上 下
1 / 40

第1話 キター異世界転生

しおりを挟む
ぽやぽやと、目の前が明るい。

 よくわからないけど、俺は寝ているようだ。背中には温かく柔らかい感触がある。

 そして、寒くもなく暑くもなく、春の陽だまりにいるような心地の良さだ。だがしかし、視界があまりよろしくない。全体的に明るいのだが、何もない。いや、見えないと言うべきなのか?何にしても、寝ているのなら天井なり空なり見えてもいいはずだ。

 電気を点けっぱなしにして寝てしまったのだろうか?いや、だとすればシーリングライトの丸い形ぐらい視界に入るはずだ。それか見慣れた天井の模様。年季のはいった木造建築の木目調の天井だ。



「ああぁ、ううぅ(見えない)」



 ってえええぇぇ!!!!

 今の何?俺の口から出た?な、なんだ?子猫の鳴き声のような、柔らかくもか細い声は…………は?まて、まてよ?

 俺はそぉぉぉっと右手をあげてみた。

 若干ぼやけた視界の端に白い袖とちっちゃなコブシが見えた。…………あ、これが俺の手?なのか、な?ってえぇぇぇぇぇ?な、何が起きた?



「ふえぇぇぇぇぇ(ナンジャコリャぁあ)」



 俺は思わず声を上げた。そりゃ、あげるさ。あげるだろう。あげなかったら変だ。俺、ちっちゃくなってる?ちっちゃい……ちっちゃい、よな?



「ひゃぁぁぁぁぁぁぁん(どうなってんのぉ)」



 先ほどより二割り増しな声量を出してみた。もちろん当社比です。



「セレスティン起きたの?」



 突然声がした。

 柔らかく優しそうな声だ。だが、セレスティンだと?なんだそれは?無駄にカッコいい名前だな。



「オムツじゃなさそうだから、おっぱいかな?」



 そう言って俺を抱き上げ、お尻のあたりを手でさすった。てか、おっぱいですと?俺は俺を抱き上げる人物の顔をじっとみた。なかなか視界が定まらない。だがしかし、ここで頑張らなくてどうするんだ俺。見ろ、見るんだ。目を懲らせ、おっぱいだぞ、おっぱい。赤ん坊じゃなくて、大人の男の意識を持ったままおっぱいが吸えるだなんて、役得ではないか。声の感じからして、きっといい人だ、顔を拝ませてもらわねば。



「ああぁっぁぁっっん(めちゃ美形)」



 す、すげいぞ。さらっさらな金髪に、すんげい濃い青の瞳で、色白のお肌。整った顔立ちはスーパーモデルかセレブ女優かってほどに美しかった。

 え?まじ?まじで俺、この人のおっぱい?おっぱい吸っちゃていんですかぁぁ?



「奥様こちらを」



 メイドさんかな?ぼんやりとした視界に紺色か黒っぽい服を着た人がやってきて、推定俺の母親の肩に布をかけてきた。うん、目隠しか。奥様ってことは、金持ちなんだな。すげえ、金持ちで美人の母親かよ。くううう、期待しちまうぜ。



(………………え?)



 前をくつろげて、俺を横抱きにして、そうして俺の視界に濃いめのピンクの塊が……ん?んんんん?白い肌があって、おっぱいが、おっぱいがおっぱいが…………ない。

 

 ななななななな、ななななななななんですとぉぉぉぉぉぉぉ!



 白く滑らかな肌のうえに、濃いめにピンクの小粒ちゃんが鎮座しているではないか。うん?なぜだ?なぜなんだ?おっぱいとは?雄っぱいなのか?いや、まて、まって!



「ふぁぁぁぁんん(待てってば」



 うおおおおお、問答無用で雄っぱいがぁぁぁ!ぜってぇおっぱいじゃねえだろ。これは、いわゆるペチャパイではない。どんなにちっちゃなおっぱいであったとしても、妊娠して授乳のためにそれなりに膨らむはずだ。そう、それが女体の神秘である。

 だからつまり、これはおっぱいではない。雄っぱい……だよな。って思ってんのに、口を開いたばっかりに俺の口の中には濃いめのピンクの塊が……



「んぐっ」



 うをををを、し、神秘。

 ほぼほぼ本能で吸い付いたのに、出た。なにがって、母乳が、だよ。母乳が出てきたよ。んで、俺飲んじゃってるじゃん。飲んでる。ごくごく飲んでるよ。うまい、めちゃんこうまい。だめだ、とまらねえ。

 で、腹一杯まで母乳を飲んだ俺は再び眠りについたのであった。



 次にめをさましても状況は変わらなかった。

 いや、変わってた。

 父親がいた。

 父親の名前はアラン。母親?の名前はシャロンだった。二人とも一人称が俺で、立派な夫夫だった。俺は第一子のようで、とにかく大切に育てられた。俺が一人で歩けるようになり、なんとなくおしゃべりができるようになった頃、俺はこの家のことを知ることとなった。

 俺は母親?似で、髪の毛が若干カールしていて、宗教画にでてくる天使みたいな容姿をしていた。ある日鏡を見て自分で自分に驚いちまったからな。うわ、やべぇって、なったんだけど、ついてんのよ股間に逸物が。ちっちゃくて可愛らしいが、ちゃんとした男の子のシンボルだぜ。うん、もちろん、母親?にもついていたね。一緒に風呂に入った時に見たのよ、股間を、さ。

 あんまり使い込まれてないな。って感じのする薄い色。色白だからさ、若干ピンク?カリもほぼないような形状しててさ、俺は思わずガン見してしまったわけだ。そりゃねぇ?俺前世男じゃん?記憶にある限り童貞ではなかったわけよ。で、それなりに使い込んだ、まあ経験値のあるものの形状や色なんかは覚えているじゃん?

 それを考えるとさぁ、母親?のシャロンのは、まあ、童貞……かな?たぶん、たぶんだけどな、父親でのアランが可愛がってるとはおもうよ。

 うん。

 なんでかって?そりゃ、ねぇ?まだ俺がちびっ子もちびっ子で、赤ちゃんなわけだから、夫夫の寝室のね、中にベビーベッドがある訳よ。ほら、夜中に授乳したりするじゃん?だからさぁ、まぁ、がっつり聞こえたんだな。うん。けっして、聞きたかったわけじゃない。だってほら、同じ部屋で寝かされてたのは俺の希望じゃないじゃん!

 

 ま。そんなこんなで、二歳の誕生日に正式に子供部屋を与えられたってわけだ。ほんと、それまで辛かった。そりゃね、前世の記憶のある俺だからさ、興味が無いわけじゃないよ?ただ、ただね。やっぱり喘ぎ声が、男って……ねぇ?

 

 そんなわけでようやく夫夫の寝室から俺は離れることが出来たわけだ。ちょっとしたワンルームばりの広さの子供部屋な。なぜか応接セットがあって、やたらとでかいベットがあるんだわ。どんなに寝相が悪くてもおちないね、きっと。まあ、これでようやく両親の夜の営みの声や、会話会話の途中で繰り出すキス(ディープなやつ)から逃れられた。ってわけだ。

 とりあえずは一安心した俺だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令息は、周囲に溺愛される

白鳩 唯斗
BL
卒業パーティーで皇太子ユーリスの婚約者である公爵令息レインは、皇太子の浮気相手を虐めたとして婚約破棄をされてしまう。平然とした様子で婚約破棄を受け入れるも、ユーリスを好きだったレインは涙を流した。 主人公が老若男女問わず好かれるお話を目標にします。貴族間の難しいお話は正直書きたくないです。主人公は優しすぎて多分復讐とか出来ません。 ※作者の精神が終了したので主人公が救われる話が書きたいだけです。適当に気分で書きます。いつ更新停止してもおかしくありません。お気に入りあまりしないで欲しいですm(_ _)m 減るとダメージ凄いので······。

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた。

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエルがなんだかんだあって、兄達や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑でハチャメチャな毎日に奮闘するノエル・クーレルの物語です。 若干のR表現の際には※をつけさせて頂きます。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、改稿が終わり次第、完結までの展開を書き始める可能性があります。長い目で見ていただけると幸いです。 2024/11/12 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移要素はありません。

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

処理中です...