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40.告白しなかった理由
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「やっと見つけた!」
絵梨香は私を探していたのか息は切れていて、服は汗でべちょべちょになっている。
今日の絵梨香の服装はオープンショルダーのワンピース。
ショートヘアの絵梨香に似合うように色合いは薄い青紫色でとても似合っている。
しかし、走り回っていたのかスカートの部分は少しヨレヨレになってしまっている。
「あ、絵梨香」
「退院おめでとうー!」
絵梨香は余っ程嬉しかったのか、周囲の目など気にせず私に抱き着いて来た。
「痛いよ、絵梨香。それに何かベトベトする」
「ううっ、それははーちゃんを探してたからで、それで……」
「うそうそ、気にしてないから。それで、今日は何かしてくれるの?」
「はーちゃんの家に行く」
私の家かぁと思ってしまった。
せっかく病院というストレス溜まりまくりの施設から抜け出せたのに、家でぐったりとまた過ごすのかと思うと頭が痛くなりそうだった。
解放されたのだから、私の背中に羽は無いがたまには羽でも伸ばしたいと思った。
「えぇ~、なんか食べに行こうよ~」
「やだ、はーちゃんの家行きたい」
「家に行ったところで小太郎が居るからラブラブは出来ないよ?絵梨香」
そう、家には小太郎が居るから前のようなキスなどは出来ない。
しかし、私がそう言うと絵梨香はまるで魔王かのように笑い出した。
「フハハハ……私は今日の為に準備してきたのだ」
「なにそのキャラ」
「今日、はーちゃんの家に小太郎は居ないの!」
どうゆう事だ?
小太郎から何も連絡は貰っていないし、だけどいつもなら何かする度に連絡をくれていたんだけど。
「小太郎からなんにも連絡来てないよ?」
「それは、小太郎に協力してもらったからね」
「と言うと?」
「望海ちゃんが「勉強出来ない!」って困ってたよって教えてあげたら「俺が教えてあげられれば……」とか言うからさ、手を組んでもらったってわけ」
我が弟はかなり行動力がありますな。
てか、望海ちゃんの事好きすぎだろ、しかも好きっていう気持ちだけで行動できるのがまた素晴らしい。
「だから今日は、はーちゃん家に行くの!」
まぁ、そこまでして私と二人で居たいのなら家に帰るか、小太郎にも迷惑かけてるし。
だけど、中華料理でも食べて帰りたかったなぁ。
私は渋々了承し、家に帰った。
池袋駅に行き、埼京線のホームに向かう。
山手線や湘南新宿ライン、埼京線など様々な路線が集まっていることもあり、人の量は尋常じゃない。
刺された時はちょうど帰宅ラッシュ時だったので人は多かったが、帰宅ラッシュ時じゃない今でも人の数は多い。
「はーちゃん、手繋ごう?」
「良いよ」
手を繋ぐことに前のような抵抗は無くなっていた。
しかし、今でも少しはドキドキしてしまう。
周りの人の足音と心臓の音がリンクして謎のメロディを奏でている。
繋がれている手は、最初は手のひらだけだったが、絵梨香が徐々に指を絡めてきた。
それに答えるように私は指を絡め返した、そしていつの間にかすべての指が絡まっていた。
改札にSuicaを当て、改札を通り抜けた。
「何か、嬉しいな」
「なにが?」
「またこうやって、はーちゃんと手を繋ぐことが出来て」
「そんな、大袈裟でしょ」
「はーちゃんにとって大袈裟でも、私にとってはずっと待ち続けた幸せなんだから」
ずっと待ち続けた幸せ、確か絵梨香は小学生の頃から私のことが好きだって言っていたけど、なんで私のことが好きだったんだろう。
なんで絵梨香は、私にずっと告白しなかったんだろう。
私は歩きながら絵梨香に聞いてみることにした。
「絵梨香?」
「なに?はーちゃん」
「絵梨香ってさ、小学生の頃から私の事好きだったんでしょ?」
「うん、好きだったよ」
