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ジークフリート目線9
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リヒト様にセレスティンの様態を報告に行っている間に、セレスティンが再び寝てしまった。倒れる程であるから、体調が思わしくないのだろう。セレスティン付きのメイドであるマリは、俺の事を疎ましと思っているのが丸わかりな目で俺を見つつも、実際に給金が公爵家から支払われているからか、仕方なしにという体で俺をセレスティンの寝台の側に案内してくれた。
天蓋が閉められていたので少しまくって中の様子を見れば、セレスティンが布団にすっぽりと埋まるような体勢で眠っていた。時折眉間にシワがより、聞き取れない言葉を呟いている。起こしてはいけないと思いつつも、そっと前髪をかきあげて額に唇を落とした。
「ゆっくり休ませてくれ」
俺はマリにそう告げると部屋を後にした。あの様子では起きたところで食事などとれそうにもない。念の為明日は学園を休む旨を伝えてある。今夜も明日の朝も一人で食事をとることになるが、致し方がないことだ。
だが、よもやセレスティンがそのまま昼過ぎても起きていなかったとは思わなかった。学園でいつもの通りにリヒト様の護衛をしていると、同じクラスのエトワール令嬢がセレスティンのお見舞いをしたいと申し出てきたのだ。セレスティンが自分に向かってなにか叫んだことが気になるらしい。断るのもおかしな話なので受け入れた。そうして、リヒト様からお見舞いの品を受け取ると、いつもより早く帰宅したのだ。だが、出迎えてくれた執事のカインが言うには、セレスティンは目覚めていないらしく、それでも構わないと言うからエトワール令嬢を通したという。
エトワール令嬢のことをリヒト様が気に入っていることは、カインには執務中に何度か話はしてあった。だから下位貴族の令嬢とは言えど、追い返さずに通したカインの判断は正しかった。なぜなら、俺は目が覚めたセレスティンとエトワール令嬢が俺に聞き取れない言語で会話をするのを聞いてしまったからだ。
「■■■■■■■おはよう」
不鮮明な言葉の後に俺にも聞き取れる日常の挨拶が聞こえた。だが、今は夕刻だ。朝の挨拶をするのはおかしな事だ。寝ぼけているセレスティンは、部屋に入る夕方の光を朝日と間違えているのかもしれない。そう思ったのだが、その後に聞こえてきたエトワール令嬢の言葉も不鮮明すぎて何を話しているのかまるで聞き取れなかった。
俺は自分の耳につけた通信の魔道具の音量を調節した。だが、二人が何を話しているのかまるで聞き取れない。何食わぬ顔でソファーに腰かけていたが、さすがに我慢できなくなり俺は立ち上がった。
メイドは下がらせていたので、気配を消すようにしてクローゼットに入った。セレスティンの部屋に繋がる扉の脇にはクローゼットを設けてある。壁一枚隔ててセレスティンの寝室があるのでは、防犯などの面で宜しくないと思ったからだ。だが、本来とは違った意味で俺はクローゼットに身を潜めることになってしまった。クローゼットとは言うものの、貴族の普段着ない服をしまう場所である。女性のドレスほどでは無いが、公爵家嫡男としての俺の礼服はなかなかの数がある。そんな服がしまわれているクローゼットの中を移動して、壁の向こうにあるセレスティンの寝台のそばあたりに立った。
通信の魔道具よりも鮮明に聞こえてくるセレスティンの声。だがしかし、何一つ聞き取れない。そして、同じようにエトワール令嬢が話している声は聞こえるのに、まるでノイズがかかっているかのように何も聞き取れなかった。
これはつまり、通信の魔道具が故障をしているわけではなく、本当にセレスティンが発している言語が俺の知らないものなのだと理解せざるを得なかった。軽く絶望にも似た気分を味わっていると、不意に聞き取れる言葉がやってきた。
「シャロン様のおっぱい」
その声はエトワール令嬢が発したもので、その前にもセレスティンの声で「おっぱい」なる言葉が聞こえていた気がする。一体なんの話をしておるのかと耳をそばだてれば、あろうことかセレスティンがシャロン殿のおっぱいについて解説をし始めたのだ。まさかこのようなことを貴族の令嬢と話すとは思っていなかったため、俺は激しく動揺した。
確かに、いずれはセレスティンに俺の子を孕んでもらうつもりではいた訳だから、子育てについて女性と話し合うのはダメでは無い。だが、あまりにも具体的すぎる解説に俺は唾を飲み込んだ。まだ、見た事は無いが、セレスティンの胸も平で今語っているような形状をしているのだろう。してはいけないと思いつつも、思わず想像してしまう。
そうして再び二人の会話が不鮮明になり、ノイズがかかっているかのように聞き取れなくなった。これは一体なんなのだろうか?だがしかし、エトワール令嬢はセレスティンを説得してくれているような気がする。不鮮明ながらも「幸せ」という言葉がきこえてくるのだ。
