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第5章
13 ロニ
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「ザィード様達はどうなったの?」
本来、ガルスの獣人達はエルメニアで本来の姿になる事を禁じられている。だが今回、お嬢様を見つける為に狼の姿で王都の中だけでなく、街道まで走り回ったと聞いている。
「それは問題無かったようですよ。カシム王子やオルコス様の口添えまであったようですから」
それに街の風潮もそれを後押ししていた。
「そう。つまり彼が屋敷に来ていないのは、王宮に留められているからでは無いのね?」
「そうですね」
困った人だ、殿下はお嬢様の死を目の前で感じて、何十年も先に起こる事を恐れ、離れようとしているようだった。
「本当に困った人」
「心配なさらなくても、すぐにいらっしゃいますよ。それよりお嬢様は、まず体調を戻す事を考えなくては」
「ありがとう、ロニ。貴方にも心配をかけたわね」
「そう思っていらっしゃるなら、もう少し横になっていて下さい。そうお部屋の中をふらふらと歩かれては困ります」
「もう身体は大丈夫なのよ。ずっと横になっていたから、急に動いてちょっと躓いただけよ」
意識が戻っても、しばらくは起き上がるだけで疲れてしまい寝台を離れる事も出来なかったが、今では部屋の中を歩くくらい平気になっている。
「薬師の方も少しずつ動く様に言われていましたよ。さぁ、そろそろ横になっていて下さい」
「分かっているけれど、退屈だわ」
「アルフレッド様が何か読む物を探して来ると仰っていましたから、もうすぐお戻りになりますよ」
「まぁ、それは楽しみね」
そう言って横になるとやはり疲れたのかすぐに眠ってしまう。
意識が戻り命の危険は無くなったといえ、気力が戻っただけで体力の回復にはまだ程遠い。
まだまだ周りに気を取られる時期でも無いのに、お嬢様に心配させている人が腹立たしくて仕方がない。
「全く、何をしているのかしら」
ウエストリアを出た頃は、まだはっきりしていなかったお嬢様の気持ちも、ミリオネアから戻って来た時には決まっていた。
彼女がどこに行こうと自分は付いて行くと決めているので、この度の事は、ガルスに行くことも考えなくてはと思っていた矢先だった。
彼が連れ帰った時のお嬢様の姿は覚えている。
顔には生気がなく、呼吸しているのも感じられず、彼女の周りは死が取り囲んでいた。
お嬢様を失うのでは無いかという恐怖、あの時の感情は自分の頭の中にもしっかり残っていて、今でも眠っている口元にそっと手をかざし呼吸を確かめる事も度々ある。
私とは違い、寿命の長い彼はいつか必ずお嬢様を失う時がくる。
それは確かに恐ろしい事かも知れないが、結局、彼と私は同類だ。
私は仕える人として、彼は己の妻として、立場は違っても側にいたいという気持ちに抗う事など出来ない。
「さっさと諦めてしまえば良いのに」
そう、どんなに足掻いても無駄なことだ。
お嬢様が彼の側にいると既に決めてしまっているのだから、彼が逃れられるとは思えない。
本来、ガルスの獣人達はエルメニアで本来の姿になる事を禁じられている。だが今回、お嬢様を見つける為に狼の姿で王都の中だけでなく、街道まで走り回ったと聞いている。
「それは問題無かったようですよ。カシム王子やオルコス様の口添えまであったようですから」
それに街の風潮もそれを後押ししていた。
「そう。つまり彼が屋敷に来ていないのは、王宮に留められているからでは無いのね?」
「そうですね」
困った人だ、殿下はお嬢様の死を目の前で感じて、何十年も先に起こる事を恐れ、離れようとしているようだった。
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「ありがとう、ロニ。貴方にも心配をかけたわね」
「そう思っていらっしゃるなら、もう少し横になっていて下さい。そうお部屋の中をふらふらと歩かれては困ります」
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意識が戻っても、しばらくは起き上がるだけで疲れてしまい寝台を離れる事も出来なかったが、今では部屋の中を歩くくらい平気になっている。
「薬師の方も少しずつ動く様に言われていましたよ。さぁ、そろそろ横になっていて下さい」
「分かっているけれど、退屈だわ」
「アルフレッド様が何か読む物を探して来ると仰っていましたから、もうすぐお戻りになりますよ」
「まぁ、それは楽しみね」
そう言って横になるとやはり疲れたのかすぐに眠ってしまう。
意識が戻り命の危険は無くなったといえ、気力が戻っただけで体力の回復にはまだ程遠い。
まだまだ周りに気を取られる時期でも無いのに、お嬢様に心配させている人が腹立たしくて仕方がない。
「全く、何をしているのかしら」
ウエストリアを出た頃は、まだはっきりしていなかったお嬢様の気持ちも、ミリオネアから戻って来た時には決まっていた。
彼女がどこに行こうと自分は付いて行くと決めているので、この度の事は、ガルスに行くことも考えなくてはと思っていた矢先だった。
彼が連れ帰った時のお嬢様の姿は覚えている。
顔には生気がなく、呼吸しているのも感じられず、彼女の周りは死が取り囲んでいた。
お嬢様を失うのでは無いかという恐怖、あの時の感情は自分の頭の中にもしっかり残っていて、今でも眠っている口元にそっと手をかざし呼吸を確かめる事も度々ある。
私とは違い、寿命の長い彼はいつか必ずお嬢様を失う時がくる。
それは確かに恐ろしい事かも知れないが、結局、彼と私は同類だ。
私は仕える人として、彼は己の妻として、立場は違っても側にいたいという気持ちに抗う事など出来ない。
「さっさと諦めてしまえば良いのに」
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