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reスタートもありでしょう
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遅くなったから、という事で、私は主人公を送ることにした。そこまで治安が悪い訳では無いけれど、王子が出てくると困るので、あえて元婚約者の私がおくることにしたのだ。
それに、ノートの落書きの話も聞きたい。
「アラン様とあっさり婚約破棄とか言ったけど、何か手続きとかあったの?」
馬車が走り出した途端に口を開いたのは主人公だった。やっぱり、主人公も聞きたいことがあったようだ。
「特にないかなぁ、そもそも婚約も王宮でお披露目パーティを開いて周知しただけっぽいのよね、……あ、その時にティアラを貰ったんだ」
思い出した。社交界とか正式なお呼ばれの時に付ける様にティアラをもらっていた。多分婚約指輪みたいなものなのだろう。何回もすっぽかされたパーティの時には、必ず頭にのせている。
私が目で合図を送ると、リリスは軽く頷いた。
間違いなようだ。
「もう付けないから返しに行こうかなぁ、別れた男の贈り物ってのも気持ち悪いし」
「バラして新しく作ればいいのに」
「一応、公爵家だからその手の飾りは沢山あるみたい。ご贔屓の宝石屋さんもあるっぽいし」
そういや、呼び出されるだけのパーティなのに、そのためにドレスを作っていたなぁ。いつ呼び出されるか分からないからって、まとめて数着つくったんだっけ。請求書が王宮宛になっていて、王子太っ腹だな。って思ったんだよな。
「あ、そうだ。ルイス様から聞いたんだけどね」
私は大切な事を思い出した。
「王子が、あなたを養女に出来る貴族を探しているそうよ。あなたが断ったのは、平民だから身分の違いを気にしたからって前向きに解釈したらしくて」
「嘘でしょ!」
主人公の反応は早かった。そりゃそうだ、王子のみんな俺と結婚したいよね。発想はおめでた過ぎてついていけない。
「簡単に出来ることじゃないし、理由が理由でしょ?大抵の有力貴族は断ってるそうよ。だって、そんなことしたらうちを敵に回すことになるもの」
公爵家の私との婚約を解消して、新しく婚約者を決めるのに王子の一存では出来ない。ってことさえも分からないおめでたさは、どうしたものか。それに、主人公を養女にして王子の婚約者としたならば、その貴族は公爵家であるうちを敵に回すことになる。いや、うちだけじゃない。野心がある。と見なされて他の有力貴族たちから睨まれる事は間違いない。
貴族社会の力関係を王子は理解していないのだ。誰もが王族にかしづいていると思っているのだ。
「アラン様、頭湧いてるんじゃない」
主人公は、眉間に皺を寄せてそう言った。うーん、可愛い顔が台無しなので、そういう険しい顔をしないで欲しい。
「さすがに王様にバレたから、王子にはマルコスじゃなくて王宮からの侍従が別について24時間体制で監視されてるそうよ」
校内で見かけた時に、私は思わず笑ってしまったのだ。ハッキリ言って王子より威厳がある侍従に、生徒だけでなく教師たちも萎縮しているのだから。王子は、校内で他の生徒と接触が出来なくなって、マルコスも少し離れたところに控えているだけになっているそうだ。
だから、マルコスが1人で私のところにやって来て教えてくれたのだけど。私たちの予想通りに、まずマルコスたちに主人公の養女の話を持ちかけた。ということ。それをご丁寧にお断りした事。その後の王子の暴走の事。そして、あっという間に王様にバレたこと。
まぁ、王様にはマルコスが直ぐに教えたらしいけど、ね。
王子も、マルコスたちに断られて、その日のうちに王宮に出仕している貴族に声をかけまくるんだから、困ったものだ。そりゃ、マルコスが言わなくも、直ぐに王様にバレるに決まっている。
「そのおかげで、私は平和ということか」
主人公がため息をついた。本当に王子がウザイ様だ。
「で、悪役令嬢サイドストーリーってなに?」
私は、自分の情報を伝えたので、はやくそちらを聞きたかった。
「ああ、それね」
主人公は、改めて座り直すと、チラリとリリスを見た。リリスは主人公を見て、私を見ると理解した。と頷いた。
「大丈夫よ、続けて」
リリスは優秀なメイドだ。ここでの話は、口外しない。
「シナリオライターさんが、呟いたのをみたのよ」
なんだって?呟いた?私、そんなのノーチェックですよ。
私が真顔になったのをみて、主人公はちょっと笑った。え?なに?なんか変でしたか?
「え?私、なにか?」
思わず慌てると、
「ごめん、だって、あなたったら全然悪役令嬢っぽくないんだもの」
主人公は、ちょっとだけ声を出して笑った。うーん、やっぱり可愛い。さすがは主人公。悪役令嬢顔の私とは地が違うようだ。
「っぽくないとな?」
「うん、っぽくない。髪型も縦ロールじゃないし。目だって結構タレ目だし、強いていえば口元のホクロが色っぽいけど、顔全体を見るとなんだか幼い」
気にはなっていたけれど、私が入ったせいかアンネローゼの顔、幼くなってちゃったんだよねぇ。表に出る時はリリスの化粧でそれなりに仕上げてもらってるけど、通常モードだと、それなりの16歳にしかなってない。
「そもそも、悪役令嬢の縦ロールっていうのがどこからきた設定なんだか謎すぎます」
「えー、悪役令嬢と言えば縦ロールでしょ、縦ドリル」
主人公はそう言うけれど、そもそも日本における縦ロールのご令嬢といえば、あの方のはず。確かに主人公にあたりはきつかったけれど、あの場面で自分贔屓にジャッジをしようとした審判を諌め、自分のミスを正直に認めたあの清廉潔白な姿は、縦ロールの悪役令嬢とは違う。正々堂々と戦う強く正しいお嬢様のはずだ。
そう、すなわち、本来あの方をモデルとしたのならば、悪役令嬢とは清く正しく美しく、正々堂々と主人公と戦う貴婦人なのだ。(ナンタラ夫人って呼ばれていたからね)私は、母からそう、言い聞かされてきた。だから、私が目指す悪役令嬢はそうでなくてはならない。
「違うわ、本来の悪役令嬢は、主人公と正々堂々と戦いその圧倒的な実力を、見せつけるのよ。そして、主人公を倒すの。でも、主人公は負けても負けても立ち上がり悪役令嬢に、勝負を挑み続ける。その主人公の姿に少女たちは、涙するのよ。スポ根なの!もしくはドジでのろまなの、主人公は!その、どちらかでないと昭和テイストの縦ロール悪役令嬢が成立しないのよ!」
私は一気にまくし立てた。そう、私が目指している悪役令嬢の何たるかを、主人公に分かってもらわなくてはならない。私は悪事を働いて断罪イベントで破滅エンドを迎える悪役令嬢にはなりたくないのだ。あくまでも、悪役令嬢というポテンシャルの高さで主人公を叩きのめすことを目標としているのだ。
「えーっと、昭和テイスト?」
主人公が私のあまりの勢いに少々引き気味に聞いてきた。
「そう、昭和テイストです。母から教わったのです」
「なるほど、生粋のオタクなのですね」
「そうです。この世界でもきちんと母の教えを守りたいと思っております」
「わかりました。つまり、あなたがプレイヤーとして動いてしまった為に、本来はリリースされていないはずの悪役令嬢サイドストーリーが始動してしまった。と、いうことかしら?」
なるほど、主人公の、意見はもっともである。
「そうですね、プレイヤーが2人いるのは、このゲームの性質上ありえないわけですが、リリース前の私が主人公のサイドストーリーが立ち上がってしまった。と考えれば合点がいきます」
「だとすると、アンネローゼは誰のルートを開いたのかしら?」
主人公が考える。そもそも、主人公は隠しルートのロバートを攻略対象にしたために、ロバートとのイベントを発生させるためにスキルを上げたのだ。(実際は見えないけど)はて、婚約解消イベントを発生させて、悪役令嬢アンネローゼは誰を攻略対象にするのだろうか?
