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第38話 挙手制ではない
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アーシアが考え込んでいるすきに、テオドールが割り込んできた。テオドールは魔術学科の総代であるから、学年の誰よりも魔法を使いこなせる。
「これで、四人揃ったわね」
ゲームでのパーティーは四人編成だった。アーシアが主人公の場合、レイヴァーンの好感度が高いと自動的にテリーがついてくる。テオドールの時は、セドリックだ。
アーシアが喜んで手を叩いた時、アーシアの顔に影がかかった。
「私も是非に参加したいものだ」
ロイが攻略なんかしていないのに、アレックスがやってきた。当然、その隣にはテリーがいた。
「私も光魔法が使える。それに、セドリックの英雄の技を見てみたい」
アーシアからしたら、隠しキャラ的扱いの第二王子アレックスだ。アレックスが所属しているのが騎士科であるから、テリーがついてきたというわけらしい。四人パーティーだと思っていたのに、六人になった。
ダンジョンを一緒に攻略すれば好感度が上がるから、アーシアとしては願ったりだ。けれど、六人でダンジョンを歩くのはなかなか面倒そうだ。それに、ダンジョンまでゲームでは転移魔法で移動していたけれど、アーシアはまだ自分にしか転移魔法がかけられない。
「転移魔法使えるの?」
ロイがテリーに聞いた。王子の護衛であるからには、テリーは自分ともう一人にぐらいは転移魔法をかけられるはずだ。
「もちろんだ」
テリーの答えにアレックスも頷いた。
「私の護衛をするからには、当然のことだ」
アレックスがそう言いつつも、結構なドヤ顔をしているのに気がついて、アーシアは慌てて顔を背けた。このまま見続けたら笑ってしまう。
「なにも転移魔法を各自バラバラに発動させる必要はないでしょう。正確な場所はロイしかわからないのですから、皆で一斉に飛べば済む話です。魔力量は全員豊富なのですから」
テオドールがそう言えば、アレックスが頷いた。そもそも、ここにはいないが、肝心のセドリックは転移魔法を操れなかったはずだ。
「剣ができるまでセドも転移魔法をマスターするからさ、よろしくね、アーシア」
あくまでも、アーシアを誘ったつもりのロイは、若干背中を向けているアーシアに話しかける。ここは魔術学科であるから、アーシアのゲームであるはずだ。だから、同行を申し出てきたメンバーは、アーシアが攻略中だと思っているのだ。体感で、アーシアが怒ると怖いから、ロイは意識して邪魔をしないようにいているのだ。
「わかったわ」
そう、返事だけをするつもりで、アーシアはロイの方を見たのだけれど、周りの視線が恐ろしいことに気がついた。そもそも、アレックスを出す条件を満たしていなかったから、ここで出てきたのは完全にロイのルートだとは思っていたが、それにしてはアーシアに対しての視線がキツイ。正直殺されそうなレベルだ。
これは完全に、ロイが攻略方法を間違えている。
(プレイしたことがないとは言っていたけれど、ロイ、あんた仮にも王子をどんだけ放置したのよ)
出会っておきながら、攻略対象者を放置してしまうと、悪評がたったり、攻略中の相手の好感度が下がったりするのだ。ようは貴族の横のつながりの弊害のようなものなのだけれど、表面上はみんな仲良くということなのだ。しかも困ったことに、王子はヤンデレ化しやすい。出現した王子を放置してはならないのだ。
だがしかし、どう見てもロイは王子を放置したとしか思えない。
王子が出現したら、毎日挨拶をしないとダメなのに、おそらくしていない。ただでさえ第二王子だというのに……
「では、私はこれで失礼しますわ。夜更かしはお肌に悪いのでぇ」
この場合、ストレスが美容の大敵だろう。アーシアはからの皿がのったトレイを持って、そそくさとその場を離れた。実家で夕飯を食べてきてしまっているロイは、アーシアがいなければここにようはなかった。
「じゃ、剣ができたら連絡するね」
