【完結】白雪姫ってそんなんだけど、俺は絶対お断りだ

久乃り

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リンゴは投げられた

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俺はリビングの長椅子の上で目が覚めた。
 夜になり、一通り楽しんだ小人たちが帰宅すると、俺が床に倒れていたそうだ。
 床にはカラフルな飴が散らばっていたらしい。

 うん、買ったからな。

 でも、もう食べられない。

 あの継母が作ったものだ。毒入りかもしれない。

「継母が来た」

 俺がそう告げると、小人たちは悲鳴をあげた。
 なかなかに、かん高いため耳がキーンとした。

「飾り紐、やっぱそうなの?」
「うん、どうやっても逃げられないらしい」

 俺が静かに告げると、小人たちは悲痛な面持ちになった。強制力が働いている。なんて、言われても理解はできないだろう。

 俺も出来ない。

「この祭りの間に、今度はリンゴを持ってくるな」
「リンゴ?」
「リンゴ飴かもしれない」

 とにかく、リンゴだ。

 ほんとうは毒りんごなんだけど、その毒りんごも喉に支えていただけなんだよな、たしか。
 すっごい、ご都合主義だけど。

「じゃあ、僕たちが常に一緒に居ればいいよね?」
「交代で一緒にいるよ」

 小人たちはなかなかいい、提案をしてくれたけど、どうなんだろう?
 強制力にかてるのだろうか?

 とりあえず、もう、祭りには出かけないことにした。
 うっかり街中でバレたらまた殺しにくるだろう。
 実際、おとぎ話の継母は、鏡に問いかけて白雪姫が生きていることを知ったし。

 俺は、小人たちに、屋台の食べ物を買ってきてもらい、交代で誰かが必ず一緒にいてくれるようにしてもらった。

 とにかく、この祭りをやり過ごし、俺はさらに遠くに逃げる。

 そんなふうに過ごしていた祭りの最終日。
 祭りのクライマックスらしく、パレードが始まった。
 しかも、このパレード、街中を組まなく回るらしい。
 つまり、この家の前も通るとのことで、みんな家の窓を開けて眺めるそうだ。
 ならば、俺もそうしたい。

「じゃあ、みんなで見ようよ。この家まえも通るし」

 小人たちが、そう提案をしてくれて、最終日はみんなで家にいた。窓を開けていても、みんながいるから大丈夫だ。そう確信して。

 パレードはなかなかのものだった。
 音楽を奏で、ダンスを踊る人たちがいて、神輿に乗った可愛らしい巫女さんがカゴから何かを配っている。

「あれ、何を配っているのかな?」
「例年だとお菓子だよ」
 小人が、教えてくれた。

 お菓子か、お祭りっぽいな。なんて思っていたら、パレードがどんどん家の前の通りに入ってきた。
 賑やかな音楽が楽しげだ。

「あれ?なんか、変」
 小人の1人が突然叫んだ。

「あれ」
 指さす先はパレードの、メインである巫女さんだ。

「なにが?」
 俺は指さす先を見て、驚愕した。

 巫女がカゴから出して配っているのはお菓子ではなかった。

「なんでりんご?」
 俺が口にしたとき、確かに巫女と、目が合った気がする。

 化粧を施した巫女の赤い唇が、三日月形に見えた。
 俺は、巫女の手に釘付けになる。
 その手に持ったリンゴが、俺目掛けて投げられるのを、俺はしっかりと見た。

「嘘だろっ!」

 巫女は完璧なコントロールをもって、リンゴを俺にぶち当てた。

 あれ、絶対に、継母だ。

 俺は薄れる意識の中で確信した。
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