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大丈夫だよお兄ちゃん、だって私たち義理だから
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闇の中を照らす一筋の光。
そんなものに俺は出会い、そして今も照らされ続けている。
~△~
小学3年生の頃、俺の母親が死んだ。
重い病気で亡くなったがその息子が――とかいう感動的なストーリーではない。
ただの交通事故、買い物に行ったその帰りに暴走した軽自動車に轢かれて死んだ。
事故の原因は相手の飲酒運転。
今でも覚えている、俺の母親を殺した犯罪者が法廷で言い訳をだらだら話していたことを。
俺もあの時はひどく荒れていた。
親父の作る飯に不味いとケチをつけたり、絶対に帰って来ないのに親父に「お母さんはどこなの!」って駄々こねてた。
だけど、そんな俺より母親を失った親父は酷かったな。
俺、親父の作った飯を不味いって言うと酷く落ち込んで仕事にも力が入っていないようでいつも家で残業してた。
見る見る内に親父はどんどん廃れていって、休職するまでになってしまった。
そしてある日、俺がトイレに行きたくなって深夜起きると仏壇の前で一人、親父が泣いていた。
俺はこの時思ったんだ、親父まで失ったら俺はどうなってしまうんだと。
だからこの日から俺は親父に対する対応を変えた。
いくら飯が不味くても無理をして笑顔を作って美味しいて言ったり、親父が家にいる時はなるべく話すようにした。
そしたら親父の顔にだんだん笑顔が戻って来て俺が小学4年生になる頃には母親が生きていた頃の親父に戻りかけていた。
そして小学4年の夏休み、親父が二人の女性を連れて来た。
「初めまして涼花くん。私、及川春奈って言います。あなたの新しいお母さんよ」
俺はこの時、安心と不安の二つの感情に襲われた。
どっちかて言うと不安の方が強かった。
親父が一年間俺の事を男手一つで育ててくれていたからそこに女の手が加わって親父の負担が軽減出来ると思ったから、だけどあの時の俺は新しい母親がどんな人か分からかった。
だから、不安感を覚えたのかな。
「こ、こんにちは……」
「これからよろしくね。それと……」
春奈さんが視線を後ろにそらした。
視線をそらした先には一人の女の子が居た。
「ほら、あいさつしなさい。みなみ」
春奈さんに名前を呼ばれた少女は陰からひょこっと姿を現して頭を小さく下げた。
「こ、こんにちは……及川みなみって言います。しょ、小学1年生です!」
少し色素の抜けた茶髪、身長は俺の頭一つ分ぐらい低く何かのぬいぐるみを抱えていた。
顔立ちもまだ小さいからか分からないがとても整っていた。
学校など、俺は母親以外の女性と関わりが無かったから恥ずかしくなってしまいあの時は頭を下げる事しかできなかった。
頭を上げてみると、みなみも人見知りだったのかすぐにお母さんの後ろに隠れてた。
俺は言葉も交わせなかったのに、この子は勇気を出して喋ることが出来た。
少し劣等感を感じた。
まぁそれからは新しい親と妹と、俺と親父の4人での生活が始まった。
と言っても生活に慣れるまでは時間が掛かったし、大きな問題があった。
それはみなみが不登校という事だ。
みなみは父親を失った事で酷く心を閉ざしていた
そのため部屋に閉じこもっていて、出てくる時もご飯や風呂などでしか出てこなかった。
俺はみなみと仲良くしたいと思った、せっかく兄弟になってお互いに親を失ってみなみの気持ちも十分に理解出来た。
だからなるべく父親の事を刺激しないようにみなみに毎日、ドア越しだが話しかけ続けた。
「一緒に遊ぼう」だとか「部屋から出てみない?」だとか掛けれる言葉を掛け続けた。
そして俺が小学5年になった頃、みなみは心を開いてくれたのか部屋に入れてくれるようになった。
最初に部屋に入った時、俺は凄く驚いた。
壁一面に原稿用紙が貼られていて床にも原稿用紙が散乱してた。
「だから入れたくなかったんだよ」
その言葉を今でも俺は覚えている。
みなみの嫌われるんじゃないかという不安そうな顔、怖いのか手が震えている。
そんな些細な事まで覚えているとか俺は飛んだ変体かもな。
けど、みなみの部屋に落ちていた一冊の本が俺たちを変えたんだよな。
