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第2部 第1章 ケース オブ ショップ店員・橋姫『恋するあやかし』
一 あやかしと出掛ける、阿倍野芽依
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第2部 第1章
一
JR山手線(京浜東北線も可)の上野駅公園口を出ると、そこは美術館や博物館の集まるエリアへと直結するように拓けている。
花見の地として多くの人を集める上野公園であるが、ここは博物館や美術館も点在する芸術の地なのだ。
国立西洋美術館、国立科学博物館、東京都美術館、そして何よりも有名なのが、国内最大の文化財所蔵品数を有する明治五年に創立された日本最古の博物館、東京国立博物館である。
明治以前、ここは徳川家の菩薩寺である寛永寺が有する敷地であった。だが、幕末に起きた戊辰戦争にて一帯は焼失。以降、西洋化へ向けて躍起になっていた明治政府が、この地を有効利用すべく、公園化への開発を始めたのがはじまりといわれている。
そのような芸術品の集まる地に、その日、芽依は天童と鞍馬の三人でやってきていた。
芽依は今、田野前の猛烈なスカウトにより、夜カフェ〈金木犀〉裏手にあるジョサイン丸の内美術館で働いていた。
もう少し、転職活動を粘ろうと思っていた芽依であったが、田野前はあれよあれよという間に芽依を自分の助手として採用してしまった。
ある日、夜カフェ〈金木犀〉にいた芽依は、なかなか覚えられない作家の名前に苦戦していると悩みを吐露したところ、天童から「いい場所があるぞ」と言われて誘われた。
例の一件から、夜カフェ〈金木犀〉の常連となった芽依であったが、こうして店以外の場所で天童と行動をともにするのは初めてのことだ。
新緑に溢れる公園を突っ切り、見えてくる大きな建物。
(あれが東京国立博物館? なんて大きい建物……。国会議事堂みたい)
博物館を訪れることなど、学生時代の課外授業ぶりの芽依。
天童いわく、そこで今、自身にまつわるとある美術品が展示されているのだという。
だが、興味があるという鞍馬にも誘われ、三人で訪れることになった。
芽依は博物館前の横断歩道で信号待ちをしながらそんなことを思っていた。
そして信号が青になると、天童は博物館のチケット売り場へと向かった。
意外なことに、天童は時間があるとここへ来ることがあるらしく、天童は鞍馬の分も含めて、三人分のチケットを買って芽依と鞍馬に渡してくれた。
正門中ゲートを抜け、博物館の敷地に入っていく。
目の前には、堂々とそびえ立つ帝冠様式の建物。その歴史が放つ荘厳な雰囲気に芽依は圧倒された。
その外観は、東京駅とはまた違った歴史の染み込んだ、特別な感じを持つ建物たった。
入り口に置いてあったリーフレットによれば、博物館内にはいくつかの建物に分かれており、芽依が今見ている建物は、東京国立博物館の本館にあたる建物であった。
他にも、特別展や催しをメインに開く表慶館や平成館。アジアの歴史をメインとする東洋館。他にも、法隆寺宝物館や黒田記念館等、一日では到底回りきれないほどの広さと種類に芽依は目が回りそうであった。
気付けば天童は本館へ向かって歩いている。
本館前には池があり、それを囲むようにベンチが設置されている。
池の水は緑色に濁っていたが、広々とした景色に囲まれ、ゆったりとした時間が流れているようであった。
初めて訪れた芽依と鞍馬は目移りしつも、天童の後を追いかけるように歩く。
重厚な扉を超えて中へ入ると、エントランスの見事な大階段が芽依達を迎えた。
一
JR山手線(京浜東北線も可)の上野駅公園口を出ると、そこは美術館や博物館の集まるエリアへと直結するように拓けている。
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国立西洋美術館、国立科学博物館、東京都美術館、そして何よりも有名なのが、国内最大の文化財所蔵品数を有する明治五年に創立された日本最古の博物館、東京国立博物館である。
明治以前、ここは徳川家の菩薩寺である寛永寺が有する敷地であった。だが、幕末に起きた戊辰戦争にて一帯は焼失。以降、西洋化へ向けて躍起になっていた明治政府が、この地を有効利用すべく、公園化への開発を始めたのがはじまりといわれている。
そのような芸術品の集まる地に、その日、芽依は天童と鞍馬の三人でやってきていた。
芽依は今、田野前の猛烈なスカウトにより、夜カフェ〈金木犀〉裏手にあるジョサイン丸の内美術館で働いていた。
もう少し、転職活動を粘ろうと思っていた芽依であったが、田野前はあれよあれよという間に芽依を自分の助手として採用してしまった。
ある日、夜カフェ〈金木犀〉にいた芽依は、なかなか覚えられない作家の名前に苦戦していると悩みを吐露したところ、天童から「いい場所があるぞ」と言われて誘われた。
例の一件から、夜カフェ〈金木犀〉の常連となった芽依であったが、こうして店以外の場所で天童と行動をともにするのは初めてのことだ。
新緑に溢れる公園を突っ切り、見えてくる大きな建物。
(あれが東京国立博物館? なんて大きい建物……。国会議事堂みたい)
博物館を訪れることなど、学生時代の課外授業ぶりの芽依。
天童いわく、そこで今、自身にまつわるとある美術品が展示されているのだという。
だが、興味があるという鞍馬にも誘われ、三人で訪れることになった。
芽依は博物館前の横断歩道で信号待ちをしながらそんなことを思っていた。
そして信号が青になると、天童は博物館のチケット売り場へと向かった。
意外なことに、天童は時間があるとここへ来ることがあるらしく、天童は鞍馬の分も含めて、三人分のチケットを買って芽依と鞍馬に渡してくれた。
正門中ゲートを抜け、博物館の敷地に入っていく。
目の前には、堂々とそびえ立つ帝冠様式の建物。その歴史が放つ荘厳な雰囲気に芽依は圧倒された。
その外観は、東京駅とはまた違った歴史の染み込んだ、特別な感じを持つ建物たった。
入り口に置いてあったリーフレットによれば、博物館内にはいくつかの建物に分かれており、芽依が今見ている建物は、東京国立博物館の本館にあたる建物であった。
他にも、特別展や催しをメインに開く表慶館や平成館。アジアの歴史をメインとする東洋館。他にも、法隆寺宝物館や黒田記念館等、一日では到底回りきれないほどの広さと種類に芽依は目が回りそうであった。
気付けば天童は本館へ向かって歩いている。
本館前には池があり、それを囲むようにベンチが設置されている。
池の水は緑色に濁っていたが、広々とした景色に囲まれ、ゆったりとした時間が流れているようであった。
初めて訪れた芽依と鞍馬は目移りしつも、天童の後を追いかけるように歩く。
重厚な扉を超えて中へ入ると、エントランスの見事な大階段が芽依達を迎えた。
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