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第16話 話せばわかる
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演習が終わったあと、ロイはみんなの前で叱られた。転移魔法を使うのは危険だと言うのだ。確かに、誰かと一緒に転移するのはリスクが大きいけれど、この程度の距離なら座標がズレることは無い。ただ、セドリックが思ったより重たくて、着地がいささか乱暴にはなったけど。
「だって、ずるいじゃないか、アレックスのチームには魔法を使えるのばっかり揃えて」
ロイがそう言うと、セドリックが眉をひそめた。それは言わない約束だったらしい。
「なるほど、だがセドリックのチームには魔術学科から編入してきたロイ、お前がいただろう?」
教師がそう口を開いたから、ロイはまた、反論した。
「俺が来るまでは、一方的にアレックスのチームが魔法を使って攻めてたんじゃないのか?」
「まぁ、そうだな」
「なんだよ、それ。演習なんだから、教師が力のバランスを見てチームを編成するんじゃないのかよ」
すかさずセドリックが口を挟んだ。
「戦闘において、相手と力が互角とは限らない。自分たちの能力を認識して、そこからの最大値での戦い方を考える事も大切な授業だ」
それを聞いた途端、ロイは教師の顔色を伺った。確かに、そういった授業は必要だろう。
「それをアレックスにもやらせなくちゃ意味が無いんじゃないか?」
ロイがそう言った途端、テリーの眉間にシワがよった。もちろん、教師の顔も引きつっている。
「私が優遇されている、と?」
軽く眉間に皺を寄せ、アレックスが口を開いた。テリー以下の、近衛候補らしい生徒がロイを睨んでいる。
「そうだろう?王子だからって何時でも完全な布陣で戦えるとは限らないだろう?敵が何時でも王子が相手だからって手を抜いてくれるとでも言うのか?逆だろう?王子が相手だと分かれば総力を上げて潰しに来るのが普通だ」
ロイがそう言うと、テリーが黙ってアレックスを見た。アレックスの反応を確認しているのだ。誰も言わなかったけれど、本当にどこかの敵国と戦ったら、一番最初に狙われるのは王子であるアレックスだ。
「つまり、なんだ?」
アレックスの片眉が上に上がった。その目はロイを睨んだようで、周辺を威圧している。
「あんたが軽んじられているんじゃないの?」
ロイは躊躇いもなく言った。魔術学科では魔力量が全てだった。だから平民だけど、聖女は好き勝手をしてる。下位貴族でもロイは発言を好きなだけしてきた。
「お前、ふざけるな!」
ロイの発言に反応したのは、テリー以下の近衛候補たちだ。これではまるで自分たちがアレックスを軽視していると思われる。
「あんたたちうるさい」
ロイは、三下雑魚程度にしか見ていない近衛候補たちを諌めた。
「第一だろうと第二だろうと、王子なんでしょ?」
ロイが小首を傾げながら聞く。
「そうだ」
アレックスが短く答えると、ロイは頷いた。
「だったら、自分で考えることも、必要なんじゃない?楽すること覚えちゃダメだよ」
ロイがそんなことを言ったものだから、セドリックが慌てて後ろからロイの口を塞いだ。不敬だとでも言うのだろうか。
「なるほど、お前は私が自分で考えていない。と言うのだな」
アレックスはそう言いながら、唇の端で笑っているようだった。
「うん。肝心なところをテリーに押し付けてる気がする」
テリーは騎士団長の息子だから、何事もなければ王子たちの代で騎士団長の職務に着くことだろう。そう考えれば、未来の側近なわけだから、あれこれ考えさせる事も必要かもしれない。けれど、それとこれとをこの演習に持ち込まれては困る。
「演習は演習。腹の探り合いは別のところでやって」
ロイがハッキリとそう言うと、テリーが目を閉じて深くため息をついた。おバカな側近候補たちをふるいにかけたかったのだろう。しかし、かけ終わる前にロイが、そいつらをまとめて切り捨ててしまったのだ。
「分かった。明日の演習の構成については、私が考えておこう」
アレックスがそう宣言をしたら、なぜか解散の流れになった。みな、ゾロゾロとシャワーを浴びに移動を始めて、当然のようにセドリックがロイの手を掴んだ。そうして、ロイを連れていこうとするけれど、ロイは歩こうとしないで手を繋ぐセドリックを見た。
お互いの腕の長さ分だけ離れた状態で、セドリックとロイが見つめ合う形だ。
「どこ行くの?」
一応、抵抗の意思があることを示すために、ロイが懸命に足をふんばった。もちろん、セドリックに対してそれが有効だとは思ってなどいない。
