンサーだ。雑魚キャラはスケルトン。ダガーを振り上げ襲ってくる骸骨だがさして戦闘力は高くない。ただ倒しても倒してもネクロマンサーがスケルトンを復活させるのでキリがない。
宏樹はスケルトンを倒しながらネクロマンサーに攻撃を仕掛けるが、ネクロマンサーはスケルトンを盾にしながら宏樹の攻撃をかわしている。この20階を二人で攻略するのはちょっときつかった。
スケルトンが全滅するのはこれで3度目だ。スケルトンがいなくなって自分のHPが下がるとすぐネクロマンサーはスケルトンを復活させる。リヴァイアサンの時と違ってHPゲージが表示されているから目安にはなるが・・。
4度目に復活したスケルトンの一部がダガーを拾わず俺に突進してきた。俺もゴルフクラブで応戦しようと構える。
何体かはバラバラにしてやった。だがこっちはたったの一人。すぐゴルフクラブを奪われてしまった。
「くそっ、来るな! あっちへ行け!」
突進してきたスケルトンは俺の両手首を掴んだ。これではゴルフクラブを拾えない。どうにかして振りほどかなければ‥と思っているのになぜか俺はダンスのステップを踏み始めた。
「直巳! 何やってるんだ!」
「俺にもわかんねーよ、体が勝手に‥」
俺が1体のスケルトンと踊り出すと他の奴らは宏樹にターゲットを変更して、またダガーを振り上げた。一体どうなってるんだ?! 自分の意思とは裏腹に俺はダンスを止められない。
こんなの俺がゲームしてた時は無かったぞ。俺はゲームの知識があるからまだ役に立つ事もあるかと思ってたのに、これじゃあ・・・・。
それから俺は延々と踊り続けた。宏樹も健闘しているがまだスケルトンのHPはやっと半分を切ったところだ。俺、このままじゃ踊り疲れて死んじゃうよ。死んじゃう‥そうだ!
「あっ、分かった。これ『死の舞踏』だ!」
かなり低確率で発生するイベントだからすっかり忘れてたぜ。このイベントをクリアすれば宝箱が出るはずなんだ。
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