ロイはそう言い残して転移魔法を発動させていなくなった。テオドールはアレックスの顔を確認すると、一礼して立ち去った。こちらはきちんと徒歩である。テオドールの行き先は、自室ではないのは当然だった。
「これで、四人揃ったわね」
ゲームでのパーティーは四人編成だった。アーシアが主人公の場合、レイヴァーンの好感度が高いと自動的にテリーがついてくる。テオドールの時は、セドリックだ。
アーシアが喜んで手を叩いた時、アーシアの顔に影がかかった。
「私も是非に参加したいものだ」
ロイが攻略なんかしていないのに、アレックスがやってきた。当然、その隣にはテリーがいた。
「私も光魔法が使える。それに、セドリックの英雄の技を見てみたい」
アーシアからしたら、隠しキャラ的扱いの第二王子アレックスだ。アレックスが所属しているのが騎士科であるから、テリーがついてきたというわけらしい。四人パーティーだと思っていたのに、六人になった。
ダンジョンを一緒に攻略すれば好感度が上がるから、アーシアとしては願ったりだ。けれど、六人でダンジョンを歩くのはなかなか面倒そうだ。それに、ダンジョンまでゲームでは転移魔法で移動していたけれど、アーシアはまだ自分にしか転移魔法がかけられない。
「転移魔法使えるの?」
ロイがテリーに聞いた。王子の護衛であるからには、テリーは自分ともう一人にぐらいは転移魔法をかけられるはずだ。
「もちろんだ」
テリーの答えにアレックスも頷いた。
「私の護衛をするからには、当然のことだ」
アレックスがそう言いつつも、結構なドヤ顔をしているのに気がついて、アーシアは慌てて顔を背けた。このまま見続けたら笑ってしまう。
「なにも転移魔法を各自バラバラに発動させる必要はないでしょう。正確な場所はロイしかわからないのですから、皆で一斉に飛べば済む話です。魔力量は全員豊富なのですから」
テオドールがそう言えば、アレックスが頷いた。そもそも、ここにはいないが、肝心のセドリックは転移魔法を操れなかったはずだ。
「剣ができるまでセドも転移魔法をマスターするからさ、よろしくね、アーシア」
あくまでも、アーシアを誘ったつもりのロイは、若干背中を向けているアーシアに話しかける。ここは魔術学科であるから、アーシアのゲームであるはずだ。だから、同行を申し出てきたメンバーは、アーシアが攻略中だと思っているのだ。体感で、アーシアが怒ると怖いから、ロイは意識して邪魔をしないようにいているのだ。
「わかったわ」
そう、返事だけをするつもりで、アーシアはロイの方を見たのだけれど、周りの視線が恐ろしいことに気がついた。そもそも、アレックスを出す条件を満たしていなかったから、ここで出てきたのは完全にロイのルートだとは思っていたが、それにしてはアーシアに対しての視線がキツイ。正直殺されそうなレベルだ。
これは完全に、ロイが攻略方法を間違えている。
(プレイしたことがないとは言っていたけれど、ロイ、あんた仮にも王子をどんだけ放置したのよ)
出会っておきながら、攻略対象者を放置してしまうと、悪評がたったり、攻略中の相手の好感度が下がったりするのだ。ようは貴族の横のつながりの弊害のようなものなのだけれど、表面上はみんな仲良くということなのだ。しかも困ったことに、王子はヤンデレ化しやすい。出現した王子を放置してはならないのだ。
だがしかし、どう見てもロイは王子を放置したとしか思えない。
王子が出現したら、毎日挨拶をしないとダメなのに、おそらくしていない。ただでさえ第二王子だというのに……
「では、私はこれで失礼しますわ。夜更かしはお肌に悪いのでぇ」
この場合、ストレスが美容の大敵だろう。アーシアはからの皿がのったトレイを持って、そそくさとその場を離れた。実家で夕飯を食べてきてしまっているロイは、アーシアがいなければここにようはなかった。
「じゃ、剣ができたら連絡するね」
ロイはそう言い残して転移魔法を発動させていなくなった。テオドールはアレックスの顔を確認すると、一礼して立ち去った。こちらはきちんと徒歩である。テオドールの行き先は、自室ではないのは当然だった。
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