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準備

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千年かけて愛しの相手をみつけたはいいが、リシュデリュアルは困っていた。折角孕んでもらった卵が恐ろしいほどの大食らいで、母体?となったフィートルの魔力を喰らい尽くす勢いなのだ。
 城に入ってあれこれ聞いてみても、そこまでの大食らいは聞いたことがない。とのことで、とにかく死なせないように魔力供給すればいい。と笑われた。
 一応、天帝にまなの実を一つ差し上げたけれど、卵のためには親の魔力が最高の栄養だか頑張れ。との励ましを頂いた。
 で、ただひたすら微睡むようにしているフィートルのそばに行くと、すかさず唇を重ねることになる。
「こまめな補給もいいと思う」
 離れる瞬間に目を開けて、じっと見つめられると、随分年上のはずのリシュデリュアルの方が赤くなった。
「辛い?」
 なんと声をかけていいのかわからず、思わず口から出たのはそれだった。
「辛くはない。………体が重い、な」
 魔力が取られるからだろう、動きが緩慢で黒い目は眠たそうにしている。
「しても、いい?」
 手のひらをあわせ、指を絡めてしっかりと繋ぐ。
「一日三回まで」
 唇を合わせようとしたらそう言われた。ムードはないらしい。あくまでも、卵のための義務として行為と改めて言われる。
「…っん」
 深く舌を差し込んで、付け根の辺りからゆっくりと舐めとるように動かす。下にいる側が、ゆっくりと受け入れるように軽く唇を開けると、そこから唾液が、流れ込んで行くのが分かる。舌と唇を伝わるそれは自身の体温をそのまま相手に伝えられているのだろうか?
「ふっ…」
 息継ぎのような声が聞こえて、もう一度よく塞いだ。目を閉じていても目眩のような感覚がくる。飲み込みきれない唾液が顎を伝って垂れるのを感じながらも、唇を離すことが出来なかった。
 欲しい。
 その感情が先にたち、強請るように手がお互いの体にまわっていく。元々大して服など着ていなかったので、直ぐに肌が触れ合った。下腹の魔力が集まる場所が温かくなる。
「たくさん、注いであげる」
「三回で十分だ」
「もっと欲しがってよ」
「魔力過多になると気分が悪い」
「卵が吸収すれば、早く産まれるよ」
 そう言って下腹の辺りを撫でると、弱い反応が帰ってくる。
「いっぱい貰って欲しいな」
 撫でながらそこに唇を落とすと、腰から逃げようとするので思わず両手で腰を捕まえる。
「逃げないで」
 そのまま抱きしめて、耳元で囁くと首筋が少し赤くなった。耳朶を軽く噛んでから舐める。輪郭をなぞってから穴にゆっくりと差し込むと濡れた音をわざと大きくたててみた。
「あ、ぁん」
 顔を反らすから、首の細さと筋が目につく。耳からゆっくりとその筋を舐めて鎖骨までたどり着くと、軽く歯を立ててみた。
「っ…」
 吐息のような反応をして、顔がこちらを向いてきたので、改めて唇を重ねた。腰にまわしていた手をゆっくりと上へ移動して、背中の線にそって動かし脇腹へ移動する。撫でられるのも好きなようで身体が赤みを帯びていくのを少し眺めた。
「気持ちいい?」
 返事は無いものの、代わりに嫌がりもせず受け入れる態度を取られれば、 脇腹を撫でていた手を体の正面に移動させて色の違う皮膚を軽く摘む。
「あっ、やぁ…」
 軽く背を反らせて片足の膝があがったのが見えた。反応の好いところを重点的に攻めてから、後ろに回して太ももから上へと撫で回す。
 足指が丸まってシーツにシワを寄せていく。
「力抜いて」
 唇を寄せて囁くけれど、聞こえていないのかシーツのシワが増えていく。
「もう」
 立ち上がった膝を抱えるようにして腰が浮くようにすると、慌てたように逆の腕を掴んできた。
「深い方がいいよね?」
 上から声をかければ、恥ずかしそうに目線を下げるので、それを了承として角度を変えてより深い場所を探し出す。
 少し動かせばその度に嬌声が上がる。
 その声に刺激され、狙い通りに奥に熱を放つと、すぐに吸収されていくのがよく分かった。吸収するのに胎内が動くのを感じると、それに刺激されて自身が取り戻されていく。
「っん、三回、だからな……」
 浅い呼吸を繰り返しながらも下から注文をつけてくる。その態度も可愛いのだけれど、冷静に数えるつもりなのかと苦笑いするしかなかった。
「もう、意地悪だなぁ」
 そのまま二回目に突入すると、腕の中でまた体温が上がる気配がした。
「何回でも、しよ?」
「っ、三回、だ」
 回数にやたらとこだわられると、こちらも意地になりそうで耳の穴にまた、舌をいれると腰の動きにあわせてみる。水音が頭に響くのか、先程とは声質が変わってきた。空いている手で胸の皮膚の薄いところを軽く引っ掻くとさらに一弾高い嬌声が上がった。
「数えられないぐらいにしたらいいよね?」
「な、にいって、ん…」
 最後まで言わせないように抽挿の速度をあげると、背中を反らして甘い声をあげてきた。
「冷静に三回数えられるかな?」
 覚えた弱い所を執拗に攻めてみると、痙攣ににた反応がかえってきた。
「ん、気持ちいいね」
 こめかみに唇を落として、深くていい場所を探し出していくとお互いが高まっていくのが分かる。
「交わってる」
 深い場所に到達しながら唇を重ねて循環させると、全身に快楽が回ってきた。欲しがるままに与えれば満足できる。それがお互いのためにもなる。





「う、っく……うん」
 明け方、フィートルが苦しげな声を出していた。
 やたらと体勢を変えるが、なかなかひとつところに定まらない。枕に顔を押し付けて、息を吐き出すように声を出している。
「腰をさする?」
 リシュデリュアルが問いかけるが、フィートルは聞こえていないようで額を擦り付けるような動きをした後、ゆっくりと長い呼吸をひとつした。
 大量の魔力がからめとられる感覚がして、ズルっとしたヌメリにも似た感触が脳内を刺激した。
 実際に身体のどこに、その刺激があったのかは分からない。けれど、確実に自分の胎内から何かが出てきた。
「んぁ、ん」
 得体の知れない感覚に、よく分からない声が出た。
「お疲れ様」
 腰から背中をさするようにリシュデリュアルの手が動いていた。
「卵、ちゃんと産めたね」
 耳元に唇を落とされて、その音に反応して顔を上げた。示された所に、確かに卵があった。
「ありがとう」
 今度は唇が重なった。そこから魔力が流れてくる。産み落とすのに大量の魔力が消費されたのは確かなので、有難く貪るように飲み干した。
「今度は孵化するまで魔力を注ぐんだよ」
 リシュデリュアルはそう言って、最初の魔力を、卵に与えた。
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