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箱入りオメガ
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受けは良家の箱入りオメガだった。
通学も車で送迎で、家族以外のアルファと顔を合わせたことなどない。
お爺様の勧めでお見合いをすることになった。
相手は美丈夫な年上のアルファだ。
緊張しながらも相手の顔をよく見れば、何ヶ月か前にテレビでキラビトアルファの特集に出ていた顔だった。
「テレビ、拝見しましたよ」
受けがそう言うと、攻めは驚いた顔をした。
トントン拍子に話が進み、結婚することになった。
受けの家は代々続く名家だから、ベンチャー企業を経営する若きアルファにとっては逆玉だ。
大勢の来賓客に祝われ、結婚式は盛大になわれた。
新居は受けのお爺様が用意した高級マンション
オメガに優しいセキュリティの充実した物件だ。
受けの荷物は運び込まれてるから、身一つでマンションに入った受け。
だがしかし、玄関を開けで部屋に入ると、リビングのソファーに見知らぬオメガが座っていた。
「どちら様でしょう?」
結婚式の招待客にもいなかった。
それに、どうして受けよりも先に部屋に入っているのだろう?
鍵は受けと攻めしか持っていないはずなのに、
「初めまして、俺は攻めのつがいです」
信じられない挨拶をされて、受けは倒れそうなほど驚いた。
だが、そんなことは矜恃が許さない。
背筋を伸ばしゆっくりと頭を下げて挨拶をした。
「初めまして、攻めの妻です」
婚姻届は受けの家の家令が出しているから、妻で間違いはずだ。
「お茶を入れますね」
よく分からないが、ここは受けの家、番と名乗るオメガは客になるからもてなさねばなるまい。
受けは育ちの良さから、そんな事を思ってキッチンへと向かった。
電気ケトルでお湯を沸かしつつ、真新しいカップを二つ並べた。
受けはソファーに座るオメガに聞いた。
「紅茶でよろしいですか?ノンカフェインでご用意しますから」
そう言われて眼をまん丸にして、驚くオメガ
やはり当たりのようだ。そう思いつつ、受けは慣れた手つきで紅茶をいれた。
「番さん、妊娠してるんですね」
帰宅した攻めに玄関先で受けは言い放った。
「自分勝手に良いとこ取りですか」
攻めに抱いていた憧れのような感情はもはや受けにはなかった。
「回りが勝手に話を進めていったんだ」
攻めの言い訳はどこか子どもじみていた。
受けの実家にバレないように、攻めの番と三人で奇妙な共同生活が始まった。
受けの中では悪いのは攻めだった。
いい年した大人が、断れなかった。なんて幼稚な言い訳をするのだ。
受けのお爺様は話せばわかる人なのだ。
本当のことを話せば、攻めの番に危害がおよぶと思い、受けは
「まだ怖くて」
なんて答えを濁す。
何とかなったと思ったけれど、アルファの兄たちは鋭かった。
受けと攻めの番が出かけたところを見つかってしまった。
「友だちなんだ」
つまらない嘘をついた。
受けに歳上の友だちが居ないことぐらいアルファの兄たちは知っている。
攻めの番は荷物をまとめて出産までシェルターに隠れる決意を受けに伝えてきた。
シェルターにはアルファは入ることは出来ない。国から守られるから安全だ。
「初めからこうすれば良かったよ」
攻めの番は笑いながら言ってきた。