「王子との婚約解消と破滅エンドを回避が最大の目標だったので、攻略対象は特に決めてはいないんですよねぇ、ただ、王子の声が推し声優なだけで」
さて、困ったものだ。アンネローゼだって、王族の婚約者ってことで、それに応えるために生きてきたのだろう。いきなり自由になったところで、どうしたらいいのかわからないのでは?多分、王族の婚約者ということで、男性とは接点を持たないように生活をしてきただろうから、興味のある男性もいないだろうしなぁ。
「じゃあ、とりあえずアンネローゼはフリーなわけだ。スキルを上げつつ攻略対象を探せばいいんじゃない?」
「そうね、そうする。それに、私は正しい悪役令嬢として、主人公の前に立ちはだかりますから」
そう言って、人差し指を主人公に向けた。
「いいわよ。受けて立つわ、負けないんだから」
主人公は、とても可愛らしくうふふと、笑った。うん、なんだか良い感じ、お友だちになれたと思う。
それに、ノートの落書きの話も聞きたい。
「アラン様とあっさり婚約破棄とか言ったけど、何か手続きとかあったの?」
馬車が走り出した途端に口を開いたのは主人公だった。やっぱり、主人公も聞きたいことがあったようだ。
「特にないかなぁ、そもそも婚約も王宮でお披露目パーティを開いて周知しただけっぽいのよね、……あ、その時にティアラを貰ったんだ」
思い出した。社交界とか正式なお呼ばれの時に付ける様にティアラをもらっていた。多分婚約指輪みたいなものなのだろう。何回もすっぽかされたパーティの時には、必ず頭にのせている。
私が目で合図を送ると、リリスは軽く頷いた。
間違いなようだ。
「もう付けないから返しに行こうかなぁ、別れた男の贈り物ってのも気持ち悪いし」
「バラして新しく作ればいいのに」
「一応、公爵家だからその手の飾りは沢山あるみたい。ご贔屓の宝石屋さんもあるっぽいし」
そういや、呼び出されるだけのパーティなのに、そのためにドレスを作っていたなぁ。いつ呼び出されるか分からないからって、まとめて数着つくったんだっけ。請求書が王宮宛になっていて、王子太っ腹だな。って思ったんだよな。
「あ、そうだ。ルイス様から聞いたんだけどね」
私は大切な事を思い出した。
「王子が、あなたを養女に出来る貴族を探しているそうよ。あなたが断ったのは、平民だから身分の違いを気にしたからって前向きに解釈したらしくて」
「嘘でしょ!」
主人公の反応は早かった。そりゃそうだ、王子のみんな俺と結婚したいよね。発想はおめでた過ぎてついていけない。
「簡単に出来ることじゃないし、理由が理由でしょ?大抵の有力貴族は断ってるそうよ。だって、そんなことしたらうちを敵に回すことになるもの」
公爵家の私との婚約を解消して、新しく婚約者を決めるのに王子の一存では出来ない。ってことさえも分からないおめでたさは、どうしたものか。それに、主人公を養女にして王子の婚約者としたならば、その貴族は公爵家であるうちを敵に回すことになる。いや、うちだけじゃない。野心がある。と見なされて他の有力貴族たちから睨まれる事は間違いない。
貴族社会の力関係を王子は理解していないのだ。誰もが王族にかしづいていると思っているのだ。
「アラン様、頭湧いてるんじゃない」
主人公は、眉間に皺を寄せてそう言った。うーん、可愛い顔が台無しなので、そういう険しい顔をしないで欲しい。
「さすがに王様にバレたから、王子にはマルコスじゃなくて王宮からの侍従が別について24時間体制で監視されてるそうよ」
校内で見かけた時に、私は思わず笑ってしまったのだ。ハッキリ言って王子より威厳がある侍従に、生徒だけでなく教師たちも萎縮しているのだから。王子は、校内で他の生徒と接触が出来なくなって、マルコスも少し離れたところに控えているだけになっているそうだ。
だから、マルコスが1人で私のところにやって来て教えてくれたのだけど。私たちの予想通りに、まずマルコスたちに主人公の養女の話を持ちかけた。ということ。それをご丁寧にお断りした事。その後の王子の暴走の事。そして、あっという間に王様にバレたこと。
まぁ、王様にはマルコスが直ぐに教えたらしいけど、ね。
王子も、マルコスたちに断られて、その日のうちに王宮に出仕している貴族に声をかけまくるんだから、困ったものだ。そりゃ、マルコスが言わなくも、直ぐに王様にバレるに決まっている。
「そのおかげで、私は平和ということか」
主人公がため息をついた。本当に王子がウザイ様だ。
「で、悪役令嬢サイドストーリーってなに?」
私は、自分の情報を伝えたので、はやくそちらを聞きたかった。
「ああ、それね」
主人公は、改めて座り直すと、チラリとリリスを見た。リリスは主人公を見て、私を見ると理解した。と頷いた。
「大丈夫よ、続けて」
リリスは優秀なメイドだ。ここでの話は、口外しない。
「シナリオライターさんが、呟いたのをみたのよ」
なんだって?呟いた?私、そんなのノーチェックですよ。
私が真顔になったのをみて、主人公はちょっと笑った。え?なに?なんか変でしたか?
「え?私、なにか?」
思わず慌てると、
「ごめん、だって、あなたったら全然悪役令嬢っぽくないんだもの」
主人公は、ちょっとだけ声を出して笑った。うーん、やっぱり可愛い。さすがは主人公。悪役令嬢顔の私とは地が違うようだ。
「っぽくないとな?」
「うん、っぽくない。髪型も縦ロールじゃないし。目だって結構タレ目だし、強いていえば口元のホクロが色っぽいけど、顔全体を見るとなんだか幼い」
気にはなっていたけれど、私が入ったせいかアンネローゼの顔、幼くなってちゃったんだよねぇ。表に出る時はリリスの化粧でそれなりに仕上げてもらってるけど、通常モードだと、それなりの16歳にしかなってない。
「そもそも、悪役令嬢の縦ロールっていうのがどこからきた設定なんだか謎すぎます」
「えー、悪役令嬢と言えば縦ロールでしょ、縦ドリル」
主人公はそう言うけれど、そもそも日本における縦ロールのご令嬢といえば、あの方のはず。確かに主人公にあたりはきつかったけれど、あの場面で自分贔屓にジャッジをしようとした審判を諌め、自分のミスを正直に認めたあの清廉潔白な姿は、縦ロールの悪役令嬢とは違う。正々堂々と戦う強く正しいお嬢様のはずだ。
そう、すなわち、本来あの方をモデルとしたのならば、悪役令嬢とは清く正しく美しく、正々堂々と主人公と戦う貴婦人なのだ。(ナンタラ夫人って呼ばれていたからね)私は、母からそう、言い聞かされてきた。だから、私が目指す悪役令嬢はそうでなくてはならない。
「違うわ、本来の悪役令嬢は、主人公と正々堂々と戦いその圧倒的な実力を、見せつけるのよ。そして、主人公を倒すの。でも、主人公は負けても負けても立ち上がり悪役令嬢に、勝負を挑み続ける。その主人公の姿に少女たちは、涙するのよ。スポ根なの!もしくはドジでのろまなの、主人公は!その、どちらかでないと昭和テイストの縦ロール悪役令嬢が成立しないのよ!」
私は一気にまくし立てた。そう、私が目指している悪役令嬢の何たるかを、主人公に分かってもらわなくてはならない。私は悪事を働いて断罪イベントで破滅エンドを迎える悪役令嬢にはなりたくないのだ。あくまでも、悪役令嬢というポテンシャルの高さで主人公を叩きのめすことを目標としているのだ。
「えーっと、昭和テイスト?」
主人公が私のあまりの勢いに少々引き気味に聞いてきた。
「そう、昭和テイストです。母から教わったのです」
「なるほど、生粋のオタクなのですね」
「そうです。この世界でもきちんと母の教えを守りたいと思っております」
「わかりました。つまり、あなたがプレイヤーとして動いてしまった為に、本来はリリースされていないはずの悪役令嬢サイドストーリーが始動してしまった。と、いうことかしら?」
なるほど、主人公の、意見はもっともである。
「そうですね、プレイヤーが2人いるのは、このゲームの性質上ありえないわけですが、リリース前の私が主人公のサイドストーリーが立ち上がってしまった。と考えれば合点がいきます」
「だとすると、アンネローゼは誰のルートを開いたのかしら?」
主人公が考える。そもそも、主人公は隠しルートのロバートを攻略対象にしたために、ロバートとのイベントを発生させるためにスキルを上げたのだ。(実際は見えないけど)はて、婚約解消イベントを発生させて、悪役令嬢アンネローゼは誰を攻略対象にするのだろうか?
「王子との婚約解消と破滅エンドを回避が最大の目標だったので、攻略対象は特に決めてはいないんですよねぇ、ただ、王子の声が推し声優なだけで」
さて、困ったものだ。アンネローゼだって、王族の婚約者ってことで、それに応えるために生きてきたのだろう。いきなり自由になったところで、どうしたらいいのかわからないのでは?多分、王族の婚約者ということで、男性とは接点を持たないように生活をしてきただろうから、興味のある男性もいないだろうしなぁ。
「じゃあ、とりあえずアンネローゼはフリーなわけだ。スキルを上げつつ攻略対象を探せばいいんじゃない?」
「そうね、そうする。それに、私は正しい悪役令嬢として、主人公の前に立ちはだかりますから」
そう言って、人差し指を主人公に向けた。
「いいわよ。受けて立つわ、負けないんだから」
主人公は、とても可愛らしくうふふと、笑った。うん、なんだか良い感じ、お友だちになれたと思う。
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