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第6話 波乱の新学期 幕開け
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「おーい、起きろーーーー!!」
リオンは暗闇の中から誰かに呼ばれていた。
「父さん...?」
また今日も鉱山仕事の1日が始まる。
リオンにとって変わりのない、いつもと同じ1日がやってくる。
「なに寝ぼけてんのリオン!早く起きないと授業に遅刻しちゃうぞー!」
リオンは飛び起きた。
「授業...?」
「いつまで寝ぼけてるんだい。お寝坊さんのリオン君」
リオンに声をかけていたのはアーサーだった。アーサーは笑いながら身支度をしている。
(夢か...。)
リオンがこの士官学校に入学して早くも二週間が過ぎようとしていた。
入学前に偶然にも知り合ったアーサーとは寮が同室で、二人は自然と打ち解け合っていた。
「なんの夢を見てたの?少し苦しそうだったよ」
「自分が幼い頃の夢を見ていたんだ。街道を永遠に歩き続けた時の夢さ」
「どーりで辛そうだったわけだね。納得」
アーサーはまだ半分寝ぼけているリオンを見て笑っている。
「早く身支度を整えた方がいいよリオン。今日は待ちに待った実技の授業だよ!戦闘を想定した実践的な授業は初めてだよね。座学ばっかりで飽き飽きしていたんだ」
「毎朝助かるよアーサー。俺はどうしても朝が苦手でね」
リオンとアーサーは用意を済ませると、急いで教室へと向かった。
♢♢♢♢♢
教室では生徒が慌ただしく教師を待っていた。みんな今日の実践授業が待ち遠しくて仕方なかったのだ。
この学校では、魔道士の学級・騎士の学級・聖職者の学級・戦士の学級の4つにクラスが分かれているが、共通した授業も多い。
寮なども学級関係なくバラバラなため、学級が関係してくるのは高度な専門知識を学ぶ専門科目の授業時や、最終試験の内容などが主である。
クラスが違う生徒同士で学ぶことで、より幅の広い知識と戦闘経験を積ませるのが目的である。
授業の開始を待っていると、ドアを開ける音と共に、入学式で新入生を誘導していた老齢の女性教師が部屋に入ってきた。
「皆さんご機嫌よう。私は戦闘訓練の授業を担当するミランダ・バルテスです。お会いするのは入学式以来ですね」
生徒たちは意表を突かれた。
戦闘訓練の授業はもっと現役の戦士のような武闘派教員が担当すると皆思っていたのだ。
「おいおい、あんな歳で戦闘訓練なんてできんのかよ」
ある生徒が小声で野次った。
「コーザ・ルテイリア。確か父親はこの国で皇帝陛下に仕えてる重臣でしたね。そんな立派なお父さまを持つあなたが、小さな声でコソコソと陰口なんてよろしくて?言いたいことはハッキリとおっしゃいなさい」
まさに地獄耳である。注意を受けた生徒はバツの悪そうな顔をしていたが、親の話をされた以上引き下がれなかったのであろう。
コーザと呼ばれた生徒は、バルテス先生の前に出てきて今度は大きな声ではっきりと言った。
「バルテス先生のような高齢の教員に、実戦訓練の授業ができるとは思えないと、そう言いました」
「よろしい。では最初の戦闘訓練のお相手はコーザ、あなたにお願いしましょう。私と戦ってみなさんへのお手本となってください」
「先生とですか!?」
「当たり前でしょう戦闘訓練の授業なのですから。これから皆さんには2人1組でペアを組んで技の掛け合いをして頂きます。その見本をするのに私のパートナーが必要だったので助かりますよコーザ」
バルテス先生はそう言いながら笑うと、コーザと対面に向き合った。
「あなたは確か戦士の学級でしたね?」
「はい、先生」
コーザは木製の斧を構えながら答えた。
「戦闘の経験はないでしょうからアドバイスを差し上げます。私は魔法を主な攻撃手段として用います。あなたは遠距離の戦闘になると不利なので、私の攻撃に注意をしながら出来るだけ間合いを詰めることに集中しなさい」
コーザは理解していた。相手の懐に入り込めさえすればこちらのものだと。
(高齢とはいえ熟練の魔女だ。一つでも魔法にかかればそこで俺の負けが決まっちまうが、近距離でこの斧を叩き込むことさえできれば勝てる)