ベンチャー企業の立ち上げ仲間の一人だったけど、深夜まで仕事をしていた時に発情してしまい、攻めにうなじを 噛まれてしまったらしい。他の仲間はベータだから、計画的だったのかもなんて、自虐的に攻めの番がいってきた。
捨てられないために番届けを出したのが精一杯だったらしい。
発情しててよく覚えてないけど、あいつらにマワサレテタかもね。なんて笑いながら言って、攻めの番はシェルターに入っていった。
帰宅した攻めが受けを怒鳴りつけてきた。
「俺の番をどこに隠した」
受けは冷めた目で攻めを見ながら答えた。
「シェルターで出産するからもう会わないで欲しいそうですよ」
攻めの番からの手紙を渡す。
手紙を読み終えた攻めがいきなり受けの頬を叩いた。
華奢な受けはそのまま床に倒れ込み、血が床に落ちた。
ウケが目覚めると、まっしろな部屋にいた。
オメガに優しいセキュリティのマンションは、受けの転倒を感知してレスキューが動いてしまったのだ。
受けを隠そうとする攻めを押しのけ、レスキューが受けを運び去ったらしい。
当然、受けの怪我はアルファの兄たちに知れた。
人生で初めて暴力を受けた受けは、声が出なくなっていた。
これでは攻めの番を守る事が出来ない。受けが困っているうちに、攻めの会社は大変なことになっていた。
当たり前だが、受けの実家が援助をやめたのだ。
オマケに攻めの番が産んだ子どもはベータだった。
オメガとやってみたい。と言うベータ達のために、攻めがフェロモンで誘発させて攻めの番を発情させたのだ。そ こをベータたちが代わる代わる乗っかって、最後に攻めが乗って項を噛んだ。
散々注がれたベータの誰かの子ども。シェルターのデータベースから直ぐに相手は判明した。
攻めの番はこの事をマスコミに売ったのだ。
援助が無くなったところに、マスコミからの攻撃を受け、攻めの会社はあっという間になくなってしまった。
もちろん攻めの有責で受けとの離婚が成立した。
慰謝料なんて払えるわけが無い攻めは、受けに土下座してきた。
受けは慰謝料請求なんていらないけれど、番になってしまった攻めの番が不憫だった。生まれた子どもは父親が特定出来たから、養育費を請求する。ベータではシェルターで暮らせないからだ。
攻めとベータたちは、受けのお爺様の子会社で働かせることにした。
慰謝料を支払わせるためと、監視のためだ。
受けはオメガのための衣料品をつくる会社を立ち上げた。そこにはかつての攻めの番も働いている。
「公私共に僕を支えてください」
もちろんプロポーズをしたのは受けである。
通学も車で送迎で、家族以外のアルファと顔を合わせたことなどない。
お爺様の勧めでお見合いをすることになった。
相手は美丈夫な年上のアルファだ。
緊張しながらも相手の顔をよく見れば、何ヶ月か前にテレビでキラビトアルファの特集に出ていた顔だった。
「テレビ、拝見しましたよ」
受けがそう言うと、攻めは驚いた顔をした。
トントン拍子に話が進み、結婚することになった。
受けの家は代々続く名家だから、ベンチャー企業を経営する若きアルファにとっては逆玉だ。
大勢の来賓客に祝われ、結婚式は盛大になわれた。
新居は受けのお爺様が用意した高級マンション
オメガに優しいセキュリティの充実した物件だ。
受けの荷物は運び込まれてるから、身一つでマンションに入った受け。
だがしかし、玄関を開けで部屋に入ると、リビングのソファーに見知らぬオメガが座っていた。
「どちら様でしょう?」
結婚式の招待客にもいなかった。
それに、どうして受けよりも先に部屋に入っているのだろう?