「じゃあさ、なんですぐに私に告白しなかったの?」
絵梨香は立ち止った。
そして下を向いて考え始めた。
考えが出たのか絵梨香は私の手を取り、「こっち来て」と端の方に移動した。
「私なりの答えが出ました」
「お聞かせ下さい」
「私は、はーちゃんに嫌われるのが怖かったんだと思う」
「怖い?」
「うん、恐怖かな。私がイジメられてる時に、はーちゃんは助けてくれたじゃん?」
「まぁ、幼馴染だったし」
「私はそこではーちゃんに惚れたんだよね。だけど、私がはーちゃんの近くに居ると、今度ははーちゃんがイジメられちゃうと思ってさ、私ははーちゃんの事を無理やり嫌おうとしてた」
「うん」
「でもさ、好きになった人を嫌いになったり忘れる事は簡単には出来なくてさ、はーちゃんって言う存在を忘れることは出来ないし、親同士の関係とかで結局、家に行って親を心配させないように遊んだりしてたじゃん」
「うん」
「それに何よりも、私が告白してはーちゃんから変人扱いされるのが怖かった。だからこうやってズルズル自分を引き延ばして、逃げて来た。そしたら、私が惨めに逃げてる時に、はーちゃんが告白してきたって感じ」
そんな風に思っていたんだ、確かに絵梨香の言う事は一理あると思う。
今、私は高校生だから物の理解とかが出来る、だから絵梨香の言っていることは分かる。
だけどこれがもし、私が小学生の時に言われたら小学生の私はどう感じるんだろう。
きっと絵梨香が言うように、変人扱いするか友達としての好きだと思ってしまうかの二択になるだろう。
今の私も、絵梨香の言うような変人だ。
「今だから言えるけど、昔に絵梨香が告白してきたら私は、変人扱いしてたかも」
「はーちゃん……」
「だけど、私もあの告白の時変な感じになっちゃって勢いに乗って告白しちゃったんだ」
今振り返ると、告白の時の私は何かおかしな感じがした。
絵梨香を取られたくない、だれかに触られてほしくない、そして自分だけのものにしたい、そんな気持ちで胸がいっぱいだった。
「だから、変人同士上手くやっていこう。」
「はーちゃん……」
「どうしたの、絵梨香」
「すっごく、すっごく大好きだからぁ」
いつの間にか繋がれていた手は離れていた。
その代わり、私の胸の中には絵梨香がいた。
私はそっと腕を回し、絵梨香を抱きしめる。
周りから視線を感じる、チクチクと背中に何かが刺さる感じがする。
それに、恥ずかしくて体が熱くなるのが分かる。
だけど、胸の中の暖かさは何か違うものを感じさせてくれた。
絵梨香は私を探していたのか息は切れていて、服は汗でべちょべちょになっている。
今日の絵梨香の服装はオープンショルダーのワンピース。
ショートヘアの絵梨香に似合うように色合いは薄い青紫色でとても似合っている。
しかし、走り回っていたのかスカートの部分は少しヨレヨレになってしまっている。
「あ、絵梨香」
「退院おめでとうー!」
絵梨香は余っ程嬉しかったのか、周囲の目など気にせず私に抱き着いて来た。
「痛いよ、絵梨香。それに何かベトベトする」
「ううっ、それははーちゃんを探してたからで、それで……」
「うそうそ、気にしてないから。それで、今日は何かしてくれるの?」
「はーちゃんの家に行く」
私の家かぁと思ってしまった。
せっかく病院というストレス溜まりまくりの施設から抜け出せたのに、家でぐったりとまた過ごすのかと思うと頭が痛くなりそうだった。
解放されたのだから、私の背中に羽は無いがたまには羽でも伸ばしたいと思った。
「えぇ~、なんか食べに行こうよ~」
「やだ、はーちゃんの家行きたい」
「家に行ったところで小太郎が居るからラブラブは出来ないよ?絵梨香」
そう、家には小太郎が居るから前のようなキスなどは出来ない。
しかし、私がそう言うと絵梨香はまるで魔王かのように笑い出した。
「フハハハ……私は今日の為に準備してきたのだ」
「なにそのキャラ」
「今日、はーちゃんの家に小太郎は居ないの!」
どうゆう事だ?
