聖女ディアの処刑

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魔獣の出現報告 ※王子主軸

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「はあ、やっと見つけた……!」

ユースレスは、王宮の会議室でやっと人影を見つけた。

集まっていたのは、リュゼ以外の公爵家、辺境伯、国家の防衛を司る軍務大臣、国務院の総長を兼任する内務卿、各領の代表騎士団の団長、国庫管理や外務の政務官長など。20人ほどの大人たちが難しい顔を突き合わせていた。ディアの処刑に立ち会った者は、その場にひとりもいなかった。

「おい!王宮の中を見たか?むちゃくちゃになってるぞ!どうして警備をしない!?」

誰もなにも答えない。厳しい目付きに、ユースレスはたじろいだ。

「なんだよ。みんなで何をしてるんだ」

大臣たちは何も言わず首を振って、地図を片付け始め、ユースレスを完全に無視して「王陛下が戻られ次第、至急人員の再配備を検討しましょう」「教会にももう一度、聖団の要請を」などと言いながら、続きの間へ移動していった。

ムッとはしたが、昨日の今日だから仕方ない。みんな余裕がないんだろう。ユースレスは、近くにいた顔馴染みの護衛騎士に声をかけた。

「……なあ、なにかあったのか?」

「魔獣が現れたのです」

「はあ!?ど、どこに」

騎士は淡々と続けた。

「場所は、ダンジエール地方北部に広がる黒い森。出現個体は翼竜4頭。被害報告としては砦が半壊、哨戒用はばたき式飛行機は全機大破、死傷者は154名。そのうち……死者は153名です」

「ひゃく……ッ!?な、なんで?どうしてそんなに死んでるんだ?前はそんなことなかっただろう!」

「前、とは?結界が出来る前のお話ですか?」

「そ、そうだ!結界がないときだって、魔獣はちゃんと退治できていただろう!何故今回だけそんなに被害が大きいんだ?誰の怠慢だ?」

「……近年は、魔獣の出現報告が全くありませんでしたので、今年の定例議会で、砦の規模を縮小したのです。殿下も出席された会議ですよ。覚えていらっしゃいませんか」

思い出した。使っていない田舎の砦にお金を使うのが馬鹿らしくて、設備や人員を大幅に減らしたのだ。魔獣なんて結界があればなんとかなったから。

「だ、だけど、それにしたって死に過ぎじゃないか?」

「現場にいたのは、ほとんど実戦経験のない若手ばかりでした。砲台の多くは整備が間に合っておらず、空を飛ぶ化物を相手に、地上でできることなど限られております。それでも……熟練者がほとんどいない中、近くの中継地からも人員をかき集めて、彼らは命を懸けて頑張ってくれました。だれも怠けてなどいない」
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