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懐かしの我が家 ※聖女主軸
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女神が天に帰り、ユースレスと言い争った日。
雨の中、イルミテラは王宮から急ぎ帰宅していた。
とっくに昼を過ぎていたが、一切空腹を感じない。なにも食べていないのに断続的に吐き気が込み上げ、食べ物を口に入れるどころではなかった。
リュゼの家紋が大きく入った馬車は、道で祈っている民をひき殺す勢いで走る。御者は、もたもたと足をもつらせながら車輪を避ける町の人間に鞭を振るった。
「さっさとどかないか!道を空けろ!」
一刻も早く公爵邸に辿り着きたい一心だった。走り去る馬車を、びしょ濡れの民衆がじっと見送っていたのには最後まで気付かなかった。
馬車は、いよいよリュゼ家の私道に入った。やっとだ。
朝出て行ったばかりなのに、公爵邸の外門が見えると、涙がこみあげてくるほど嬉しかった。門から玄関までの距離がなんと長く感じられることか。
馬車から降りると、すぐに中へ飛び込んだ。
「今戻りました!チェリー、お父様は!?」
チェリーことトゥレチェリーばあやが、玄関で両手を握り締めて待っていた。
「ああ、お嬢様ッ!お帰りなさいませ!ばあやはもう、いつお帰りになるかと心配で心配で……ッ!」
チェリーばあやは、イルミテラの背を支えるようにして談話室へ誘導し、火を熾した暖炉脇の長椅子に座らせた。侍女に温かな飲み物を指示しながら、イルミテラの濡れた髪を拭ってくれている。
「旦那様はまだお戻りではありません。いろいろとご準備があるそうです。お嬢様は先にここを離れて、王都の外れにあるモルテのお屋敷に移るようにと。そのあと様子を見て、外国へ移動する予定だそうです」
「え、そ、そんなことをして大丈夫かしら……」
一応聖女だと名乗ったのに、逃げてしまっていいのだろうか。それに父だって、議会に所属する貴族として色々やることがあるのでは。
「旦那様は、お嬢様を王都から離したいのでしょう。ばあやもそれに賛成です。まさかあんなことになるなんて……。でも大丈夫ですよ。ばあやは、お嬢様とどこへでも参りますからね。さ、ホットチョコレートをお飲みください。身体が温まったらお荷物の確認をしましょうね。夜までには出発しましょう」
「ありがとう。わたくしは、お母様のお写真さえあれば大丈夫よ」
そう言って、胸元に下がったロケットペンダントを揺らして見せた。
雨の中、イルミテラは王宮から急ぎ帰宅していた。
とっくに昼を過ぎていたが、一切空腹を感じない。なにも食べていないのに断続的に吐き気が込み上げ、食べ物を口に入れるどころではなかった。
リュゼの家紋が大きく入った馬車は、道で祈っている民をひき殺す勢いで走る。御者は、もたもたと足をもつらせながら車輪を避ける町の人間に鞭を振るった。
「さっさとどかないか!道を空けろ!」
一刻も早く公爵邸に辿り着きたい一心だった。走り去る馬車を、びしょ濡れの民衆がじっと見送っていたのには最後まで気付かなかった。
馬車は、いよいよリュゼ家の私道に入った。やっとだ。
朝出て行ったばかりなのに、公爵邸の外門が見えると、涙がこみあげてくるほど嬉しかった。門から玄関までの距離がなんと長く感じられることか。
馬車から降りると、すぐに中へ飛び込んだ。
「今戻りました!チェリー、お父様は!?」
チェリーことトゥレチェリーばあやが、玄関で両手を握り締めて待っていた。
「ああ、お嬢様ッ!お帰りなさいませ!ばあやはもう、いつお帰りになるかと心配で心配で……ッ!」
チェリーばあやは、イルミテラの背を支えるようにして談話室へ誘導し、火を熾した暖炉脇の長椅子に座らせた。侍女に温かな飲み物を指示しながら、イルミテラの濡れた髪を拭ってくれている。
「旦那様はまだお戻りではありません。いろいろとご準備があるそうです。お嬢様は先にここを離れて、王都の外れにあるモルテのお屋敷に移るようにと。そのあと様子を見て、外国へ移動する予定だそうです」
「え、そ、そんなことをして大丈夫かしら……」
一応聖女だと名乗ったのに、逃げてしまっていいのだろうか。それに父だって、議会に所属する貴族として色々やることがあるのでは。
「旦那様は、お嬢様を王都から離したいのでしょう。ばあやもそれに賛成です。まさかあんなことになるなんて……。でも大丈夫ですよ。ばあやは、お嬢様とどこへでも参りますからね。さ、ホットチョコレートをお飲みください。身体が温まったらお荷物の確認をしましょうね。夜までには出発しましょう」
「ありがとう。わたくしは、お母様のお写真さえあれば大丈夫よ」
そう言って、胸元に下がったロケットペンダントを揺らして見せた。
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