私の恋人は幼馴染(♀)

竜田優乃

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16.後輩天使

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 頭に痛みが走ったので、私は目を開ける。

 周りを見ても誰も居ない。

 きっと頭痛だろう。

 「頭いったぁ・・」

 独り言をぼやき、体を伸ばして上半身を起こす。

 やはり傷が深いのか体を伸ばした時、腹部が少し痛んだ。

 「うっ・・」

 起きたと同時に尿意を感じたので、私はベットから降りた。

 病院から貸し出されているスリッパを履き、病室から出る。

 トイレは廊下ろうかの突き当りにあるので少し歩かなければいけない。

 「ううっ・・」

 尿意が凄く近いので、目立たないように小走りでトイレに向かった。

 なんとかトイレには間に合った。

 個室に入り「ふぅ~」と安堵の息をつき、尿を出す。

 紙で股を拭いて、ズボンを上げて個室から出た。

 ちゃんと手を洗って、小走りではなく普通に歩いて病室に戻る。

 病室に戻っている時、ほとんどの病室のドアが閉まっている中、一つだけドアが開いていた。

 別に覗きたいから覗いたわけではない、不可抗力と言うか角度的に室内が見えた。

 その病室には、酸素マスクのつけたおじいさんが寝ているわけでもなく、足が折れているのか足を包帯でぐるぐる巻きにされている人が寝ているわけでもない。

 一言で表すなら 〝天使" とでも言おう。

 それだけ可愛らしい女の子がベットに座り、本を黙々もくもくと読んでいた。

 いつの間にか私は、その病室に足を踏み入れていた。

 「だ、だれ・・?」

 可愛いらしい女の子は、当たり前の反応をした。

 そりゃ当たり前だ、本を読んでいる最中に知らない人が入って来たら皆同じ反応をするだろう。

 「え、あ、ごめんなさい・・つい、あなたが可愛らしくて・・」

 女の子は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに「ハハハ・・!」と私を見て吹き出した。

 「え、あ・・」と私がキョドっていると女の子は「まぁまぁ、ここ座って?」とベットを叩いた。

 女の子にうながされ、私は女の子の隣に座った。

 「あなた、面白いね。」

 「あ、え、その・・・」

 「ふふふ、本当に面白い・・!」

 「え、いや・・あの・・その・・」

 「ごめんなさい、自己紹介してなかったね。私、請川うけがわ 望海のぞみって言います。あなたは?」

 請川、全く聞いた事のない苗字だなと思いながら私も自己紹介した。

 「あ、私は西嶋にしじま 波瑠はる。その、いきなり入ってきてしまってごめんなさい。」

 私はベットから立ち上がり、望海の正面に立ち頭を下げた。

 最近、頭しか下げてないなとこの時思った。

 「ふふふ・・あははは・・!本当になんでこんなに面白いの・・?」

 私をバカにしているのか望海はお腹を抱えて笑っている。

 「もう・・なによ・・・」

 「いや・・ごめんなさい・・面白過ぎて我慢できなかったの、許して?」

 「まぁ、私が悪いし。」

 「そう、ところであなた高校生・・?」

 「うん、明翔学園に通っている高校一年生。」

 望海は「うわぁ~!」と歓喜の声を上げた。

 「どうしたの・・?」

 「私も明翔学園の生徒なんです。」

 私は一瞬「え?」となった。

 私が学校で生活してるときこんなに可愛い子を見たら、目に焼き付いて忘れないはず。

 なのに今こうやって喋っているが、望海の反応からして私と望海は初対面。

 「私、今中学三年で中等部にいます。」

 望海の説明で理解できた、明翔学園めいしょうがくえんは中高一貫校だか中等部と高等部で建物が別れている。

 それに、中等部と高等部で制服も違うので制服さえ来ていれば見分けることは容易よういだ。

 しかし、今の望みは病院から貸し出されているパジャマみたいな物。

 分かるわけもない。

 「じゃあ、私の後輩・・?」

 「はい!私先輩とお話してみたいなぁってずっと前から思ってたんです。」

 望海の目はキラキラと光ってはいないが、心を輝かせているのは声から伝わった。

 「学校始まってまだ、4カ月ぐらいしか経ってないからなぁ。」

 「それでも良いです!さぁ、早く話してください!と言いたいところですが今から親が来る予定なんですよ・・」

 「あ、それはまずかったね。ごめん、私出ていくね。」

 そう言い、ベットから立ち上ろうとする。

 すると服の袖が引っ張られた。

 「あの・・LIMU教えてくれませんか・・?」

 「うーん」と一瞬悩んだ、悩んだ理由はもしかしたら浮気になるかもしれないから。

 別に私が男と付き合っているなら全然問題ないが、今は絵梨香と付き合っている。

 絵梨香に何か言われそう、別れを切り出されそう、私に恐怖が襲ってきた。

 「あの・・だめですか・・?」

 しかし、そんな邪念じゃねんも一瞬で切り払われた。

 なに、この子。

 望海は私の袖を掴みながら、上目遣いに加えてアヒル口攻撃。

 こんなの私が耐えられるはずなく、気づけばスマホを取り出していた。

 「やったー!」と望海は歓喜の声を上げて小さくジャンプをする。

 しかし、ジャンプをした後「ゴホゴホ」と苦しそうに咳き込んだ。

 「ちょっと、大丈夫なの・・!?」

 「すみません、嬉しくてはしゃいじゃいました。私、結構重い喘息ぜんそく持ちで激しい運動とか出来なくて、今は定期的に入院しないといけなくなっちゃって。」

 「そうなの、早く治るといいわね。」

 「けど、私にも病院で会える〝友達"が出来たんだもん。嬉しい。」

 「そう・・」

 「あ、もうそろそろ時間だ。」

 「あ、ごめんね。じゃあね、望海。」

 「はい、ありがとうございました。波瑠先輩。」

 望海に別れを告げて、私は病室を出た。

 先輩。

 響きが良くて何か良い。

 正直、先輩なんて初めて言われたから嬉しかった。

 私は余韻よいんひたりながら、自分の病室に戻った。
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