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55.互いの気持ち
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水を飲んだ後テレビを見るために小太郎の隣に座った。
テレビを見始めてすぐにポンポンと肩を叩かれた。
「なぁ姉貴、凄い声してたけど風呂でなにしてたんだ?」
「えっと……」
まさか深堀りしてくるとは想定していなかった。
どうすれば良いんだ。はぐらかすかまた真実を伝えるか、それとも絵梨香の事について困っていると伝えるか。
自分では分からないが小太郎から見て相当怖い顔をしていたのか「ちょ、姉貴……?」と心配そうに声を掛けて来た。
「あ、その、ごめん」
「どうしたんだよ姉貴、最近おかしくないか?」
「私、何かおかしいかな……?」
「おかしい、全然いつもの感じじゃない」
いつもの感じと言われてもそのいつもが分からない。
変わった点を考えてみれば分かるかな。
絵梨香と話すようになった、絵梨香と付き合う事になった、絵梨香と一緒に住むことになった。
他にもいろんな事が変わった、それが私を変えてしまったのだろうか。
分からない、だけど苦になっているのは夜に絵梨香とイチャイチャすることだけ。
それ以外はまだ苦になってないし楽しかったり嬉しかったりする。
問題点は夜の事、それを解決すれば小太郎の言う〝いつもの私"に戻れるかもしれない。
いや、戻れなくても良いかもしれないけど。
そう思い私は立ち上がり「いつもの私に戻れるように努力する」と小太郎に言って部屋に戻った。
さて考えよう。
といってもさっき考えたときにおおまかな答えは出た。
あとはどう対処するかだけ。
私はベッドにダイブして体をゴロゴロさせながら対処法を生み出そうとしていた。
しかし最近絵梨香に襲われ続けたせいか次第に瞼が落ちて来て考えていた事が分からなくなった。
睡魔に抗おうとしたが、抵抗も虚しくすぐに寝てしまった。
△△△
はーちゃんがお風呂から出た後、私は考えていた。
駅のホームで告白されて今日まで。
私の性欲や嫉妬その他にも色んな物が暴走してはーちゃんに迷惑をかけて、でもそれを抑えることは出来なくて今日もまた、触れたい、感じたい、襲いたい、そんな気持ちが心の中にあってまた抑えられそうにない。
きっとはーちゃんの中では夜、私が襲う事は苦になっているに違いない。
なってないとしてもきっと何か思っているはず。
一緒に住むとか急に言って本当は凄く迷惑なはず。
まだ高校生、それに同性のカップルが夜になったら大人の階段を登ろうとする。
だけど完全に登ることは出来なくて、いつも来た道を戻り気付けばスタートにいる。
普通だったら家に住むだとか一緒にお風呂入るだとかこんなにキモい事をして引かない人間なんていない。
だけどはーちゃんは引かずにいつも受け入れてくれる、優しすぎていつも甘えてしまう。
そして私はいつも心の中で言う
「はーちゃんが悪いんだからね」
そう自分に言い聞かせて彼女の優しさに甘えて来た。
だけどそれも今日まで。
今日は襲わずにちゃんと話をする。
私は頭に付いた泡をシャワーで流して風呂場を出た。
体をバスタオルで拭き、部屋着を着た後ドライヤーで髪を乾かした。
最後に歯を磨いてリビングに行った。
リビングに行くとはーちゃんの姿は無く、小太郎しか居なかった。
「あ、えりちゃん上がったのか」
「おう小太郎!私は上がったぞ!」
「ははは、えりちゃんはいつも通りだな」
「いつも通り……?」
言い方的にはーちゃんに何かあったみたいな感じだ。
「はーちゃんに何かあったの?」
小太郎は少し引き攣るような笑顔を見せた後こう言った。
「最近姉貴おかしい気がしてさ、いや俺の勘違いかもしれないからあんまり気にしないで」
首を横に振りながら小太郎は否定をした。
やっぱり私のせいではーちゃんは何か思う事があるのかもしれない、いやあるんだきっと。
小太郎の言葉で私は確信した。
