29 / 55
紛糾する会議 ※王子主軸
しおりを挟む
会議室では、今朝ユースレスが会った重臣たちが雁首を揃えて待ち構えていた。
「リュゼ公爵はまだいらっしゃらないのか?聖女の令嬢はどうしたんだ?」
「逃げるつもりやもしれませんぞ。明日には屋敷がもぬけの殻なんてことも」
「教会に連絡はとれた?」
「いいえ、誰も出ません。でも中からお祈りの声はずっとしてるんです」
「祈ってる?誰に?女神に見捨てられた国で、一体誰に祈ってると言うんだ?」
「おい、よせ。こんなところで揉めてどうする」
「祈って解決するならいくらでも祈るさ。王妃様みたいに――」
扉が開かれ、王とユースレスが入室すると言い合いは静まった。
憔悴しきった王を見て驚く者もいるし、ユースレスを見て舌打ちする者もいる。
帰国の挨拶もそこそこに、すぐに議題に移る。
深夜から明け方まで、話し合いは長く苦しく続いた。
「最も優先すべきは、魔獣への対応だ」
「さよう。黒い森に近接する砦は、設備・人員ともにすべて以前の形に戻さねば」
「そう簡単には参りませんぞ。まず対魔獣用兵士が圧倒的に足りません。結界が出来てからは雇傭数を徐々に減らし、育成も鈍化。ただでさえ全体数は全盛期の3分の2程度。しかも、ほとんどは昨日の騒動で逃げてしまいました」
「王都の軍は動かせませんよ。民の暴動が広がらないよう抑えないといけない。今も貴族の屋敷を取り囲んで騒いでいるくらいですからね。教会周辺にも大勢集まって、もう大変で」
「そうだ。教会の聖団を使えないか。聖女ほどでなくとも、回復術や守護魔法を使えるだろう。以前は資格持ちが魔獣退治に同行してくれたものだが」
「それが……祭主も含め、関係者は全員教会に立てこもっております。女神の教えに背いたと恐れ戦き、一心に祈っているようです。無駄なことを」
「結界が出来る以前の案はどうした?なんかあったろう?風船を飛ばして魔獣の嫌う薬液を散布するとか、触れれば電流が流れる巨大網の設置とか、長距離砲の開発とか。奴らの特性を研究して撃退システムを作る連中がいたろう」
「計画は全て頓挫しています。予算が出なかったもので。すでに部署は解体済み。聖女の結界はタダですからね」
一同の深い溜息。
辺境伯が気乗りしない様子で口を開いた。
「仕方がありませんな。陛下、軍務卿、私に魔獣退治の全権を。辺境では王都の軟弱者のように鍛錬を怠ってはおりません。対人戦闘が主でしたが、指導次第で使い物にはなるでしょう。今、各領内からも手練れの騎士団や傭兵団を集めております。それでなんとかしのぐ他ありますまい」
「リュゼ公爵はまだいらっしゃらないのか?聖女の令嬢はどうしたんだ?」
「逃げるつもりやもしれませんぞ。明日には屋敷がもぬけの殻なんてことも」
「教会に連絡はとれた?」
「いいえ、誰も出ません。でも中からお祈りの声はずっとしてるんです」
「祈ってる?誰に?女神に見捨てられた国で、一体誰に祈ってると言うんだ?」
「おい、よせ。こんなところで揉めてどうする」
「祈って解決するならいくらでも祈るさ。王妃様みたいに――」
扉が開かれ、王とユースレスが入室すると言い合いは静まった。
憔悴しきった王を見て驚く者もいるし、ユースレスを見て舌打ちする者もいる。
帰国の挨拶もそこそこに、すぐに議題に移る。
深夜から明け方まで、話し合いは長く苦しく続いた。
「最も優先すべきは、魔獣への対応だ」
「さよう。黒い森に近接する砦は、設備・人員ともにすべて以前の形に戻さねば」
「そう簡単には参りませんぞ。まず対魔獣用兵士が圧倒的に足りません。結界が出来てからは雇傭数を徐々に減らし、育成も鈍化。ただでさえ全体数は全盛期の3分の2程度。しかも、ほとんどは昨日の騒動で逃げてしまいました」
「王都の軍は動かせませんよ。民の暴動が広がらないよう抑えないといけない。今も貴族の屋敷を取り囲んで騒いでいるくらいですからね。教会周辺にも大勢集まって、もう大変で」
「そうだ。教会の聖団を使えないか。聖女ほどでなくとも、回復術や守護魔法を使えるだろう。以前は資格持ちが魔獣退治に同行してくれたものだが」
「それが……祭主も含め、関係者は全員教会に立てこもっております。女神の教えに背いたと恐れ戦き、一心に祈っているようです。無駄なことを」
「結界が出来る以前の案はどうした?なんかあったろう?風船を飛ばして魔獣の嫌う薬液を散布するとか、触れれば電流が流れる巨大網の設置とか、長距離砲の開発とか。奴らの特性を研究して撃退システムを作る連中がいたろう」
「計画は全て頓挫しています。予算が出なかったもので。すでに部署は解体済み。聖女の結界はタダですからね」
一同の深い溜息。
辺境伯が気乗りしない様子で口を開いた。
「仕方がありませんな。陛下、軍務卿、私に魔獣退治の全権を。辺境では王都の軟弱者のように鍛錬を怠ってはおりません。対人戦闘が主でしたが、指導次第で使い物にはなるでしょう。今、各領内からも手練れの騎士団や傭兵団を集めております。それでなんとかしのぐ他ありますまい」
464
お気に入りに追加
1,075
あなたにおすすめの小説


【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる