17 / 75
第16話 話せばわかる
しおりを挟む
演習が終わったあと、ロイはみんなの前で叱られた。転移魔法を使うのは危険だと言うのだ。確かに、誰かと一緒に転移するのはリスクが大きいけれど、この程度の距離なら座標がズレることは無い。ただ、セドリックが思ったより重たくて、着地がいささか乱暴にはなったけど。
「だって、ずるいじゃないか、アレックスのチームには魔法を使えるのばっかり揃えて」
ロイがそう言うと、セドリックが眉をひそめた。それは言わない約束だったらしい。
「なるほど、だがセドリックのチームには魔術学科から編入してきたロイ、お前がいただろう?」
教師がそう口を開いたから、ロイはまた、反論した。
「俺が来るまでは、一方的にアレックスのチームが魔法を使って攻めてたんじゃないのか?」
「まぁ、そうだな」
「なんだよ、それ。演習なんだから、教師が力のバランスを見てチームを編成するんじゃないのかよ」
すかさずセドリックが口を挟んだ。
「戦闘において、相手と力が互角とは限らない。自分たちの能力を認識して、そこからの最大値での戦い方を考える事も大切な授業だ」
それを聞いた途端、ロイは教師の顔色を伺った。確かに、そういった授業は必要だろう。
「それをアレックスにもやらせなくちゃ意味が無いんじゃないか?」
ロイがそう言った途端、テリーの眉間にシワがよった。もちろん、教師の顔も引きつっている。
「私が優遇されている、と?」
軽く眉間に皺を寄せ、アレックスが口を開いた。テリー以下の、近衛候補らしい生徒がロイを睨んでいる。
「そうだろう?王子だからって何時でも完全な布陣で戦えるとは限らないだろう?敵が何時でも王子が相手だからって手を抜いてくれるとでも言うのか?逆だろう?王子が相手だと分かれば総力を上げて潰しに来るのが普通だ」
ロイがそう言うと、テリーが黙ってアレックスを見た。アレックスの反応を確認しているのだ。誰も言わなかったけれど、本当にどこかの敵国と戦ったら、一番最初に狙われるのは王子であるアレックスだ。
「つまり、なんだ?」
アレックスの片眉が上に上がった。その目はロイを睨んだようで、周辺を威圧している。
「あんたが軽んじられているんじゃないの?」
ロイは躊躇いもなく言った。魔術学科では魔力量が全てだった。だから平民だけど、聖女は好き勝手をしてる。下位貴族でもロイは発言を好きなだけしてきた。
「お前、ふざけるな!」
ロイの発言に反応したのは、テリー以下の近衛候補たちだ。これではまるで自分たちがアレックスを軽視していると思われる。
「あんたたちうるさい」
ロイは、三下雑魚程度にしか見ていない近衛候補たちを諌めた。
「第一だろうと第二だろうと、王子なんでしょ?」
ロイが小首を傾げながら聞く。
「そうだ」
アレックスが短く答えると、ロイは頷いた。
「だったら、自分で考えることも、必要なんじゃない?楽すること覚えちゃダメだよ」
ロイがそんなことを言ったものだから、セドリックが慌てて後ろからロイの口を塞いだ。不敬だとでも言うのだろうか。
「なるほど、お前は私が自分で考えていない。と言うのだな」
アレックスはそう言いながら、唇の端で笑っているようだった。
「うん。肝心なところをテリーに押し付けてる気がする」
テリーは騎士団長の息子だから、何事もなければ王子たちの代で騎士団長の職務に着くことだろう。そう考えれば、未来の側近なわけだから、あれこれ考えさせる事も必要かもしれない。けれど、それとこれとをこの演習に持ち込まれては困る。
「演習は演習。腹の探り合いは別のところでやって」
ロイがハッキリとそう言うと、テリーが目を閉じて深くため息をついた。おバカな側近候補たちをふるいにかけたかったのだろう。しかし、かけ終わる前にロイが、そいつらをまとめて切り捨ててしまったのだ。
「分かった。明日の演習の構成については、私が考えておこう」
アレックスがそう宣言をしたら、なぜか解散の流れになった。みな、ゾロゾロとシャワーを浴びに移動を始めて、当然のようにセドリックがロイの手を掴んだ。そうして、ロイを連れていこうとするけれど、ロイは歩こうとしないで手を繋ぐセドリックを見た。
お互いの腕の長さ分だけ離れた状態で、セドリックとロイが見つめ合う形だ。
「どこ行くの?」
一応、抵抗の意思があることを示すために、ロイが懸命に足をふんばった。もちろん、セドリックに対してそれが有効だとは思ってなどいない。
「シャワーを浴びるにきまっている」