「そっか、はーちゃんどこ行った知ってる?」
「多分自分の部屋だと思う」
小太郎に「ありがとう」と言い私は駆け足ではーちゃんの部屋に向かった。
部屋の前で立ち止まる。
いつもなら急に入ったりバレないようにそーっと入ったりするのだが今日は違った。
部屋に入る覚悟、自信が急に無くなってしまったのだ。
ドアノブを握る事は出来る、だけどドアを開ける事をためらってしまう。
あぁもうどうしようと思っていると握っていたドアノブが下に下がり扉が開いた。
「んもぉう……何……?」
今まで寝ていたのか眠たそうにしたはーちゃんが居た。
「あっ、ごめん……」
「ん、いいよ別に」
「その、今日も一緒に寝たいなって思って……」
私は何を言っているんだ。
今日はしっかりと話をしてはーちゃんの迷惑にならないようにするはずなのに、考えている事と言っていることがまるで違う。
「え、まぁいいよ」
「うん、その、ありがとう……」
「何か絵梨香、他の日と違ってよそよそしいね」
「そ、そうかな」
「うん、いつもはすーぐ私の体求めるくせして今日はまるで違う、小説で見た借りて来た猫モードってやつみたい」
よそよそしく見えてるのなら好都合と言いますか、まだ話を切り出すチャンスはありそう。
とりあえず話を切り出せそうなタイミングを見つけて話すしかない。
「あ、でもそっから豹変して急に襲うってのは無しだからね」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあなんなの?」
「今日ははーちゃんに話があって来たの」
「そうなんだ、実はさ私も話したいことあったんだよね」
はーちゃんも話したいことあったんだ、やっぱり私の夜暴走する件についてなのかな。
そっから別れ話とかだったら本当に嫌だ。
少し顔を上げてはーちゃんの顔を見るといつもの優しそうな顔ではなく真面目な顔をして怒ってはいなそうだったが笑顔も無かった。
「その、はーちゃんから話す……?」
「絵梨香からで良いよ」
「そ、そっか。じゃあ話すね」
「うん」
「あ、あのね……?」
怖い、もし話して「本当に迷惑だったんだよね」とか言われてそれで別れることになったらどうしよう。
だめだ、マイナスの方向にしか考えが行かない。
話さないと、話さないと。
だけど言葉が出ない。
今にも泣いてしまいそう、涙が込み上げてくるのが分かる。
「絵梨香、どうしたの?」
はーちゃんが言葉を掛けてくれている。
私が話さないと話が進まない。
私は出せるだけの声で話を始めた。
「あのね私、はーちゃんに迷惑ばっかりかけて嫌われてるんじゃないかって心配になっちゃってさ。その私、最近ははーちゃんの部屋に来て毎晩襲ってはーちゃんのこと困らせたり疲れさせたりして、それに居なくならないようにって思って拘束とかもしたし……」
「そっか、それがどうしたの?」
「えっ……?」
彼女の言葉はあっさりしていた。
彼女の言葉からは怒りの感情も呆れているという感情は一切感じなかった。
彼女からしたら素朴な疑問に過ぎなかった。
「別に怒ってないよ。あ、困ってるか困ってないかで言われたら困ってる側になるかもしれないけど。とりあえず怒ってないから安心して」
はーちゃんは箱ティッシュを私に渡して「これで涙拭いて」と言ってきた。
私は一枚ティッシュを取るとはーちゃんに渡して「拭いて」と駄々をこねた。
きっとこういう所がダメなのだろう、だけど彼女の優しさにもう少しだけ甘えさせて欲しい。
「もう、仕方ないなぁ。ほらこっち来て」
「スズっ……ん」
「えいっ」
体を寄せるとはーちゃんは私の事を優しく包み込んでくれた。
私がはーちゃんに対して無理矢理するハグと違って凄く優しくて暖かいハグ。
「絵梨香より優しい自信あるからね、私は」
「……ずるい」
「何か言った?」
「なんでもない!……好き」
「私も好きだよ、絵梨香」
今日は襲わずに済みそうだ。
なぜならこの暖かいハグをずっとしていたいから。
