【完結】攻略中のゲームに転生したら攻略されました

久乃り

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俺は知らない

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全身がだるくて、とても安眠したとは思えない目覚め方だった。
 俺、何してたんだっけ?
 喉乾いたし、腹も減ってる気がする。でも、起き上がるのがめんどくさい。無理やり意識を持ってくると、薄暗い天井が見えた。
 最初に目覚めた部屋だ。
 目線だけ動かすと、やっぱりサイドテーブルに水差しがあった。
 めんどくさいけど、起き上がって水を飲む。
 その音に反応したのか、衝立の後ろから侍従がでてきた。

「お食事、なさいますか?」
「あ、あー、うん」

 今更だけど、男だ。ちょっと、少年っぽい感じの外見をしている。
 俺の周りには、女性は配置されないようだ。




 王子がいつもの通りにやってきて、いつもの通りに過ごしていたのだが、なにか様子が違っていた。
 具体的に何が違うのかは上手く言えなかったのだが、階段上の寝台で王子が俺の体を撫で回しているのに、王子の顔がいつもと違っていた。

「今日は、少し違う趣向がある」

 そう言って王子が黒い布を俺の前に出してきた。
 形状としてはハチマキのようにも見える細長い黒い布。だけど、この布は見覚えがある。俺は緊張して思わず唾を飲み込んだ。

「な、にを?」

 俺の脳裏に浮かぶのは、あの日の光景。黒い布は頭に巻かれ、視界を遮っていた。それをされるのは、先の未来を絶たれる。

「少し、怖い思いをするかもしれないが、耐えて欲しい」

 王子が辛そうな顔をして、それでも俺に黒い布をあててきた。俺は抵抗が出来ないので、大人しくされるがままに黒い布を巻き付けられた。
 後頭部で、布が締められる音がして、耳元で王子の静かな呼吸が聞こえる。縛った後にそのまま王子の手は俺の首裏に当てられて、腰にも回された手と同時に力が加えられた。

 俺は王子に起こされて、一旦座らせれたあと、横抱きにされて運ばれた。距離にして大したことは無かったが、王子に簡単に運ばれてしまう俺って、そんなに軽いのだろうか?それとも、王子はやっぱりかなり鍛えているということなのだろうか?そんなことを考えているが、俺は多分背もたれのある椅子に座らされている。
 王子が俺の身体を軽くなでながら、俺の両腕を後ろにまわした。

「なんですか?」

 咄嗟に声が出たが、回答は得られなかった。代わりに王子の低い笑い声が聞こえて、なにか企んでいることが想像できた。が、それが何であるかまだ分からない。
 後ろに回された手は、手首の辺りで縛られた。ロープの類でなく布のような幅の広いものが使用されたのが分かる。

「いい子だ」

 王子が俺の頬を撫で、軽く唇を寄せてきた。
 王子が離れる気配がして、俺は部屋の中の気配を懸命に探した。扉が開く音がして、誰かが入ってきた。
 衣擦れの音は侍従の物とは違う、この捌き方は、女性のそれだ。
 俺が身動ぎできずにいると、王子が俺の傍にくる気配があった。

「いい子だ、素直になるのだぞ」

 耳元で囁くように言われる言葉に、内心首を傾げる。何を素直に?
 そもそも、俺は裸で椅子に座らされているわけで、目隠しをされて拘束されている。普通に考えて、だいぶおかしなことだ。

「んぁ、な、なにを?」

 王子の手が俺を扱き始めた。緩急をつけたその動きは俺を一気に高みにまで連れていった。が、そこで王子の手が止まった。
 王子の手が離れ、気配が動くのが分かる。代わりに誰かが俺に近づいできたのが分かった。
 俺の前に立つ人物が、微かに緊張しているのが伝わってくる。衣擦れの音と、なにか粘着質な水音が微かに聞こえた。ついで、深く長い呼吸音がして、その人物が緊張しているであろうことが伝わってきた。

 しかし、言葉を発することはなく、その人物は俺の正面立ち、そして俺の方に手を置いた。

 その手の大きさから、その指の形から、俺はその人物を想像した。
 大して大きくなく、滑らかな肌質の長い指。その指にすっと力が入った。

「ん、んぁ…え、あ、くぅ」

 誰かの胎内に入っている?

 温かくてしっとりとした壁が俺を包むように咥えこんで、俺の顔の近くで少し苦しげな息遣いが聞こえた。
 太腿に誰かの肌が乗ってきた。
 苦しげな息遣いに気を取られていると、背後に気配がやってきた。

「あぁ、あっ、あ、あぁ、んぁん」

 椅子に座る俺の中に、指が入ってきた。見なくても分かる、王子の指だ。
 すっかり覚えさせられた、王子の長く形の良い指が俺の胎内をかき混ぜている。
 俺を胎内に招き入れた人物は、まったく動かず、声も発しないで俺の肩を掴んだままだ。
 俺は後ろをまさぐられて、いつものように高みを目指された。

「はぁ、あ、あん、っん、う」

 後ろをいいように刺激され、俺のモノが反応してしまう。それに合わせて思わず腰が揺れるのだか、俺は誰かの胎内に入れられてしまっているため、心地の好い温かさが俺を包み込んで揺さぶってくる。

 俺の顔の前で、短く洗い呼吸を繰り返す人物は、俺の肩を掴む指に力を入れてきた。
 王子が俺の耳を軽く食み、耳の中をその音で犯して来た。下半身からと耳の中に粘着質な水音が響いて、俺はどこに神経を集中していいのかわからなくなっていた。

 自分では自由に身体を動かすことは出来ない。腰が跳ねるように動いてしまうが、自分の意思ではなく後ろに与えられる刺激に対する反応に過ぎない。けれど、そんな動きでも、俺自身は温かな誰かの胎内の中にいるせいで、溶かされるような刺激を受け入れてしまっていた。

「っあ、も、う、でるぅ」

 俺は達してしまい、軽く痙攣するように身体を震わせていた。そうしているうちに、俺の肩にあった手は存在をなくし、気配も消えていた。
 普段と違う行為に、椅子の背もたれへと全身を預けるように沈み込む。

「疲れただろう?」

 王子がそう言って、俺の手の戒めをとく。だが、目隠しはまだとってもらえなかった。
 また俺を横抱きにして、ゆっくりと寝台に寝かせてくれた。
 温かいタオルで、俺の体を拭いてくれているのは王子だ。体を拭きながら、時折優しく髪を撫でてくれる。すっかり綺麗にしてもらい、俺はいつもの寝間着を着せてもらうと、ようやく目隠しをとってもらえた。

 王子の顔を見て、俺はうっすらと分かっていることを聞くのを躊躇った。おそらく聞いてはいけないと思われる。
 俺は、俺の顔中にキスを落とす王子を黙って見つめることで、理解していることを伝えてみた。
 王子は、黙って俺を見つめると、そのまま唇を重ねてきた。
 俺は今更抵抗する必要も無いので、そのまま深く受け入れた。

「ふっ、ん……んぅ」

 唇をずらしながら、角度を変えて深くすることにだいぶ慣れた。鼻で息をするのはまだ難しいので、唇が離れた瞬間に息を吸い、鼻からは専ら息を抜いている。
 だから、時間が長いと結局は終わったあとに呼吸が荒くなる。

「今日はもうゆっくり休め」

 俺は王子に抱きしめられて、その日は腕枕で眠りについた。
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