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もうひとつの最後の祝福
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その後、彗星に巻き込まれ、ミキサーのようにかき混ぜられた空は不安定で、大雨や竜巻が何度かやってきた。
でも、貴族たちが大金をかけ、町中に作った教会や主要施設は強靭で、びくともしなかった。そこに避難すれば絶対に安全だった。
魔獣の森は大半が燃え尽きてしまい、残ったところにももう魔獣は一頭もいなかった。女神の言うように、死の国にみんな帰ってしまったようだ。
彗星の核は、ちゃんと燃え残っていた。
落下した地点の周囲は巨大な窪地となっていて、あれほど落下速度を弱めてもかなりの威力があったと知れた。
窪地となったそこに、やがて美しい泉が湧いた。
吸い込まれそうな緑色の、どんなに泥が流れ込んでも澄み渡り、どんなに寒くても凍らず、どんなに暑い日が続いても枯れない泉だった。
聖女には、もう女神の声は聞こえない。
手の紋章も、不思議な力もいつの間にか消えていた。
でも、あのちょっぴり頼りない女神様が、自分たちを見守ってくれているのは感じている。
みんなが晴れてほしいと思ったときは必ず晴れたり、この国にだけ特別な花を咲かせてくれたり、ちょっとしたサービスをしてくれるからだ。
国の名前は、奇跡の国として大陸中に轟き、彗星と聖女、そして女神の残した伝説は、この先大聖典にも負けないほど長く深く語り継がれることとなる。
この国は、今も豊穣と癒しの女神を信仰している。
だから、王族も、貴族も、祭主も、民も、お互いの幸福を願うときは、決まってこう言い合うのだ。
「命の消えるそのときまで、あなたに女神ディアマンティアナの祝福がありますように」
おしまい
でも、貴族たちが大金をかけ、町中に作った教会や主要施設は強靭で、びくともしなかった。そこに避難すれば絶対に安全だった。
魔獣の森は大半が燃え尽きてしまい、残ったところにももう魔獣は一頭もいなかった。女神の言うように、死の国にみんな帰ってしまったようだ。
彗星の核は、ちゃんと燃え残っていた。
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吸い込まれそうな緑色の、どんなに泥が流れ込んでも澄み渡り、どんなに寒くても凍らず、どんなに暑い日が続いても枯れない泉だった。
聖女には、もう女神の声は聞こえない。
手の紋章も、不思議な力もいつの間にか消えていた。
でも、あのちょっぴり頼りない女神様が、自分たちを見守ってくれているのは感じている。
みんなが晴れてほしいと思ったときは必ず晴れたり、この国にだけ特別な花を咲かせてくれたり、ちょっとしたサービスをしてくれるからだ。
国の名前は、奇跡の国として大陸中に轟き、彗星と聖女、そして女神の残した伝説は、この先大聖典にも負けないほど長く深く語り継がれることとなる。
この国は、今も豊穣と癒しの女神を信仰している。
だから、王族も、貴族も、祭主も、民も、お互いの幸福を願うときは、決まってこう言い合うのだ。
「命の消えるそのときまで、あなたに女神ディアマンティアナの祝福がありますように」
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