「シャワーを浴びるにきまっている」
セドリックはそう言うと、ロイの抵抗など気にもしてい無い様で、ロイの手をそのままひくと、まるで荷物のように肩に担いでしまった。
「だって、ずるいじゃないか、アレックスのチームには魔法を使えるのばっかり揃えて」
ロイがそう言うと、セドリックが眉をひそめた。それは言わない約束だったらしい。
「なるほど、だがセドリックのチームには魔術学科から編入してきたロイ、お前がいただろう?」
教師がそう口を開いたから、ロイはまた、反論した。
「俺が来るまでは、一方的にアレックスのチームが魔法を使って攻めてたんじゃないのか?」
「まぁ、そうだな」
「なんだよ、それ。演習なんだから、教師が力のバランスを見てチームを編成するんじゃないのかよ」
すかさずセドリックが口を挟んだ。
「戦闘において、相手と力が互角とは限らない。自分たちの能力を認識して、そこからの最大値での戦い方を考える事も大切な授業だ」
それを聞いた途端、ロイは教師の顔色を伺った。確かに、そういった授業は必要だろう。
「それをアレックスにもやらせなくちゃ意味が無いんじゃないか?」
ロイがそう言った途端、テリーの眉間にシワがよった。もちろん、教師の顔も引きつっている。
「私が優遇されている、と?」
軽く眉間に皺を寄せ、アレックスが口を開いた。テリー以下の、近衛候補らしい生徒がロイを睨んでいる。
「そうだろう?王子だからって何時でも完全な布陣で戦えるとは限らないだろう?敵が何時でも王子が相手だからって手を抜いてくれるとでも言うのか?逆だろう?王子が相手だと分かれば総力を上げて潰しに来るのが普通だ」
ロイがそう言うと、テリーが黙ってアレックスを見た。アレックスの反応を確認しているのだ。誰も言わなかったけれど、本当にどこかの敵国と戦ったら、一番最初に狙われるのは王子であるアレックスだ。
「つまり、なんだ?」
アレックスの片眉が上に上がった。その目はロイを睨んだようで、周辺を威圧している。
「あんたが軽んじられているんじゃないの?」
ロイは躊躇いもなく言った。魔術学科では魔力量が全てだった。だから平民だけど、聖女は好き勝手をしてる。下位貴族でもロイは発言を好きなだけしてきた。
「お前、ふざけるな!」
ロイの発言に反応したのは、テリー以下の近衛候補たちだ。これではまるで自分たちがアレックスを軽視していると思われる。
「あんたたちうるさい」
ロイは、三下雑魚程度にしか見ていない近衛候補たちを諌めた。
「第一だろうと第二だろうと、王子なんでしょ?」
ロイが小首を傾げながら聞く。
「そうだ」
アレックスが短く答えると、ロイは頷いた。
「だったら、自分で考えることも、必要なんじゃない?楽すること覚えちゃダメだよ」
ロイがそんなことを言ったものだから、セドリックが慌てて後ろからロイの口を塞いだ。不敬だとでも言うのだろうか。
「なるほど、お前は私が自分で考えていない。と言うのだな」
アレックスはそう言いながら、唇の端で笑っているようだった。
「うん。肝心なところをテリーに押し付けてる気がする」
テリーは騎士団長の息子だから、何事もなければ王子たちの代で騎士団長の職務に着くことだろう。そう考えれば、未来の側近なわけだから、あれこれ考えさせる事も必要かもしれない。けれど、それとこれとをこの演習に持ち込まれては困る。
「演習は演習。腹の探り合いは別のところでやって」
ロイがハッキリとそう言うと、テリーが目を閉じて深くため息をついた。おバカな側近候補たちをふるいにかけたかったのだろう。しかし、かけ終わる前にロイが、そいつらをまとめて切り捨ててしまったのだ。
「分かった。明日の演習の構成については、私が考えておこう」
アレックスがそう宣言をしたら、なぜか解散の流れになった。みな、ゾロゾロとシャワーを浴びに移動を始めて、当然のようにセドリックがロイの手を掴んだ。そうして、ロイを連れていこうとするけれど、ロイは歩こうとしないで手を繋ぐセドリックを見た。
お互いの腕の長さ分だけ離れた状態で、セドリックとロイが見つめ合う形だ。
「どこ行くの?」
一応、抵抗の意思があることを示すために、ロイが懸命に足をふんばった。もちろん、セドリックに対してそれが有効だとは思ってなどいない。
「シャワーを浴びるにきまっている」
セドリックはそう言うと、ロイの抵抗など気にもしてい無い様で、ロイの手をそのままひくと、まるで荷物のように肩に担いでしまった。
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