【私たち、義理だからなんでもできるんだよ?】
この本によって俺とみなみの人生が変わった。
「あ、お兄ちゃんだめ!その本は――」
みなみの忠告を聞かずに俺はその本を拾い上げた。
皆川静香のライトノベル。
当時とてつもない人気を誇っていた作家がライトノベルを書き上げた事で注目を浴びた作品。
ジャンルは不純愛、高校生の主人公が親の再婚をきっかけに義妹と恋人になったりする作品。
といっても当時の俺はそんなの知らずにタイトルから「なんだこれ?」と思った。
だけど、俺はその表紙のイラストに目を惹かれた。
主人公とヒロインの義妹が抱き合っているという表紙、それがとても美しいように見えた。
そして壁一面に貼られた原稿用紙、近くに行って見てみると一枚一枚しっかりと文字で埋められていて内容としては義理の兄妹が愛を育むという内容だった。
文字もお世辞にもキレイとは言えず日本語もぐちゃぐちゃだった。
だけど、このライトノベルを読んでそこから物語を連想してここまで書き上げるのは凄いと思った。
この時俺はみなみに聞いた「お前はこの本を書いているような人間になりたいのか?」と。
みなみは俺の問いに対して「うん、じゃなかったらこんなに書かない」と答えた。
みなみの不登校を治す、そんな目的は俺の心にはもう無かった。
みなみと仲良く、そしてみなみの夢を叶えたいと思った。
そして俺はこの日から絵の練習をするようになった。
小学生の頃はひたすら紙に、中学生になってタブレットを買って貰ってアプリで練習、高校生になってやっとペンタブを買って貰い学校の勉強で使うからとパソコンも買って貰った。
そして俺は今大学生、みなみは高校生になった。
みなみは中学生の時、アメジスト文庫の新人賞で大賞を受賞して比翼れんりとして作家デビュー、俺はイラスト投稿サイトで百乱繚花としてフォロワー20万人の人気イラストレーターになった。
みなみのデビュー作【義妹は結婚出来るんだよ?知らなかったのお兄ちゃん】で俺がイラストを担当して二人の約束、そして夢は叶った。
「ありがとう、お兄ちゃん。やっと、私の夢が叶ったよ」
「うん、俺もみなみの夢の手伝いが出来て嬉しい」
俺の隣で今キーボードを叩いている女性がいる。
それが俺の義妹、生方みなみだ。
そんなものに俺は出会い、そして今も照らされ続けている。
~△~
小学3年生の頃、俺の母親が死んだ。
重い病気で亡くなったがその息子が――とかいう感動的なストーリーではない。
ただの交通事故、買い物に行ったその帰りに暴走した軽自動車に轢かれて死んだ。
事故の原因は相手の飲酒運転。
今でも覚えている、俺の母親を殺した犯罪者が法廷で言い訳をだらだら話していたことを。
俺もあの時はひどく荒れていた。
親父の作る飯に不味いとケチをつけたり、絶対に帰って来ないのに親父に「お母さんはどこなの!」って駄々こねてた。
だけど、そんな俺より母親を失った親父は酷かったな。
俺、親父の作った飯を不味いって言うと酷く落ち込んで仕事にも力が入っていないようでいつも家で残業してた。
見る見る内に親父はどんどん廃れていって、休職するまでになってしまった。
そしてある日、俺がトイレに行きたくなって深夜起きると仏壇の前で一人、親父が泣いていた。
俺はこの時思ったんだ、親父まで失ったら俺はどうなってしまうんだと。
だからこの日から俺は親父に対する対応を変えた。
いくら飯が不味くても無理をして笑顔を作って美味しいて言ったり、親父が家にいる時はなるべく話すようにした。
そしたら親父の顔にだんだん笑顔が戻って来て俺が小学4年生になる頃には母親が生きていた頃の親父に戻りかけていた。
そして小学4年の夏休み、親父が二人の女性を連れて来た。
「初めまして涼花くん。私、及川春奈って言います。あなたの新しいお母さんよ」
俺はこの時、安心と不安の二つの感情に襲われた。
どっちかて言うと不安の方が強かった。
親父が一年間俺の事を男手一つで育ててくれていたからそこに女の手が加わって親父の負担が軽減出来ると思ったから、だけどあの時の俺は新しい母親がどんな人か分からかった。
だから、不安感を覚えたのかな。
「こ、こんにちは……」
「これからよろしくね。それと……」
春奈さんが視線を後ろにそらした。
視線をそらした先には一人の女の子が居た。
「ほら、あいさつしなさい。みなみ」
春奈さんに名前を呼ばれた少女は陰からひょこっと姿を現して頭を小さく下げた。
「こ、こんにちは……及川みなみって言います。しょ、小学1年生です!」
少し色素の抜けた茶髪、身長は俺の頭一つ分ぐらい低く何かのぬいぐるみを抱えていた。
顔立ちもまだ小さいからか分からないがとても整っていた。
学校など、俺は母親以外の女性と関わりが無かったから恥ずかしくなってしまいあの時は頭を下げる事しかできなかった。
頭を上げてみると、みなみも人見知りだったのかすぐにお母さんの後ろに隠れてた。
俺は言葉も交わせなかったのに、この子は勇気を出して喋ることが出来た。
少し劣等感を感じた。
まぁそれからは新しい親と妹と、俺と親父の4人での生活が始まった。
と言っても生活に慣れるまでは時間が掛かったし、大きな問題があった。
それはみなみが不登校という事だ。
みなみは父親を失った事で酷く心を閉ざしていた
そのため部屋に閉じこもっていて、出てくる時もご飯や風呂などでしか出てこなかった。
俺はみなみと仲良くしたいと思った、せっかく兄弟になってお互いに親を失ってみなみの気持ちも十分に理解出来た。
だからなるべく父親の事を刺激しないようにみなみに毎日、ドア越しだが話しかけ続けた。
「一緒に遊ぼう」だとか「部屋から出てみない?」だとか掛けれる言葉を掛け続けた。
そして俺が小学5年になった頃、みなみは心を開いてくれたのか部屋に入れてくれるようになった。
最初に部屋に入った時、俺は凄く驚いた。
壁一面に原稿用紙が貼られていて床にも原稿用紙が散乱してた。
「だから入れたくなかったんだよ」
その言葉を今でも俺は覚えている。
みなみの嫌われるんじゃないかという不安そうな顔、怖いのか手が震えている。
そんな些細な事まで覚えているとか俺は飛んだ変体かもな。
けど、みなみの部屋に落ちていた一冊の本が俺たちを変えたんだよな。
【私たち、義理だからなんでもできるんだよ?】
この本によって俺とみなみの人生が変わった。
「あ、お兄ちゃんだめ!その本は――」
みなみの忠告を聞かずに俺はその本を拾い上げた。
皆川静香のライトノベル。
当時とてつもない人気を誇っていた作家がライトノベルを書き上げた事で注目を浴びた作品。
ジャンルは不純愛、高校生の主人公が親の再婚をきっかけに義妹と恋人になったりする作品。
といっても当時の俺はそんなの知らずにタイトルから「なんだこれ?」と思った。
だけど、俺はその表紙のイラストに目を惹かれた。
主人公とヒロインの義妹が抱き合っているという表紙、それがとても美しいように見えた。
そして壁一面に貼られた原稿用紙、近くに行って見てみると一枚一枚しっかりと文字で埋められていて内容としては義理の兄妹が愛を育むという内容だった。
文字もお世辞にもキレイとは言えず日本語もぐちゃぐちゃだった。
だけど、このライトノベルを読んでそこから物語を連想してここまで書き上げるのは凄いと思った。
この時俺はみなみに聞いた「お前はこの本を書いているような人間になりたいのか?」と。
みなみは俺の問いに対して「うん、じゃなかったらこんなに書かない」と答えた。
みなみの不登校を治す、そんな目的は俺の心にはもう無かった。
みなみと仲良く、そしてみなみの夢を叶えたいと思った。
そして俺はこの日から絵の練習をするようになった。
小学生の頃はひたすら紙に、中学生になってタブレットを買って貰ってアプリで練習、高校生になってやっとペンタブを買って貰い学校の勉強で使うからとパソコンも買って貰った。
そして俺は今大学生、みなみは高校生になった。
みなみは中学生の時、アメジスト文庫の新人賞で大賞を受賞して比翼れんりとして作家デビュー、俺はイラスト投稿サイトで百乱繚花としてフォロワー20万人の人気イラストレーターになった。
みなみのデビュー作【義妹は結婚出来るんだよ?知らなかったのお兄ちゃん】で俺がイラストを担当して二人の約束、そして夢は叶った。
「ありがとう、お兄ちゃん。やっと、私の夢が叶ったよ」
「うん、俺もみなみの夢の手伝いが出来て嬉しい」
俺の隣で今キーボードを叩いている女性がいる。
それが俺の義妹、生方みなみだ。
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