コーザは緊張しながらも、冷静になるよう努めていた。
リオンとアーサーはワクワクしながら観戦していた。
「リオン、やっと模擬戦だね!この試合どうなると思う?」
リオンは少し考えた後に答えた。
「どうもこうも、先生がまず負けるはずがない。きっとコーザとかいったあいつが、間合いを詰める間も無く吹っ飛ばされて終わりだろう」
「やっぱりそうかなー。僕ら騎士を目指す人間にもやっぱり魔法は脅威だからね。近づくことさえできれば何とかなるけど、遠くから攻撃されたら防戦一方だよ」
「この学校がクラスの分け隔てなく授業をするのは、戦闘スタイルによる相性の向き不向きにどう対策するかを学ぶ意図もあるだろうな。きっと苦手な相手にも有利な展開に持っていく方法はある」
コーザは訓練用の防具に身を包み万全の守りを固める一方で、バルテス先生は一切防具を付けずに余裕を見せていた。
「では相手が降参するか、武器を取り上げれば勝利です。多少の怪我は仕方ありませんが、命に関わる攻撃はしないように。そこのあなた、開始の合図をお願いします」
たまたま先生と目があったアーサーが指名される。
「はい!」
アーサーは嬉しそうに返事をすると淡々と開始の合図を行なった。
「武神ギリテウスの名の下に、これより模擬戦を開始する。両者互いに、礼」
二人とも深くお辞儀をする。リオンは格式張ったこういう作法を知らなかったので、自分が指名されなくてよかったと思った。
「武器を構えて...はじめ!」
先手を取ったのはコーザだった。二人の間にある距離は20mと言ったところか。走って間合いを詰めようとすれば直ぐに詰められる距離だ。
コーザは真っ直ぐにバルテスの方へ走った。
バルテスはまだ攻撃をしようとしない。
コーザは警戒しつつもその距離を一気に詰めていた。バルテスとの距離は5m。もうコーザの斧の攻撃範囲内だった。
バルテスは開始と同時に素早く距離を詰めてきたコーザに感心していた。
「わずか数秒の一瞬の間にもう懐に入ろうとする瞬発力、なかなかの才能ね」
バルテスはようやく動き出し、右手で構えていた杖を前に突き出し攻撃の体制を取る。
(もう遅い!いけるぞ)
コーザは出せる力を全て込めた一撃をバルテスの首にめがけて放った。
その刹那、バルテスは左手を腰に回し、白いローブの中から何かを取り出した。
ゴツ。
木製の斧がぶつかる鈍い音が教室に響く。
コーザは斧が打撃を食われる確かな手応えを感じていた。
しかし、次の瞬間後方へと大きく弾かれ飛んで行ったのはコーザの手にしていた斧だった。
一瞬の出来事に何が起きたか分からなかった生徒たちであったが、バルテスの左手にはコーザが使っていたものと同じ木製の斧が握られていた。
「私が魔法使いだからと油断していたのでしょう。右手に持っている武器は確かに杖です。しかし、左手に今持っている武器はあなたと同じ戦士の武器ですよ」
コーザは体勢を崩され、まだ痺れが残る手を抑えながらバルテスを睨みつけていた。
「実戦ならここであなたは死んでいます。敵が魔法使いだからといって近接戦闘の術が未熟だとも限りません。今後は相手を見かけで判断せず、持っている武器や攻撃手段が完璧に分かっていないときは、もう少し慎重に攻撃をした方が良いでしょう」
「あの一瞬で持っていた斧を構えて俺の攻撃を弾いたっていうのかよ」
「攻撃をする前の振りの動作がまだ遅いです。あれでは防御の隙を与えてしまうでしょう。ですが、開始と同時に敵との距離を詰めるあのスピードは非常に素晴らしかったです。今後の鍛錬次第ではいい戦士になれるでしょうね」
バルテスはそういうと生徒たちの方へ振り返り説明を続けた。
「彼の攻撃は少し強すぎたのでみなさんはもう少し威力を抑えた攻撃を行ってください。軽い怪我であれば私がその場で治癒の魔法を使用するので挙手しなさい。それではペアを組んで授業開始です」
リオンは隣にいるアーサーに声をかけようとすると、アーサーはまだ興奮していた。
「リオン!やっぱり先生は凄いよ!魔法じゃなくて斧でも戦えちゃうなんてさ」
「やはり、ある程度色々な戦闘スタイルの技術は満遍なく必要見たいだな。アーサー、この授業は俺と組んでくれないか...って聞いてるかおい」
