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第2章
三 傷心のロイヤルミルクティ男子
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三
「おまたせしました。トーストとクラムチャウダーでございます」
(クラムチャウダー?)
ロイヤルミルクティー男子のテーブルに、陶磁器のスープマグに入ったクラムチャウダーと、焼きたてのトーストが載せられた木製プレートが置かれた。こんがりと焼けたトーストの横には、バターが添えられている。焼き立てのパンの香りはとんでもなく食欲をそそるものだった。
(初回でそんな楽しい注文を出来るなんて。さすがおしゃれな香りをつけてるだけある)
芽依はもうロイヤルミルクティー男子に釘付けであった。
プレートがテーブルに並べられると、最後にカフェラテ店主がロイヤルミルクティー男子へカードのようなものを置いた。
「当店のカードとなっております。よろしければ、お目をお通しください。では、ごゆっくりどうぞ」
軽く頭を下げたカフェラテ店主が、一瞬、芽依の席へと視線を移した。
芽依と目を合わせた店主は、芽依へも会釈し、立ち去っていく。
その紳士的な様に芽依は思わず口元を手で覆った。
(なんて優しい微笑み!)
芽依ははしたなく緩んでしまった口元を隠す。数々襲われる多幸感に、芽依は悶絶しかける。
(今日はなんんて、いい夜……)
落ち着くためにと、芽依はラテを啜る。
(それにしても、フードメニューもおいしそうだったな)
夕食は東京駅中で済ませてきており、残念ながらお腹は減っていない。それに、深夜の食事にはさすがの芽依も気を使った。
芽依はロイヤルミルクティー男子の席に目をやる。
後ろ姿しか見えないが、様子からして食事をしている気配がない。気になってしまい、さらに覗き込んでみると、ロイヤルミルクティー男子はカフェラテ店主が置いていったカードに目を通しているところだった。
(あれ何だろう。私は渡されたなかったけど……)
名刺サイズほどの白いカード。
ショップカードのようでもあるが、文面までは見て取れない。
やがて、ロイヤルミルクティー男子はトーストをかじり、クラムチャウダーをスプーンで掬って食べ始める。
コーヒーにトースト、そしてクラムチャウダーとは、贅沢な朝にぴったりのメニューだが、それを真夜中に味わうとは、ロイヤルミルクティー男子のチョイスはさすがである。
五分くらいが過ぎただろうか。突如、ロイヤルミルクティー男子が席を立った。
よほど空腹だったのだろうか。すでに食事は終えた様子で、プレートの上は綺麗に食べつくされていた。
いままで後ろ姿しか見せていなかったロイヤルミルクティー男子が立ち上がり、芽依へその整った顔を見せつける。
(わっ、かっこよ!)
憂いを帯びる目は、ラピスラズリを溶かしたように青く透き通っており、気怠げに流れていく目が想像を超えるほどの色気を放っていた。
色白の肌に溶け込むミルクティー色の髪をなびかせて、ロイヤルミルクティー男子が芽依の横を通り過ぎていく。
再び香るバニラの香りはとりこになりそうであった。
(いい香り……)
どこへいくのだろうと、芽依はロイヤルミルクティー男子を視線で追う。
ロイヤルミルクティー男子が向かった先は、一階の注文カウンターだった。
ロイヤルミルクティー男子は店主から渡されたカードを持っていた。そしてカウンターに立つと、そのカードを見せて店主に呼んでいる。
店主がやってきて、カウンター越しに二人は何か会話を始めた。
そこに店主と客の雰囲気はない。
まるで知り合いにあったかのような、親密さを漂わせる二人の様子に芽依は再び思案を始める。
(もしかしてあの二人、知り合いだったのかな)
渡したカードはロイヤルミルクティーへのメッセージ。連絡先でも書いてあったのだろうか。
(えっ。待って。まさかここってそういう店じゃないよね!?)
出会いカフェ。
もしそうであるとしたら、ネットの検索にもひっかからないという理由にも説明がつく
(いや。冷静に考えてそんなことあるわけないじゃん……)
芽依は、持参したパソコンをバッグから取り出すと、それをカモフラージュに使いながら、カウンター下にいる二人の様子をそっと伺った。
彼らの放つ雰囲気は東京の夜景よりも美しいかもしれない。
そう思った矢先、ロイヤルミルクティー男子の様子がおかしいことに気づく。ひどく肩を落とし、がくりを頭を落としていた。
その様子をなだめるように、カフェラテ店主がロイヤルミルクティーの肩に手を置いている。
(えっ、どうしたんだろう)
すると、タイミングを見計ったように、エスプレッソ好青年が店に入ってきた。
(夜カフェにイケメン大集合……)
エスプレッソ好青年。今日も夜勤明けなのだろうか。
なにも知らないエスプレッソ好青年は、カウンターにいたカフェラテ店主からロイヤルミルクティー男子を紹介されている。軽く頭を下げるロイヤルミルクティー男子。
(エスプレッソ好青年とは、初対面……なのかな)
芽依には全く関係がないというのに気になって仕方がない。集結したカフェメニューの美男子たちが、芽依の思考を占拠していた。。
カフェラテ店主とエスプレッソ好青年はロイヤルミルクティー男子を励ましているように見える。やはり、ロイヤルミルクティー男子になにかあったのだろう。しばらくすると、隣に座っていたエスプレッソ好青年がロイヤルミルクティー男子の肩をポンと叩いて言った。
「——つまり、君はレシピを盗まれてしまったんだね」
「おまたせしました。トーストとクラムチャウダーでございます」
(クラムチャウダー?)
