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第37話 仲間を集めよう

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 何食わぬ顔で学園に戻り、ロイは当たり前のような顔をして聖女アーシアの前に立った。

「今食事中」

 アーシアはロイを軽く見ると、すぐに食事を再開した。夜の定食らしく、可愛らしいデザートまでついている。魔術学科の生徒は、騎士科の生徒に比べれば少食で、体も小さい。体を動かすより、頭を使うから、肉よりも糖分を欲する傾向がある。
 よって、主食とおなじくらいのデザートがついてくるのだ。

「今日はフルーツタルトかぁ」

 綺麗な色をした果物が、硬いクッキーでできた器にクリームと一緒に押し込まれている。実家で父親と一緒に夕食を済ませてきたロイは、お腹がいっぱいではあった。だが、フルーツタルトはなんとも目が欲しくなる。

「あんた騎士科じゃない」

 アーシアはそう言って、フルーツタルトを口に運んだ。実技で魔力を使ったから、体が色々欲しがっている。アーシアは幸せそうな顔をして、夕食を食べ終わらせた。

「ねぇ、アーシア」

 礼儀として、アーシアが食べ終わるのを待っていたロイは、ようやく話しかけた。

「なんの用?」

 口の端についたクリームを拭きながら、アーシアは目線だけをロイに向けた。ぶっちゃけアーシアはロイになんて用はない。

「ダンジョン行こう!ダンジョン」

 ロイは必要なことだけをすっぱりと口にした。

「はぁ?あんたいきなり何言ってんの?」

 アーシアの反応は至極当然のことなのだけれど、ダンジョンと言う単語が聞こえては、食堂にいる生徒たちは聞き耳をたてる。ロイの実家であるウォーエント子爵領にダンジョンがあることは、有名なことだ。授業でダンジョンに挑むけれど、それは王都から近い場所にあり、難易度も低い。

「今さ、セドの剣を作ってるの。だから、完成したらダンジョン行こう」

 ロイがそう話せば、アーシアはようやく合点がいった。キーワードはセドリックの剣だ。ゲームでは、セドリックの剣を作るのはミニゲームだった。素材を集めるのにパズルゲームするのだ。学園の中や王都の中を探検して、素材を見つける。そこにいる守護者とパズルゲームで対決をして勝てたら素材が手に入る。
 流れとしてはそんな感じだった。
 だから、アーシアは単純にロイとセドリックが素材を集めて工房に依頼した。程度にしか思っていなかった。

「いつごろできるのよ。剣は?」

 アーシアがそう聞くと、ロイは首をひねった。よく考えたら、製作期間なんて聞いてなかった。魔石の加工が、どれくらい手間がかかるかなんて知らない。鉱石を溶かして加工するのにどれほどの日数がかかるかも知らない。

「わかんない」

「はぁ?」

 ロイの答えにアーシアは大分低い声を出した。相変わらずロイは抜けている。肝心なことを知らないのだ。

「でも、ゲー………あ、うん、1ヶ月もあればできるんじゃないかなぁ」

 思わずゲームでは、次の月になると完成していたよね、なんて、言いそうになった。だから慌てて言い直す。

「ほんと、バカ。剣が出来たら教えて」

 アーシアはサラリとかわして返事をする。ロイにつられて転生者だなんて知られるわけにはいかない。

「アーシアは、光魔法使える?」

 アーシアの返事を快諾と受け取ったロイは、アーシアから肝心なことを聞くのを忘れていたことを思い出した。

「何言ってんの?」

 アーシアは怪訝そうな顔をしてきた。聖女であるから、光魔法が使えて当然だ。ゲームもしてきた転生者であるなら、知っていることだ。だからこそ、アーシアはそんな顔をしたのだけれど、ロイが聞きたかったのは、初期の光魔法ではない。

「あのね、行きたいダンジョンにアンデッドが出るんだ。だから、結構強い光魔法がいいんだけど」

 ロイがサラリとそんなことを言ってきたから、アーシアは驚きすぎて口が開いたままだ。

「うちの領地にある砦のダンジョンなんだけど、昼間でもアンデッドが出るんだよ。だから、強い光魔法の使い手が欲しいんだ」

 ロイの説明を聞いて、アーシアはようやく理解した。ゲームで出てきた上位のダンジョンだ。親密度が高くなければ挑めない。
 けれど、ロイは騎士科の主人公であるから、自分でダンジョンが選べるのだ。そもそも、ダンジョンに潜るのにロイは許可がいらない。パーティーメンバーを選んで誘うだけだ。

「光魔法の使い手を探しているのなら、是非ご一緒させて頂きたいですね」
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