小太郎から何も連絡は貰っていないし、だけどいつもなら何かする度に連絡をくれていたんだけど。
「小太郎からなんにも連絡来てないよ?」
「それは、小太郎に協力してもらったからね」
「と言うと?」
「望海ちゃんが「勉強出来ない!」って困ってたよって教えてあげたら「俺が教えてあげられれば……」とか言うからさ、手を組んでもらったってわけ」
我が弟はかなり行動力がありますな。
てか、望海ちゃんの事好きすぎだろ、しかも好きっていう気持ちだけで行動できるのがまた素晴らしい。
「だから今日は、はーちゃん家に行くの!」
まぁ、そこまでして私と二人で居たいのなら家に帰るか、小太郎にも迷惑かけてるし。
だけど、中華料理でも食べて帰りたかったなぁ。
私は渋々了承し、家に帰った。
池袋駅に行き、埼京線のホームに向かう。
山手線や湘南新宿ライン、埼京線など様々な路線が集まっていることもあり、人の量は尋常じゃない。
刺された時はちょうど帰宅ラッシュ時だったので人は多かったが、帰宅ラッシュ時じゃない今でも人の数は多い。
「はーちゃん、手繋ごう?」
「良いよ」
手を繋ぐことに前のような抵抗は無くなっていた。
しかし、今でも少しはドキドキしてしまう。
周りの人の足音と心臓の音がリンクして謎のメロディを奏でている。
繋がれている手は、最初は手のひらだけだったが、絵梨香が徐々に指を絡めてきた。
それに答えるように私は指を絡め返した、そしていつの間にかすべての指が絡まっていた。
改札にSuicaを当て、改札を通り抜けた。
「何か、嬉しいな」
「なにが?」
「またこうやって、はーちゃんと手を繋ぐことが出来て」
「そんな、大袈裟でしょ」
「はーちゃんにとって大袈裟でも、私にとってはずっと待ち続けた幸せなんだから」
ずっと待ち続けた幸せ、確か絵梨香は小学生の頃から私のことが好きだって言っていたけど、なんで私のことが好きだったんだろう。
なんで絵梨香は、私にずっと告白しなかったんだろう。
私は歩きながら絵梨香に聞いてみることにした。
「絵梨香?」
「なに?はーちゃん」
「絵梨香ってさ、小学生の頃から私の事好きだったんでしょ?」
「うん、好きだったよ」
「じゃあさ、なんですぐに私に告白しなかったの?」
絵梨香は立ち止った。
そして下を向いて考え始めた。
考えが出たのか絵梨香は私の手を取り、「こっち来て」と端の方に移動した。
「私なりの答えが出ました」
「お聞かせ下さい」
「私は、はーちゃんに嫌われるのが怖かったんだと思う」
「怖い?」
「うん、恐怖かな。私がイジメられてる時に、はーちゃんは助けてくれたじゃん?」
「まぁ、幼馴染だったし」
「私はそこではーちゃんに惚れたんだよね。だけど、私がはーちゃんの近くに居ると、今度ははーちゃんがイジメられちゃうと思ってさ、私ははーちゃんの事を無理やり嫌おうとしてた」
「うん」
「でもさ、好きになった人を嫌いになったり忘れる事は簡単には出来なくてさ、はーちゃんって言う存在を忘れることは出来ないし、親同士の関係とかで結局、家に行って親を心配させないように遊んだりしてたじゃん」
「うん」
「それに何よりも、私が告白してはーちゃんから変人扱いされるのが怖かった。だからこうやってズルズル自分を引き延ばして、逃げて来た。そしたら、私が惨めに逃げてる時に、はーちゃんが告白してきたって感じ」
そんな風に思っていたんだ、確かに絵梨香の言う事は一理あると思う。
今、私は高校生だから物の理解とかが出来る、だから絵梨香の言っていることは分かる。
だけどこれがもし、私が小学生の時に言われたら小学生の私はどう感じるんだろう。
きっと絵梨香が言うように、変人扱いするか友達としての好きだと思ってしまうかの二択になるだろう。
今の私も、絵梨香の言うような変人だ。
「今だから言えるけど、昔に絵梨香が告白してきたら私は、変人扱いしてたかも」
「はーちゃん……」
「だけど、私もあの告白の時変な感じになっちゃって勢いに乗って告白しちゃったんだ」
今振り返ると、告白の時の私は何かおかしな感じがした。
絵梨香を取られたくない、だれかに触られてほしくない、そして自分だけのものにしたい、そんな気持ちで胸がいっぱいだった。
「だから、変人同士上手くやっていこう。」
「はーちゃん……」
「どうしたの、絵梨香」
「すっごく、すっごく大好きだからぁ」
いつの間にか繋がれていた手は離れていた。
その代わり、私の胸の中には絵梨香がいた。
私はそっと腕を回し、絵梨香を抱きしめる。
周りから視線を感じる、チクチクと背中に何かが刺さる感じがする。
それに、恥ずかしくて体が熱くなるのが分かる。
だけど、胸の中の暖かさは何か違うものを感じさせてくれた。
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