アーサーは目を輝かせながらバルテスを見ていた。
リオンは暗闇の中から誰かに呼ばれていた。
「父さん...?」
また今日も鉱山仕事の1日が始まる。
リオンにとって変わりのない、いつもと同じ1日がやってくる。
「なに寝ぼけてんのリオン!早く起きないと授業に遅刻しちゃうぞー!」
リオンは飛び起きた。
「授業...?」
「いつまで寝ぼけてるんだい。お寝坊さんのリオン君」
リオンに声をかけていたのはアーサーだった。アーサーは笑いながら身支度をしている。
(夢か...。)
リオンがこの士官学校に入学して早くも二週間が過ぎようとしていた。
入学前に偶然にも知り合ったアーサーとは寮が同室で、二人は自然と打ち解け合っていた。
「なんの夢を見てたの?少し苦しそうだったよ」
「自分が幼い頃の夢を見ていたんだ。街道を永遠に歩き続けた時の夢さ」
「どーりで辛そうだったわけだね。納得」
アーサーはまだ半分寝ぼけているリオンを見て笑っている。
「早く身支度を整えた方がいいよリオン。今日は待ちに待った実技の授業だよ!戦闘を想定した実践的な授業は初めてだよね。座学ばっかりで飽き飽きしていたんだ」
「毎朝助かるよアーサー。俺はどうしても朝が苦手でね」
リオンとアーサーは用意を済ませると、急いで教室へと向かった。
♢♢♢♢♢
教室では生徒が慌ただしく教師を待っていた。みんな今日の実践授業が待ち遠しくて仕方なかったのだ。
この学校では、魔道士の学級・騎士の学級・聖職者の学級・戦士の学級の4つにクラスが分かれているが、共通した授業も多い。
寮なども学級関係なくバラバラなため、学級が関係してくるのは高度な専門知識を学ぶ専門科目の授業時や、最終試験の内容などが主である。
クラスが違う生徒同士で学ぶことで、より幅の広い知識と戦闘経験を積ませるのが目的である。
授業の開始を待っていると、ドアを開ける音と共に、入学式で新入生を誘導していた老齢の女性教師が部屋に入ってきた。
「皆さんご機嫌よう。私は戦闘訓練の授業を担当するミランダ・バルテスです。お会いするのは入学式以来ですね」
生徒たちは意表を突かれた。
戦闘訓練の授業はもっと現役の戦士のような武闘派教員が担当すると皆思っていたのだ。
「おいおい、あんな歳で戦闘訓練なんてできんのかよ」
ある生徒が小声で野次った。
「コーザ・ルテイリア。確か父親はこの国で皇帝陛下に仕えてる重臣でしたね。そんな立派なお父さまを持つあなたが、小さな声でコソコソと陰口なんてよろしくて?言いたいことはハッキリとおっしゃいなさい」
まさに地獄耳である。注意を受けた生徒はバツの悪そうな顔をしていたが、親の話をされた以上引き下がれなかったのであろう。
コーザと呼ばれた生徒は、バルテス先生の前に出てきて今度は大きな声ではっきりと言った。
「バルテス先生のような高齢の教員に、実戦訓練の授業ができるとは思えないと、そう言いました」
「よろしい。では最初の戦闘訓練のお相手はコーザ、あなたにお願いしましょう。私と戦ってみなさんへのお手本となってください」
「先生とですか!?」
「当たり前でしょう戦闘訓練の授業なのですから。これから皆さんには2人1組でペアを組んで技の掛け合いをして頂きます。その見本をするのに私のパートナーが必要だったので助かりますよコーザ」
バルテス先生はそう言いながら笑うと、コーザと対面に向き合った。
「あなたは確か戦士の学級でしたね?」
「はい、先生」
コーザは木製の斧を構えながら答えた。
「戦闘の経験はないでしょうからアドバイスを差し上げます。私は魔法を主な攻撃手段として用います。あなたは遠距離の戦闘になると不利なので、私の攻撃に注意をしながら出来るだけ間合いを詰めることに集中しなさい」
コーザは理解していた。相手の懐に入り込めさえすればこちらのものだと。
(高齢とはいえ熟練の魔女だ。一つでも魔法にかかればそこで俺の負けが決まっちまうが、近距離でこの斧を叩き込むことさえできれば勝てる)
コーザは緊張しながらも、冷静になるよう努めていた。
リオンとアーサーはワクワクしながら観戦していた。
「リオン、やっと模擬戦だね!この試合どうなると思う?」