ロイヤルミルクティー男子のテーブルに、陶磁器のスープマグに入ったクラムチャウダーと、焼きたてのトーストが載せられた木製プレートが置かれた。こんがりと焼けたトーストの横には、バターが添えられている。焼き立てのパンの香りはとんでもなく食欲をそそるものだった。
(初回でそんな楽しい注文を出来るなんて。さすがおしゃれな香りをつけてるだけある)
芽依はもうロイヤルミルクティー男子に釘付けであった。
プレートがテーブルに並べられると、最後にカフェラテ店主がロイヤルミルクティー男子へカードのようなものを置いた。
「当店のカードとなっております。よろしければ、お目をお通しください。では、ごゆっくりどうぞ」
軽く頭を下げたカフェラテ店主が、一瞬、芽依の席へと視線を移した。
芽依と目を合わせた店主は、芽依へも会釈し、立ち去っていく。
その紳士的な様に芽依は思わず口元を手で覆った。
(なんて優しい微笑み!)
芽依ははしたなく緩んでしまった口元を隠す。数々襲われる多幸感に、芽依は悶絶しかける。
(今日はなんんて、いい夜……)
落ち着くためにと、芽依はラテを啜る。
(それにしても、フードメニューもおいしそうだったな)
夕食は東京駅中で済ませてきており、残念ながらお腹は減っていない。それに、深夜の食事にはさすがの芽依も気を使った。
芽依はロイヤルミルクティー男子の席に目をやる。
後ろ姿しか見えないが、様子からして食事をしている気配がない。気になってしまい、さらに覗き込んでみると、ロイヤルミルクティー男子はカフェラテ店主が置いていったカードに目を通しているところだった。
(あれ何だろう。私は渡されたなかったけど……)
名刺サイズほどの白いカード。
ショップカードのようでもあるが、文面までは見て取れない。
やがて、ロイヤルミルクティー男子はトーストをかじり、クラムチャウダーをスプーンで掬って食べ始める。
コーヒーにトースト、そしてクラムチャウダーとは、贅沢な朝にぴったりのメニューだが、それを真夜中に味わうとは、ロイヤルミルクティー男子のチョイスはさすがである。
五分くらいが過ぎただろうか。突如、ロイヤルミルクティー男子が席を立った。
よほど空腹だったのだろうか。すでに食事は終えた様子で、プレートの上は綺麗に食べつくされていた。
いままで後ろ姿しか見せていなかったロイヤルミルクティー男子が立ち上がり、芽依へその整った顔を見せつける。
(わっ、かっこよ!)
憂いを帯びる目は、ラピスラズリを溶かしたように青く透き通っており、気怠げに流れていく目が想像を超えるほどの色気を放っていた。
色白の肌に溶け込むミルクティー色の髪をなびかせて、ロイヤルミルクティー男子が芽依の横を通り過ぎていく。
再び香るバニラの香りはとりこになりそうであった。
(いい香り……)
どこへいくのだろうと、芽依はロイヤルミルクティー男子を視線で追う。
ロイヤルミルクティー男子が向かった先は、一階の注文カウンターだった。
ロイヤルミルクティー男子は店主から渡されたカードを持っていた。そしてカウンターに立つと、そのカードを見せて店主に呼んでいる。
店主がやってきて、カウンター越しに二人は何か会話を始めた。
そこに店主と客の雰囲気はない。
まるで知り合いにあったかのような、親密さを漂わせる二人の様子に芽依は再び思案を始める。
(もしかしてあの二人、知り合いだったのかな)
渡したカードはロイヤルミルクティーへのメッセージ。連絡先でも書いてあったのだろうか。
(えっ。待って。まさかここってそういう店じゃないよね!?)
出会いカフェ。
もしそうであるとしたら、ネットの検索にもひっかからないという理由にも説明がつく
(いや。冷静に考えてそんなことあるわけないじゃん……)
芽依は、持参したパソコンをバッグから取り出すと、それをカモフラージュに使いながら、カウンター下にいる二人の様子をそっと伺った。
彼らの放つ雰囲気は東京の夜景よりも美しいかもしれない。
そう思った矢先、ロイヤルミルクティー男子の様子がおかしいことに気づく。ひどく肩を落とし、がくりを頭を落としていた。
その様子をなだめるように、カフェラテ店主がロイヤルミルクティーの肩に手を置いている。
(えっ、どうしたんだろう)
すると、タイミングを見計ったように、エスプレッソ好青年が店に入ってきた。
(夜カフェにイケメン大集合……)
エスプレッソ好青年。今日も夜勤明けなのだろうか。
なにも知らないエスプレッソ好青年は、カウンターにいたカフェラテ店主からロイヤルミルクティー男子を紹介されている。軽く頭を下げるロイヤルミルクティー男子。
(エスプレッソ好青年とは、初対面……なのかな)
芽依には全く関係がないというのに気になって仕方がない。集結したカフェメニューの美男子たちが、芽依の思考を占拠していた。。
カフェラテ店主とエスプレッソ好青年はロイヤルミルクティー男子を励ましているように見える。やはり、ロイヤルミルクティー男子になにかあったのだろう。しばらくすると、隣に座っていたエスプレッソ好青年がロイヤルミルクティー男子の肩をポンと叩いて言った。
「——つまり、君はレシピを盗まれてしまったんだね」
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