鍵は受けと攻めしか持っていないはずなのに、
「初めまして、俺は攻めのつがいです」
信じられない挨拶をされて、受けは倒れそうなほど驚いた。
だが、そんなことは矜恃が許さない。
背筋を伸ばしゆっくりと頭を下げて挨拶をした。
「初めまして、攻めの妻です」
婚姻届は受けの家の家令が出しているから、妻で間違いはずだ。
「お茶を入れますね」
よく分からないが、ここは受けの家、番と名乗るオメガは客になるからもてなさねばなるまい。
受けは育ちの良さから、そんな事を思ってキッチンへと向かった。
電気ケトルでお湯を沸かしつつ、真新しいカップを二つ並べた。
受けはソファーに座るオメガに聞いた。
「紅茶でよろしいですか?ノンカフェインでご用意しますから」
そう言われて眼をまん丸にして、驚くオメガ
やはり当たりのようだ。そう思いつつ、受けは慣れた手つきで紅茶をいれた。
「番さん、妊娠してるんですね」
帰宅した攻めに玄関先で受けは言い放った。
「自分勝手に良いとこ取りですか」
攻めに抱いていた憧れのような感情はもはや受けにはなかった。
「回りが勝手に話を進めていったんだ」
攻めの言い訳はどこか子どもじみていた。
受けの実家にバレないように、攻めの番と三人で奇妙な共同生活が始まった。
受けの中では悪いのは攻めだった。
いい年した大人が、断れなかった。なんて幼稚な言い訳をするのだ。
受けのお爺様は話せばわかる人なのだ。
本当のことを話せば、攻めの番に危害がおよぶと思い、受けは
「まだ怖くて」
なんて答えを濁す。
何とかなったと思ったけれど、アルファの兄たちは鋭かった。
受けと攻めの番が出かけたところを見つかってしまった。
「友だちなんだ」
つまらない嘘をついた。
受けに歳上の友だちが居ないことぐらいアルファの兄たちは知っている。
攻めの番は荷物をまとめて出産までシェルターに隠れる決意を受けに伝えてきた。
シェルターにはアルファは入ることは出来ない。国から守られるから安全だ。
「初めからこうすれば良かったよ」
攻めの番は笑いながら言ってきた。
ベンチャー企業の立ち上げ仲間の一人だったけど、深夜まで仕事をしていた時に発情してしまい、攻めにうなじを 噛まれてしまったらしい。他の仲間はベータだから、計画的だったのかもなんて、自虐的に攻めの番がいってきた。
捨てられないために番届けを出したのが精一杯だったらしい。
発情しててよく覚えてないけど、あいつらにマワサレテタかもね。なんて笑いながら言って、攻めの番はシェルターに入っていった。
帰宅した攻めが受けを怒鳴りつけてきた。
「俺の番をどこに隠した」
受けは冷めた目で攻めを見ながら答えた。
「シェルターで出産するからもう会わないで欲しいそうですよ」
攻めの番からの手紙を渡す。
手紙を読み終えた攻めがいきなり受けの頬を叩いた。
華奢な受けはそのまま床に倒れ込み、血が床に落ちた。
ウケが目覚めると、まっしろな部屋にいた。
オメガに優しいセキュリティのマンションは、受けの転倒を感知してレスキューが動いてしまったのだ。
受けを隠そうとする攻めを押しのけ、レスキューが受けを運び去ったらしい。
当然、受けの怪我はアルファの兄たちに知れた。
人生で初めて暴力を受けた受けは、声が出なくなっていた。
これでは攻めの番を守る事が出来ない。受けが困っているうちに、攻めの会社は大変なことになっていた。
当たり前だが、受けの実家が援助をやめたのだ。
オマケに攻めの番が産んだ子どもはベータだった。
オメガとやってみたい。と言うベータ達のために、攻めがフェロモンで誘発させて攻めの番を発情させたのだ。そ こをベータたちが代わる代わる乗っかって、最後に攻めが乗って項を噛んだ。
散々注がれたベータの誰かの子ども。シェルターのデータベースから直ぐに相手は判明した。
攻めの番はこの事をマスコミに売ったのだ。
援助が無くなったところに、マスコミからの攻撃を受け、攻めの会社はあっという間になくなってしまった。
もちろん攻めの有責で受けとの離婚が成立した。
慰謝料なんて払えるわけが無い攻めは、受けに土下座してきた。
受けは慰謝料請求なんていらないけれど、番になってしまった攻めの番が不憫だった。生まれた子どもは父親が特定出来たから、養育費を請求する。ベータではシェルターで暮らせないからだ。
攻めとベータたちは、受けのお爺様の子会社で働かせることにした。
慰謝料を支払わせるためと、監視のためだ。
受けはオメガのための衣料品をつくる会社を立ち上げた。そこにはかつての攻めの番も働いている。
「公私共に僕を支えてください」
もちろんプロポーズをしたのは受けである。
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