リオンは少し考えた後に答えた。
「どうもこうも、先生がまず負けるはずがない。きっとコーザとかいったあいつが、間合いを詰める間も無く吹っ飛ばされて終わりだろう」
「やっぱりそうかなー。僕ら騎士を目指す人間にもやっぱり魔法は脅威だからね。近づくことさえできれば何とかなるけど、遠くから攻撃されたら防戦一方だよ」
「この学校がクラスの分け隔てなく授業をするのは、戦闘スタイルによる相性の向き不向きにどう対策するかを学ぶ意図もあるだろうな。きっと苦手な相手にも有利な展開に持っていく方法はある」
コーザは訓練用の防具に身を包み万全の守りを固める一方で、バルテス先生は一切防具を付けずに余裕を見せていた。
「では相手が降参するか、武器を取り上げれば勝利です。多少の怪我は仕方ありませんが、命に関わる攻撃はしないように。そこのあなた、開始の合図をお願いします」
たまたま先生と目があったアーサーが指名される。
「はい!」
アーサーは嬉しそうに返事をすると淡々と開始の合図を行なった。
「武神ギリテウスの名の下に、これより模擬戦を開始する。両者互いに、礼」
二人とも深くお辞儀をする。リオンは格式張ったこういう作法を知らなかったので、自分が指名されなくてよかったと思った。
「武器を構えて...はじめ!」
先手を取ったのはコーザだった。二人の間にある距離は20mと言ったところか。走って間合いを詰めようとすれば直ぐに詰められる距離だ。
コーザは真っ直ぐにバルテスの方へ走った。
バルテスはまだ攻撃をしようとしない。
コーザは警戒しつつもその距離を一気に詰めていた。バルテスとの距離は5m。もうコーザの斧の攻撃範囲内だった。
バルテスは開始と同時に素早く距離を詰めてきたコーザに感心していた。
「わずか数秒の一瞬の間にもう懐に入ろうとする瞬発力、なかなかの才能ね」
バルテスはようやく動き出し、右手で構えていた杖を前に突き出し攻撃の体制を取る。
(もう遅い!いけるぞ)
コーザは出せる力を全て込めた一撃をバルテスの首にめがけて放った。
その刹那、バルテスは左手を腰に回し、白いローブの中から何かを取り出した。
ゴツ。
木製の斧がぶつかる鈍い音が教室に響く。
コーザは斧が打撃を食われる確かな手応えを感じていた。
しかし、次の瞬間後方へと大きく弾かれ飛んで行ったのはコーザの手にしていた斧だった。
一瞬の出来事に何が起きたか分からなかった生徒たちであったが、バルテスの左手にはコーザが使っていたものと同じ木製の斧が握られていた。
「私が魔法使いだからと油断していたのでしょう。右手に持っている武器は確かに杖です。しかし、左手に今持っている武器はあなたと同じ戦士の武器ですよ」
コーザは体勢を崩され、まだ痺れが残る手を抑えながらバルテスを睨みつけていた。
「実戦ならここであなたは死んでいます。敵が魔法使いだからといって近接戦闘の術が未熟だとも限りません。今後は相手を見かけで判断せず、持っている武器や攻撃手段が完璧に分かっていないときは、もう少し慎重に攻撃をした方が良いでしょう」
「あの一瞬で持っていた斧を構えて俺の攻撃を弾いたっていうのかよ」
「攻撃をする前の振りの動作がまだ遅いです。あれでは防御の隙を与えてしまうでしょう。ですが、開始と同時に敵との距離を詰めるあのスピードは非常に素晴らしかったです。今後の鍛錬次第ではいい戦士になれるでしょうね」
バルテスはそういうと生徒たちの方へ振り返り説明を続けた。
「彼の攻撃は少し強すぎたのでみなさんはもう少し威力を抑えた攻撃を行ってください。軽い怪我であれば私がその場で治癒の魔法を使用するので挙手しなさい。それではペアを組んで授業開始です」
リオンは隣にいるアーサーに声をかけようとすると、アーサーはまだ興奮していた。
「リオン!やっぱり先生は凄いよ!魔法じゃなくて斧でも戦えちゃうなんてさ」
「やはり、ある程度色々な戦闘スタイルの技術は満遍なく必要見たいだな。アーサー、この授業は俺と組んでくれないか...って聞いてるかおい」
アーサーは目を輝かせながらバルテスを見ていた。
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