ツイノベ(ポスノベ)あらすじ置き場

久乃り

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召喚の

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ウケが攻めを初めて見たのは神殿だった。
召喚の儀でやってきた異世界からの神子
黒髪黒目、小柄な体なのに力溢れる不思議な存在だった。 
来ている服も不思議な形で、神殿から渡された服に不満を漏らしていた。

神子である攻めの世話をするのは神殿で暮らす孤児たち。受けもその一人。魔獣により家族を失った。
力溢れる攻めは気難しい性格をしていて、時折癇癪を起こす。孤児たちは攻めに脅え、世話係を嫌がるようになった。

受けも攻めに見つからないようにそっと食事をテーブルに置いたり、していたが、ある日神子の服の着方が分からないと攻めが癇癪を起こした。
くじで負けた受けが攻めの元に行く。小さくなって近づいたけれど、頭の上の三角の耳とモフモフのしっぽが直ぐに見つかった。

しっぽを掴まれ涙目になっていると、攻めがそのまま受けを持ち上げた。

「獣人だ。本当にいたんだ」

攻めはそのまま受けを抱きしめた。

「モフモフさいこー」

受けは攻めに気にいられたようだ。
それから攻めの世話は受けがすることになった。

「マジお前遠征に着いてこないわけ?」

孤児で子どもの受けは浄化のための遠征に着いては行けない。不満たらたらの攻めのために、受けはしっぽの毛を抜いてお守りを作った。小さい丸い毛玉だ。
攻めに渡せば笑われた。

「馬鹿なの?しっぽが情けないじゃん」

そんな悪態を疲れたけど受け取って貰えた。
攻めは浄化の旅を終え、元いた世界に帰って行った。

受けの世界は平和になった。

だがしかし、魔獣はそうそう消滅はしない。
不浄が溜まり、また、魔獣が増えてきた。

獣人は体が丈夫で長生きだ。
あれから50年だって、受けは神殿の騎士団長になっていた。
浄化の神子を、再び召喚するという。
警備のために立ち会った受け。
召喚されたのは、やはり黒髪黒目
今回は結構な、大人だった。

だが、獣人の受けはすぐにわかった。
召喚された神子は、大人になった攻めだ。
姿かたちが変わっても、匂いでわかる。
再会の喜びに受けのしっぽが左右に揺れる。

今度は騎士団長だから、浄化の旅に同行できる。
受け喜びでいっぱいだった。

攻めは受けに気づかないまま浄化の旅を終えた。
もうしばらくしたら元の世界に帰るという。
受けは思い切って攻めに告白した。

「これ、あの時返せなくてゴメン」

差し出したのは中学校の卒業証書だ。

「は?今更いらねーし」

攻めはそう言って受けの顔を見た。

「なんで、お前おっさんになってんだ?」

攻めの世界と受けの世界は時間の流れが違ったらしい。

「俺成人式の帰りだったんだよな」

そう言いながらポケットから取り出したのは受けが作った小さな毛玉だった。

「返さないけど?」

そう言われて固まる受け。でもしっぽはブンブンしてる。
攻めが口元を歪めているのを見て、受けは慌ててしっぽを止めた。

「コレな」

帰還する日、攻めから渡されたのは小さなお守り袋。

「俺の国で御守りったらコレだから」

ぶっきらぼうにそう言って、攻めは卒業証書を片手に帰ってしまった。
浄化されて綺麗になった世界で、受けは神殿の騎士として働いた。

そんなある日、足元が丸く光った。
神殿の神官たちもあわてたが、どうにもならず受けは光に飲み込まれた。

「召喚されるって、どうよ?」

回りには何も無い。ユラユラ揺れる床に怯えていると、攻めが笑った。

「海だよ。知らねーんだ。まじウケる」

攻めの手には神殿に保管されていた魔導書があった。

「解読するの大変だったんだぜ」

時間が欲しくて海洋魚の養殖の研究者になった攻め。
大学の研究所を使って魔導書を解読したらしい。

「そんな分けで、お前は俺専属の助手な」

ポンポンと頭を叩かれれば、しっぽが揺れる。

「ここなら人目がないからな」

攻めに言われて受けはようやく知った。攻めの世界に獣人は居ないのだ。
ダボダボの作業着に帽子をかぶれば何とかなる。

「肉あんましでなーけどな」

揺れる船の上で受けのしっぽが盛大に揺れた。
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