私の恋人は幼馴染(♀)

竜田優乃

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35.抜糸とゲーム

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 「どうも、こんにちは。」

 ドアの音と女性にしては少し低い声に反応して、私は振り返る。

 そこには白衣を着た女性が立っていた。

 疲れているのか寝れていないのか分からないが、顔色は少し悪く目の下にはクマが出来ている。

 「あ、こんにちは・・」

 「西嶋さんですか?今回、抜糸を担当する中野と申します。」

 「あ、よろしくお願いします。」
 
 年齢は30代と言ったところだろうか、髪型や顔色、その他諸々整えたら絶対美人だと思う。

 そう思うのも、目は綺麗な二重だしまつ毛は上がってはいないが長く見える、眉毛とかも整えれば絶対キマる。

 私がずっと中野先生の顔を見ていたからか不思議そうに「どうしたんだい?」と私に聞いて来た。

 「あ、すみません・・何かクマとかすごいなぁって思ってしまって・・」

 「あはは、そうかそうか。まぁ、あんまり寝れてないからね。」

 「なんでですか・・?」

 「私の趣味はFPSゲームでね、一度始めると中々やめられなくなってしまうんだよ。」

 「えふぴーえす?」

 「あぁ、FPSだ。ファストパーソン・シューティングゲームの略だ、一人称視点で銃を撃ち合うゲームって言えば分かるかな?」

 じゅ、銃って鉄砲を撃つって事!?

 「そ、それって捕まらないんですか・・?」

 「あはは・・!君は何か勘違いをしていないか・・?」

 「え・・?」
 
 「FPSは名前にも入っているがゲームだ、まさかリアルの人を撃つわけがないだろう?」

 シューティングゲーム、確かにゲームって入ってた。
 
 ラノベのMMORPG見たいなゲームなのかな、確かMMOでも銃を使えるゲームもあるはずだし。

 「あ、すみません・・何か早とちりしてしまったみたいで・・」

 「あはは・・!構わないよ、しかし今時FPSを知らない人が居るとは・・」

 「そんなに人気なんですか・・?」

 「あぁ、色んな動画投稿サイトとか見てみれば分かると思うけど、常に誰かが配信しているし大量のプレイ動画や解説動画も上がっている。そうだな、最近人気なFPSと言えばApexというものかな。」

 「な、なるほど・・」

 「おっと、話過ぎてしまった。それで、抜糸の件だったね、じゃあ今始めちゃうからそこのベッドに寝てくれるかい?」

 「分かりました。」

 中野先生にうながされ、私は隣にあったベッドに寝っ転がる。

 中野先生は消毒液のようなものをガーゼに垂らすと糸が縫われている部分を軽く拭いてから用意してあったピンセットとハサミを使い、糸を切った。

 ピンセットで玉止めされた糸を掴み、少し出来た肌と糸の隙間にハサミを通しパツンと切る、そんな事を5回ほどした。

 「はい、終わったよ。」

 低い声と共に私は体を起こす。

 縫われていた部分を見ると黒い糸は無くなっていた、そのかわりに小さな穴と真ん中に大きな傷が見えた。

 「いや~刺された凶器が小さいもので良かったね。」

 「これで、小さいんですか・・?」

 「うん、大きかったらあと3針ぐらい増えてたかもね。」

 「へげぇ・・」という意味の分からない声を出してしまった。

 しかし、これで小さい物なのか。

 もう二度と刺されたくないな、一回刺されただけで気を失ってしまうのだから、それに絵梨香と二度と会えなくなってしまうかもしれないし。

 「あとは、激しい運動をひかえて安静あんせいにしててね。最悪、裂けたらまたここに来るか救急車呼んでね。」

 「うっ、分かりました。」

 裂けたら・・怖すぎる、絶対運動しないようにしようと心に決めた。

 私が、部屋を出ようとすると中野先生が「西嶋さん」と呼び止められた。

 「あ、はい」

 「FPSに興味は無いかい?」

 「えっ・・」

 「実は私、色んな患者さんにFPSを誘っているのだがほとんど断られてしまってね・・」

 「は、はぁ・・」

 まぁ、当たり前だろう。

 治療が終わり、いざ帰ろうとなった時に担当医から「FPSやりませんか!」って言われたら皆引いてしまうだろう。

 「西嶋さんはPC、それもゲーミングPCは持っているかい・・?」

 ゲーミングPC・・確か、前にラノベの影響でオープンワルードのゲームをしたいと思って親に頼んで買ってもらったパソコンがある。

 確か、ガレリア?みたいな会社のパソコンだったはず。

 「ガレリア?みたいな会社から出てるパソコンを買いました。オープンワールドのゲームがやりたくて。」

 「そ、それは本当か・・!じゃあ、一緒にやらないかい?」

 「えぇ・・でも私RPGですら上手く出来なくて、今は完全に調べもの専用のパソコンになってますし・・」

 「大丈夫だ!私が一からしっかり教えてあげよう!」

 中野先生の気迫に負けてしまい私は「わ、分かりました・・」と了承してしまった。

 「本当か・・!やっとこれで夢のフルパが組める・・」

 「ふるぱ・・?」

 「あぁ、いやこっちの話だ。すまないね興奮してしまって。今スマホはあるかい?」

 私は服のポケットに手を突っ込むがスマホは無い、きっと病室に置いてきてしまったのだろう。

 「あぁ・・多分病室に置いてきちゃいました・・」

 中野先生は白衣のポケットに手を突っ込むと一枚の紙を取り出した。

 「これ、私のLIMUのIDだ。登録しといてくれ、あと退院したら連絡をくれ。」

 「分かりました・・」

 私が紙をIDの書かれた紙を受け取ると、中野先生は「それじゃあ、私はまだ仕事があるので。」と言い診察室から出て行った。
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