上 下
55 / 58
第4章

16 ミリオネア(16)

しおりを挟む
「カリーナ、良かっ、、、」
「アレス様、、、好き。ずっと、多分、初めて会った頃から、、、」

 どうしていいか分からず、抱きついて打ち明けると彼に抱きしめられる。

「カリーナ、僕も好きだよ。あぁ、やっと帰って来た、、、」

 そのままアレス様が意識を失ってしまう。

「アレス様!?」
「やっぱり、限界だったみたいだね」

「ヒューイ様」
「キミがいなくなってからほとんど寝てないみたいだからね」
「大丈夫でしょうか?」
「安心して寝てしまっただけさ。仕方ない、部屋まで連れて帰るとするかな」

 そのまま彼の部屋で眠っている人の側にいる事になった。
 カリーナも離れたく無かったし、何より彼の手がカリーナを掴んで離さなかったから。

 そして目覚めた彼にそのまま寝台の中に引きずり込まれた。

「アレス様!」
「カリーナ、本当に僕でいいんだね?」
「どうして?」
「ちょっと歳が離れているし、、、」

「そんな事、、、」
「後何年かしたら、もっとおじさんにもなる」
「私は子供っぽいからずっと妹にしか見て貰えないと思っていたの」
「子どもにこんな気持ちにはならないよ」

 そう言って彼の唇がふれた瞬間、ノックの音と共にヒューイ様が部屋に入って来る。

「アレス、リディアからの伝言だ。『ちゃんと約束事を交わしてから、先に進むように』って」

「ヒューイ、今伝える必要があったのか?」
「今、伝えないと間に合わないだろう?」

 こっちは彼女が欲しくて仕方がないのに、婚約の許しを得てと言うなら王都まで戻る必要がある。

「分かった、明日ロートアに戻る」

 商隊をロアンに任せるにしても、彼女を連れて戻るにはどんなに急いでも一週間はかかるだろう。
 その間、どんなに彼女が欲しくても、手を出さないよう我慢しなくてはならない。

「あっそれから、こっちは彼女の幼馴染から、『僕から大切な幼馴染を奪うつもりなら、ドロテアの祭りで僕に勝ってからにして欲しいね』って

「冗談だろう?」
「そのくらい付き合う必要があると思わないかい?」

 ドロテアの祭りは夏の終わりにあるので、それまで王都に帰れない事になる。
 自分の寝台の上で、頬を染めているカリーナを引き寄せながらヒューイに答える。

「二人に承知したと伝えてくれ」
「本当に?」

「少しくらいいいだろう、これ以上は自制する。とりあえず、お前は出て行け」
「了解」

「アレス様」
「ん?」
「本物のキスをするの?」
「誰に聞いた」
「ダナーに」
「されて、、、ないよな?」

 カリーナが目を丸くして頭を上下させる。

「おいで、カリーナ」

 腕の中にいるカリーナの唇に何度か軽く触れ、そのままキスが深くなると、漏れたカリーナの声が聞こえて来る。

『くそ、これから二か月以上このままかよ』

 約束した以上、この状態を保たなければならない。
 
 確かに深いキスをしただけでぼ~となっているカリーナを抱くのは性急過ぎるかもしれないが、こっちは明らかに限界なのに勘弁して欲しい。

 今まではアルコールで誤魔化していたが、それも難しいし、剣を合わせて汗を流せるような相手は、北の国にしかいないのにどうすればいいんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...