そうしているうちに、またもやエトワール令嬢が「おっぱい」なる発言を……いや、どうやら発音が少々違うようだ。「雄っぱい」?確かに今、俺の雄っぱいが柔らかいとか言った。な?エトワール令嬢はセレスティンを力強く説得してくれているようだ。そうしてまた不鮮明な会話が始まった。何を話しているのかハッキリとは分からないが、どうやらセレスティンはエトワール令嬢に言いくるめられてしまったようだ。
俺は静かにクローゼットから出た。そうして何食わぬ顔でソファーに腰かけた。既に冷めてしまった紅茶を魔法で適温に戻す。ゆっくりとカップを口に運んでいると、扉が開きエトワール令嬢が出てきた。俺は紅茶を一口飲んでから、カップを置き、そうしてエトワール令嬢を迎えた。
「わざわざセレスティンを見舞ってくれてありがとう」
「いえ、大切なお友だちですもの、心配でした」
「いや、心から礼を言わせて頂きたい(セレスティンを説得してくれて)ありがとうエトワール令嬢」
「いえ、セレスティンが元気そうで良かったです。学園で待ってますわ」
そう言ってエトワール令嬢はメイドに案内されて玄関ホールへと向かう。俺は客人を見送るためにという体でその後をゆっくりと歩いた。
「ジークフリート様、私アリスはセレスティン様が幸せになることを祈っておりますわ」
「ありがとう。約束しますよ」
俺がそう言って馬車から離れると、御者が扉を閉めそうして走り去って行った。顔を上げ二階の窓を見てみるが、セレスティンの部屋の窓が開いた様子もなければ、誰かが窓辺に立っている様子もない。おそらくメイドのマリがセレスティンをベッドから出してくれないのだろう。今夜もセレスティンは一緒に食堂で食べることはできないだろう。マリの優秀すぎる仕事ぶりは賞賛に値する。その日の夕飯に出された、セレスティンと同じものだという肉を包丁で叩いたというソテーは大変食べやすかった。
そうして、執務を終えゆっくりと風呂に入り俺は何気なく自分の体に触れてみた。温かな湯に入っているためか、肌はしっとりとしていて弾力があった。そして、少し力を入れてみれば、指先にしっかりとした感触がくる。
「ん?んんんん?これは……」
自分の体をあちこち揉むように触ってみれば、たしかにエトワール令嬢の言う通り柔らかかった。そうして力を入れれば固くなる。訓練後、よく同僚と風呂場で筋肉自慢をしていた時を思い出した。当然のように互いの肌に触れ合ったりもしたものだ。
「ふむ……セレスティンの体は筋肉も少なければ肉もほとんど付いていなかったな」
俺はしばし湯の中で考えると、一つの案が閃いた。現ハスヴェル公爵である母がしたことだ、嫡男である俺がしたところで誰も咎めないだろう。セレスティンには申し訳ないが、こういったことは早い方がいい。せっかくエトワール令嬢がいい布石を敷いてくれたのだ。
俺はその善意に乗ることを決めた。
天蓋が閉められていたので少しまくって中の様子を見れば、セレスティンが布団にすっぽりと埋まるような体勢で眠っていた。時折眉間にシワがより、聞き取れない言葉を呟いている。起こしてはいけないと思いつつも、そっと前髪をかきあげて額に唇を落とした。
「ゆっくり休ませてくれ」
俺はマリにそう告げると部屋を後にした。あの様子では起きたところで食事などとれそうにもない。念の為明日は学園を休む旨を伝えてある。今夜も明日の朝も一人で食事をとることになるが、致し方がないことだ。
だが、よもやセレスティンがそのまま昼過ぎても起きていなかったとは思わなかった。学園でいつもの通りにリヒト様の護衛をしていると、同じクラスのエトワール令嬢がセレスティンのお見舞いをしたいと申し出てきたのだ。セレスティンが自分に向かってなにか叫んだことが気になるらしい。断るのもおかしな話なので受け入れた。そうして、リヒト様からお見舞いの品を受け取ると、いつもより早く帰宅したのだ。だが、出迎えてくれた執事のカインが言うには、セレスティンは目覚めていないらしく、それでも構わないと言うからエトワール令嬢を通したという。
エトワール令嬢のことをリヒト様が気に入っていることは、カインには執務中に何度か話はしてあった。だから下位貴族の令嬢とは言えど、追い返さずに通したカインの判断は正しかった。なぜなら、俺は目が覚めたセレスティンとエトワール令嬢が俺に聞き取れない言語で会話をするのを聞いてしまったからだ。
「■■■■■■■おはよう」
不鮮明な言葉の後に俺にも聞き取れる日常の挨拶が聞こえた。だが、今は夕刻だ。朝の挨拶をするのはおかしな事だ。寝ぼけているセレスティンは、部屋に入る夕方の光を朝日と間違えているのかもしれない。そう思ったのだが、その後に聞こえてきたエトワール令嬢の言葉も不鮮明すぎて何を話しているのかまるで聞き取れなかった。
俺は自分の耳につけた通信の魔道具の音量を調節した。だが、二人が何を話しているのかまるで聞き取れない。何食わぬ顔でソファーに腰かけていたが、さすがに我慢できなくなり俺は立ち上がった。
メイドは下がらせていたので、気配を消すようにしてクローゼットに入った。セレスティンの部屋に繋がる扉の脇にはクローゼットを設けてある。壁一枚隔ててセレスティンの寝室があるのでは、防犯などの面で宜しくないと思ったからだ。だが、本来とは違った意味で俺はクローゼットに身を潜めることになってしまった。クローゼットとは言うものの、貴族の普段着ない服をしまう場所である。女性のドレスほどでは無いが、公爵家嫡男としての俺の礼服はなかなかの数がある。そんな服がしまわれているクローゼットの中を移動して、壁の向こうにあるセレスティンの寝台のそばあたりに立った。
通信の魔道具よりも鮮明に聞こえてくるセレスティンの声。だがしかし、何一つ聞き取れない。そして、同じようにエトワール令嬢が話している声は聞こえるのに、まるでノイズがかかっているかのように何も聞き取れなかった。
これはつまり、通信の魔道具が故障をしているわけではなく、本当にセレスティンが発している言語が俺の知らないものなのだと理解せざるを得なかった。軽く絶望にも似た気分を味わっていると、不意に聞き取れる言葉がやってきた。
「シャロン様のおっぱい」
その声はエトワール令嬢が発したもので、その前にもセレスティンの声で「おっぱい」なる言葉が聞こえていた気がする。一体なんの話をしておるのかと耳をそばだてれば、あろうことかセレスティンがシャロン殿のおっぱいについて解説をし始めたのだ。まさかこのようなことを貴族の令嬢と話すとは思っていなかったため、俺は激しく動揺した。
確かに、いずれはセレスティンに俺の子を孕んでもらうつもりではいた訳だから、子育てについて女性と話し合うのはダメでは無い。だが、あまりにも具体的すぎる解説に俺は唾を飲み込んだ。まだ、見た事は無いが、セレスティンの胸も平で今語っているような形状をしているのだろう。してはいけないと思いつつも、思わず想像してしまう。
そうして再び二人の会話が不鮮明になり、ノイズがかかっているかのように聞き取れなくなった。これは一体なんなのだろうか?だがしかし、エトワール令嬢はセレスティンを説得してくれているような気がする。不鮮明ながらも「幸せ」という言葉がきこえてくるのだ。
そうしているうちに、またもやエトワール令嬢が「おっぱい」なる発言を……いや、どうやら発音が少々違うようだ。「雄っぱい」?確かに今、俺の雄っぱいが柔らかいとか言った。な?エトワール令嬢はセレスティンを力強く説得してくれているようだ。そうしてまた不鮮明な会話が始まった。何を話しているのかハッキリとは分からないが、どうやらセレスティンはエトワール令嬢に言いくるめられてしまったようだ。
俺は静かにクローゼットから出た。そうして何食わぬ顔でソファーに腰かけた。既に冷めてしまった紅茶を魔法で適温に戻す。ゆっくりとカップを口に運んでいると、扉が開きエトワール令嬢が出てきた。俺は紅茶を一口飲んでから、カップを置き、そうしてエトワール令嬢を迎えた。
「わざわざセレスティンを見舞ってくれてありがとう」
「いえ、大切なお友だちですもの、心配でした」
「いや、心から礼を言わせて頂きたい(セレスティンを説得してくれて)ありがとうエトワール令嬢」
「いえ、セレスティンが元気そうで良かったです。学園で待ってますわ」
そう言ってエトワール令嬢はメイドに案内されて玄関ホールへと向かう。俺は客人を見送るためにという体でその後をゆっくりと歩いた。
「ジークフリート様、私アリスはセレスティン様が幸せになることを祈っておりますわ」
「ありがとう。約束しますよ」
俺がそう言って馬車から離れると、御者が扉を閉めそうして走り去って行った。顔を上げ二階の窓を見てみるが、セレスティンの部屋の窓が開いた様子もなければ、誰かが窓辺に立っている様子もない。おそらくメイドのマリがセレスティンをベッドから出してくれないのだろう。今夜もセレスティンは一緒に食堂で食べることはできないだろう。マリの優秀すぎる仕事ぶりは賞賛に値する。その日の夕飯に出された、セレスティンと同じものだという肉を包丁で叩いたというソテーは大変食べやすかった。
そうして、執務を終えゆっくりと風呂に入り俺は何気なく自分の体に触れてみた。温かな湯に入っているためか、肌はしっとりとしていて弾力があった。そして、少し力を入れてみれば、指先にしっかりとした感触がくる。
「ん?んんんん?これは……」
自分の体をあちこち揉むように触ってみれば、たしかにエトワール令嬢の言う通り柔らかかった。そうして力を入れれば固くなる。訓練後、よく同僚と風呂場で筋肉自慢をしていた時を思い出した。当然のように互いの肌に触れ合ったりもしたものだ。
「ふむ……セレスティンの体は筋肉も少なければ肉もほとんど付いていなかったな」
俺はしばし湯の中で考えると、一つの案が閃いた。現ハスヴェル公爵である母がしたことだ、嫡男である俺がしたところで誰も咎めないだろう。セレスティンには申し訳ないが、こういったことは早い方がいい。せっかくエトワール令嬢がいい布石を敷いてくれたのだ。
俺はその善意に乗ることを決めた。
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