はーちゃんを感じたい、触りたい、その二つの思いが今私の中で達成されて凄く心地が良い。
もう少しこうしていよう、無理矢理にでも。
テレビを見始めてすぐにポンポンと肩を叩かれた。
「なぁ姉貴、凄い声してたけど風呂でなにしてたんだ?」
「えっと……」
まさか深堀りしてくるとは想定していなかった。
どうすれば良いんだ。はぐらかすかまた真実を伝えるか、それとも絵梨香の事について困っていると伝えるか。
自分では分からないが小太郎から見て相当怖い顔をしていたのか「ちょ、姉貴……?」と心配そうに声を掛けて来た。
「あ、その、ごめん」
「どうしたんだよ姉貴、最近おかしくないか?」
「私、何かおかしいかな……?」
「おかしい、全然いつもの感じじゃない」
いつもの感じと言われてもそのいつもが分からない。
変わった点を考えてみれば分かるかな。
絵梨香と話すようになった、絵梨香と付き合う事になった、絵梨香と一緒に住むことになった。
他にもいろんな事が変わった、それが私を変えてしまったのだろうか。
分からない、だけど苦になっているのは夜に絵梨香とイチャイチャすることだけ。
それ以外はまだ苦になってないし楽しかったり嬉しかったりする。
問題点は夜の事、それを解決すれば小太郎の言う〝いつもの私"に戻れるかもしれない。
いや、戻れなくても良いかもしれないけど。
そう思い私は立ち上がり「いつもの私に戻れるように努力する」と小太郎に言って部屋に戻った。
さて考えよう。
といってもさっき考えたときにおおまかな答えは出た。
あとはどう対処するかだけ。
私はベッドにダイブして体をゴロゴロさせながら対処法を生み出そうとしていた。
しかし最近絵梨香に襲われ続けたせいか次第に瞼が落ちて来て考えていた事が分からなくなった。
睡魔に抗おうとしたが、抵抗も虚しくすぐに寝てしまった。
△△△
はーちゃんがお風呂から出た後、私は考えていた。
駅のホームで告白されて今日まで。
私の性欲や嫉妬その他にも色んな物が暴走してはーちゃんに迷惑をかけて、でもそれを抑えることは出来なくて今日もまた、触れたい、感じたい、襲いたい、そんな気持ちが心の中にあってまた抑えられそうにない。
きっとはーちゃんの中では夜、私が襲う事は苦になっているに違いない。
なってないとしてもきっと何か思っているはず。
一緒に住むとか急に言って本当は凄く迷惑なはず。
まだ高校生、それに同性のカップルが夜になったら大人の階段を登ろうとする。
だけど完全に登ることは出来なくて、いつも来た道を戻り気付けばスタートにいる。
普通だったら家に住むだとか一緒にお風呂入るだとかこんなにキモい事をして引かない人間なんていない。
だけどはーちゃんは引かずにいつも受け入れてくれる、優しすぎていつも甘えてしまう。
そして私はいつも心の中で言う
「はーちゃんが悪いんだからね」
そう自分に言い聞かせて彼女の優しさに甘えて来た。
だけどそれも今日まで。
今日は襲わずにちゃんと話をする。
私は頭に付いた泡をシャワーで流して風呂場を出た。
体をバスタオルで拭き、部屋着を着た後ドライヤーで髪を乾かした。
最後に歯を磨いてリビングに行った。
リビングに行くとはーちゃんの姿は無く、小太郎しか居なかった。
「あ、えりちゃん上がったのか」
「おう小太郎!私は上がったぞ!」
「ははは、えりちゃんはいつも通りだな」
「いつも通り……?」
言い方的にはーちゃんに何かあったみたいな感じだ。
「はーちゃんに何かあったの?」
小太郎は少し引き攣るような笑顔を見せた後こう言った。
「最近姉貴おかしい気がしてさ、いや俺の勘違いかもしれないからあんまり気にしないで」
首を横に振りながら小太郎は否定をした。
やっぱり私のせいではーちゃんは何か思う事があるのかもしれない、いやあるんだきっと。
小太郎の言葉で私は確信した。
「そっか、はーちゃんどこ行った知ってる?」
「多分自分の部屋だと思う」
小太郎に「ありがとう」と言い私は駆け足ではーちゃんの部屋に向かった。
部屋の前で立ち止まる。
いつもなら急に入ったりバレないようにそーっと入ったりするのだが今日は違った。
部屋に入る覚悟、自信が急に無くなってしまったのだ。
ドアノブを握る事は出来る、だけどドアを開ける事をためらってしまう。
あぁもうどうしようと思っていると握っていたドアノブが下に下がり扉が開いた。
「んもぉう……何……?」
今まで寝ていたのか眠たそうにしたはーちゃんが居た。
「あっ、ごめん……」
「ん、いいよ別に」
「その、今日も一緒に寝たいなって思って……」
私は何を言っているんだ。
今日はしっかりと話をしてはーちゃんの迷惑にならないようにするはずなのに、考えている事と言っていることがまるで違う。
「え、まぁいいよ」
「うん、その、ありがとう……」
「何か絵梨香、他の日と違ってよそよそしいね」
「そ、そうかな」
「うん、いつもはすーぐ私の体求めるくせして今日はまるで違う、小説で見た借りて来た猫モードってやつみたい」
よそよそしく見えてるのなら好都合と言いますか、まだ話を切り出すチャンスはありそう。
とりあえず話を切り出せそうなタイミングを見つけて話すしかない。
「あ、でもそっから豹変して急に襲うってのは無しだからね」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあなんなの?」
「今日ははーちゃんに話があって来たの」
「そうなんだ、実はさ私も話したいことあったんだよね」
はーちゃんも話したいことあったんだ、やっぱり私の夜暴走する件についてなのかな。
そっから別れ話とかだったら本当に嫌だ。
少し顔を上げてはーちゃんの顔を見るといつもの優しそうな顔ではなく真面目な顔をして怒ってはいなそうだったが笑顔も無かった。
「その、はーちゃんから話す……?」
「絵梨香からで良いよ」
「そ、そっか。じゃあ話すね」
「うん」
「あ、あのね……?」
怖い、もし話して「本当に迷惑だったんだよね」とか言われてそれで別れることになったらどうしよう。
だめだ、マイナスの方向にしか考えが行かない。
話さないと、話さないと。
だけど言葉が出ない。
今にも泣いてしまいそう、涙が込み上げてくるのが分かる。
「絵梨香、どうしたの?」
はーちゃんが言葉を掛けてくれている。
私が話さないと話が進まない。
私は出せるだけの声で話を始めた。
「あのね私、はーちゃんに迷惑ばっかりかけて嫌われてるんじゃないかって心配になっちゃってさ。その私、最近ははーちゃんの部屋に来て毎晩襲ってはーちゃんのこと困らせたり疲れさせたりして、それに居なくならないようにって思って拘束とかもしたし……」
「そっか、それがどうしたの?」
「えっ……?」
彼女の言葉はあっさりしていた。
彼女の言葉からは怒りの感情も呆れているという感情は一切感じなかった。
彼女からしたら素朴な疑問に過ぎなかった。
「別に怒ってないよ。あ、困ってるか困ってないかで言われたら困ってる側になるかもしれないけど。とりあえず怒ってないから安心して」
はーちゃんは箱ティッシュを私に渡して「これで涙拭いて」と言ってきた。
私は一枚ティッシュを取るとはーちゃんに渡して「拭いて」と駄々をこねた。
きっとこういう所がダメなのだろう、だけど彼女の優しさにもう少しだけ甘えさせて欲しい。
「もう、仕方ないなぁ。ほらこっち来て」
「スズっ……ん」
「えいっ」
体を寄せるとはーちゃんは私の事を優しく包み込んでくれた。
私がはーちゃんに対して無理矢理するハグと違って凄く優しくて暖かいハグ。
「絵梨香より優しい自信あるからね、私は」
「……ずるい」
「何か言った?」
「なんでもない!……好き」
「私も好きだよ、絵梨香」
今日は襲わずに済みそうだ。
なぜならこの暖かいハグをずっとしていたいから。
はーちゃんを感じたい、触りたい、その二つの思いが今私の中で達成されて凄く心地が良い。
もう少しこうしていよう、無理矢理にでも。
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