セドリックはそう言うと、ロイの抵抗など気にもしてい無い様で、ロイの手をそのままひくと、まるで荷物のように肩に担いでしまった。
「だって、ずるいじゃないか、アレックスのチームには魔法を使えるのばっかり揃えて」
ロイがそう言うと、セドリックが眉をひそめた。それは言わない約束だったらしい。
「なるほど、だがセドリックのチームには魔術学科から編入してきたロイ、お前がいただろう?」
教師がそう口を開いたから、ロイはまた、反論した。
「俺が来るまでは、一方的にアレックスのチームが魔法を使って攻めてたんじゃないのか?」
「まぁ、そうだな」
「なんだよ、それ。演習なんだから、教師が力のバランスを見てチームを編成するんじゃないのかよ」
すかさずセドリックが口を挟んだ。
「戦闘において、相手と力が互角とは限らない。自分たちの能力を認識して、そこからの最大値での戦い方を考える事も大切な授業だ」
それを聞いた途端、ロイは教師の顔色を伺った。確かに、そういった授業は必要だろう。
「それをアレックスにもやらせなくちゃ意味が無いんじゃないか?」
ロイがそう言った途端、テリーの眉間にシワがよった。もちろん、教師の顔も引きつっている。
「私が優遇されている、と?」
軽く眉間に皺を寄せ、アレックスが口を開いた。テリー以下の、近衛候補らしい生徒がロイを睨んでいる。
「そうだろう?王子だからって何時でも完全な布陣で戦えるとは限らないだろう?敵が何時でも王子が相手だからって手を抜いてくれるとでも言うのか?逆だろう?王子が相手だと分かれば総力を上げて潰しに来るのが普通だ」
ロイがそう言うと、テリーが黙ってアレックスを見た。アレックスの反応を確認しているのだ。誰も言わなかったけれど、本当にどこかの敵国と戦ったら、一番最初に狙われるのは王子であるアレックスだ。
「つまり、なんだ?」
アレックスの片眉が上に上がった。その目はロイを睨んだようで、周辺を威圧している。
「あんたが軽んじられているんじゃないの?」
ロイは躊躇いもなく言った。魔術学科では魔力量が全てだった。だから平民だけど、聖女は好き勝手をしてる。下位貴族でもロイは発言を好きなだけしてきた。
「お前、ふざけるな!」
ロイの発言に反応したのは、テリー以下の近衛候補たちだ。これではまるで自分たちがアレックスを軽視していると思われる。
「あんたたちうるさい」
ロイは、三下雑魚程度にしか見ていない近衛候補たちを諌めた。
「第一だろうと第二だろうと、王子なんでしょ?」
ロイが小首を傾げながら聞く。
「そうだ」
アレックスが短く答えると、ロイは頷いた。
「だったら、自分で考えることも、必要なんじゃない?楽すること覚えちゃダメだよ」
ロイがそんなことを言ったものだから、セドリックが慌てて後ろからロイの口を塞いだ。不敬だとでも言うのだろうか。
「なるほど、お前は私が自分で考えていない。と言うのだな」
アレックスはそう言いながら、唇の端で笑っているようだった。
「うん。肝心なところをテリーに押し付けてる気がする」
テリーは騎士団長の息子だから、何事もなければ王子たちの代で騎士団長の職務に着くことだろう。そう考えれば、未来の側近なわけだから、あれこれ考えさせる事も必要かもしれない。けれど、それとこれとをこの演習に持ち込まれては困る。
「演習は演習。腹の探り合いは別のところでやって」
ロイがハッキリとそう言うと、テリーが目を閉じて深くため息をついた。おバカな側近候補たちをふるいにかけたかったのだろう。しかし、かけ終わる前にロイが、そいつらをまとめて切り捨ててしまったのだ。
「分かった。明日の演習の構成については、私が考えておこう」
アレックスがそう宣言をしたら、なぜか解散の流れになった。みな、ゾロゾロとシャワーを浴びに移動を始めて、当然のようにセドリックがロイの手を掴んだ。そうして、ロイを連れていこうとするけれど、ロイは歩こうとしないで手を繋ぐセドリックを見た。
お互いの腕の長さ分だけ離れた状態で、セドリックとロイが見つめ合う形だ。
「どこ行くの?」
一応、抵抗の意思があることを示すために、ロイが懸命に足をふんばった。もちろん、セドリックに対してそれが有効だとは思ってなどいない。
「シャワーを浴びるにきまっている」
セドリックはそう言うと、ロイの抵抗など気にもしてい無い様で、ロイの手をそのままひくと、まるで荷物のように肩に担いでしまった。
57
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる