17 / 66
17.それは嘘か運命か
しおりを挟む
「この車じゃマッサージができないな」
後部座席で義隆は真剣に悩んだ。この車は義隆の通学用の車である。東京都下にある私立の高校に通うために用意された車だ。中等部のころから乗っているからそろそろ六年ほど乗っていることになる。
「義隆様。車内でマッサージは無理ですよ。道路交通法がありますので」
田中が控えめに言ってきた。
「そのくらい知っている。けれど、あの医者がいうことが本当なら毎日マッサージをする必要があるんだ」
義隆は難しい顔をして何やら考え込んだ。どうにかして何とかしてしまいたいのだ。義隆が貴文をマッサージしたい理由は簡単だ。貴文が入院した際に担当した医者がそんなことを言ってきたからである。
そう、医者が貴文のレントゲン写真をみながら解説をしてきたから、義隆はどうしても実行しなくてはならなくなってしまったのだ。
――――――――――――
「ベータなのになぜ子宮があるんだ」
やけにあっさりと説明をしてきた医師に少々イラつきながら義隆は聞いた。
「だから、それは血液検査の結果でしかないんですよ」
そういいながらモニターの半分に何かの数値が並んだ検査結果を映してきた。
「これは血液検査の結果です。まあ、コレステロールの値とかは今回関係ないのでとばしますけど、重要なのはここです」
マウスのカーソルで示されたのは第二次性の判定に使われる項目だった。
「このオメガ性を表す値、0じゃないでしょ?」
確かにそこの値は0ではなかったが、オメガと判定できるほどの数値でもなかった。10以下ならないものと同じ扱いになる。
「彼はベータの両親で、姉もベータ。親族にもベータしかいない典型的なベータ家系です。でも、仮にもしこれが義隆様、あなたのような名家の生まれの子どもの血液検査だとしたら、徹底的に調べますよね?」
「……そうだな」
義隆は返事をしながら内心深いため息をついた。そう、すべては生まれのせいなのだ。名家やその流れをくむ家に生まれたのなら、少しでもオメガの可能性があれば徹底的に調べるところだ。世界的な人口の比率から見てもオメガは圧倒的に少ない。それは人類が大昔にオメガを迫害しまっくたことに起因している。だが今では優秀なアルファを生み出せる希少な性として世界各国で保護されている。ベータからでもアルファは生まれるが、オメガから生まれるアルファと比べるとその才能は天と地ほどの違いがある。より優秀なアルファが国を動かさないと、国が亡ぶ事態を招きかねないとして、どこの国も政治家は軒並みアルファぞろいだ。企業も、経営者はほとんどがアルファだ。まれにベータの経営者もいる。つまり、そんなベータより劣ってしまうアルファを量産するよりは、優秀なアルファを生み出したいと、アルファがオメガを欲しているのが現状なのだ。
「名家ほどオメガを欲しますよね?だから少しでも可能性があれば徹底的に検査をして、可能性があればオメガとして開花するべく治療を施しますよね?でもね、ベータからしたら自分の子どももベータであって欲しいんですよ。オメガなんて厄介な性、冗談じゃなくいらないんです。だからオメガのフェロモン値が少しぐらいあっても再検査なんかしないんです」
そう言って今度は後頭部あたりのレントゲンを見せてきた。
「ここが項のあたりです。番になるとき嚙みますよね?」
「ああ、そうだな」
答えながらも義隆はそこに映し出されたおかしな靄に首を傾げた。
「ここ、黒くなってますでしょ。これが原因なんです。オメガの項のあたりからフェロモンが香りますよね?彼ね、そこの器官が詰まってるんですよ」
後部座席で義隆は真剣に悩んだ。この車は義隆の通学用の車である。東京都下にある私立の高校に通うために用意された車だ。中等部のころから乗っているからそろそろ六年ほど乗っていることになる。
「義隆様。車内でマッサージは無理ですよ。道路交通法がありますので」
田中が控えめに言ってきた。
「そのくらい知っている。けれど、あの医者がいうことが本当なら毎日マッサージをする必要があるんだ」
義隆は難しい顔をして何やら考え込んだ。どうにかして何とかしてしまいたいのだ。義隆が貴文をマッサージしたい理由は簡単だ。貴文が入院した際に担当した医者がそんなことを言ってきたからである。
そう、医者が貴文のレントゲン写真をみながら解説をしてきたから、義隆はどうしても実行しなくてはならなくなってしまったのだ。
――――――――――――
「ベータなのになぜ子宮があるんだ」
やけにあっさりと説明をしてきた医師に少々イラつきながら義隆は聞いた。
「だから、それは血液検査の結果でしかないんですよ」
そういいながらモニターの半分に何かの数値が並んだ検査結果を映してきた。
「これは血液検査の結果です。まあ、コレステロールの値とかは今回関係ないのでとばしますけど、重要なのはここです」
マウスのカーソルで示されたのは第二次性の判定に使われる項目だった。
「このオメガ性を表す値、0じゃないでしょ?」
確かにそこの値は0ではなかったが、オメガと判定できるほどの数値でもなかった。10以下ならないものと同じ扱いになる。
「彼はベータの両親で、姉もベータ。親族にもベータしかいない典型的なベータ家系です。でも、仮にもしこれが義隆様、あなたのような名家の生まれの子どもの血液検査だとしたら、徹底的に調べますよね?」
「……そうだな」
義隆は返事をしながら内心深いため息をついた。そう、すべては生まれのせいなのだ。名家やその流れをくむ家に生まれたのなら、少しでもオメガの可能性があれば徹底的に調べるところだ。世界的な人口の比率から見てもオメガは圧倒的に少ない。それは人類が大昔にオメガを迫害しまっくたことに起因している。だが今では優秀なアルファを生み出せる希少な性として世界各国で保護されている。ベータからでもアルファは生まれるが、オメガから生まれるアルファと比べるとその才能は天と地ほどの違いがある。より優秀なアルファが国を動かさないと、国が亡ぶ事態を招きかねないとして、どこの国も政治家は軒並みアルファぞろいだ。企業も、経営者はほとんどがアルファだ。まれにベータの経営者もいる。つまり、そんなベータより劣ってしまうアルファを量産するよりは、優秀なアルファを生み出したいと、アルファがオメガを欲しているのが現状なのだ。
「名家ほどオメガを欲しますよね?だから少しでも可能性があれば徹底的に検査をして、可能性があればオメガとして開花するべく治療を施しますよね?でもね、ベータからしたら自分の子どももベータであって欲しいんですよ。オメガなんて厄介な性、冗談じゃなくいらないんです。だからオメガのフェロモン値が少しぐらいあっても再検査なんかしないんです」
そう言って今度は後頭部あたりのレントゲンを見せてきた。
「ここが項のあたりです。番になるとき嚙みますよね?」
「ああ、そうだな」
答えながらも義隆はそこに映し出されたおかしな靄に首を傾げた。
「ここ、黒くなってますでしょ。これが原因なんです。オメガの項のあたりからフェロモンが香りますよね?彼ね、そこの器官が詰まってるんですよ」
44
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。


【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる