夏の風が凪いだ時

しうみぃ

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ある夏の日の夜
心地良い夜風で風鈴が鳴る。
その音に耳を傾けながら縁側で微睡んでいるとふと風が凪いで全ての音が止んだ。
ぴくりと瞼を震わせて目を開けると、そこは知らない屋敷だった。

ある夏の日の夜
俺はある神によって運命が回り出した。
吉と出るか凶と出るか俺にはまだ分からない
ただ一つ分かることといえば…
俺はその神に求婚されている。


ーーーーーーーー


目が覚めるとそこはどこかの広い屋敷のようだった。
神楽凪斗かぐらなぎとは縁側でのんびりしていたはずだ。
だが何故か布団の上に横たわっている。
鈍い頭痛がして眉を寄せ、ゆっくりと起き上がる。

「起きたか!!」

!?!?!?
突然どこからともなく声が聞こえて全身がびくりと跳ねた。一体どこから…!?
するとボンッと煙が宙に弾けたと思えば男が隣に降ってきた…
待て。頭が追いつかない。寝起きの頭には理解不能だった。
いや起きていても理解不能だったと思うが…

その男は藤色の目を細め、形の整った唇でふにゃりと笑い頬を薄く桃色に染めていた。

何だコイツ…

髪は長くプラチナブロンド…?で頭には鋼色の角が二本生えていて無駄にイケメンだった。
そこじゃない!!角が生えている…!!?

「お、お前鬼か!!俺を食べる気か!?」

「失礼な!我は鬼神だ!」

「鬼神…?」

そう言えばじいちゃんが言っていた気がする。
うちの先祖が代々守っているのは鬼神様の祠だと。
俺の家は古くからある神社で、それなりに大きいしパワースポットとしても有名だ。
昔々遠い昔には鎮魂巫女という巫女が鬼神に仕えて死界の邪気を祓っていたと。
でもそれは二百年も前の事で、最後の鎮魂巫女が最初の子どもを死産してしまってからぱったり産まれなくなってしまったと言う。
俺の家系は最後から前の鎮魂巫女の子孫…らしい。

詳しい事はよく知らない。
なんせ数百年も昔の事だ。家の蔵を探さなければその資料を読むことができないし、まず家系図を見てもさっぱりだろう。

にしても何でその鬼神様が俺の目の前に…?

「我の名は丹利魏たんりぎ。西の死界を守護する鬼神だ。鎮魂巫女の気配がして呼び出したのだが…」

「、、、?」
何故か鬼神様はじっと俺を見つめて口を閉ざした。謎の間に焦れていると

「お主を嫁に欲しい」

「は?」

思わず聞き返してしまった。
百歩譲って鎮魂巫女?やらの気配を俺から感じて呼び出したまでは頭の悪い俺でも理解できた。
だけど嫁…?俺はれっきとした男だ。
わりと身長180はあるし、体格だって一般の男子高校生よりは良い方だった。
その俺がまさか嫁…?にわかには信じられなかった。

「あの俺…付いてますけど」

「付いているな。」

「いや、男なんですけど…」

「それがどうした?」

何でだ!!!!
コイツは話が通じないのか?
いや確かにイケメンだし俺よりもガタイが良い。身長も多分2メートルくらいありそうだった。
なんつー迫力だよ。その迫力の塊みたいな男が嫁などと発言してきたので俺はもう完全に引いた。
なんなら鳥肌が立って寒気がした。

「いや普通に男を嫁にとるって頭どこかにぶつけました…?」

「何を言っておる。鎮魂巫女とは我にその身を捧げ邪気を祓い現世うつしよを護る重要な任ぞ。そして鎮魂巫女は鬼神の嫁となるのがならわしなのだ。」

「はぁ、、、」

「そして次の鎮魂巫女を宿す。」

え、、、??俺宿せないよな??
男って言ったよな?!本当にこの鬼神サマは何言ってんだ?

「俺は女じゃないので子供なんて宿せないんですが」

「問題ない。我が子を産める身体に仕上げよう」

「はい??」

トンデモ理論来たなおい…なんだ?神ならなんでもアリなのか?子供を産める身体に仕上げるってなんだ?恐ろしすぎるだろ、、!!!
子宮が出来るのか?そんなのアリかよ、、、!

「なに、鎮魂巫女は胎内に宿るのでは無い。我が玉をそなたの胎内に埋め込み、そこに神気を注ぎ込むのだ。」

玉…?
その言葉に反応して身体が少し強張る。
そう言えば俺が産まれてきたときに飴色の玉を手に握っていたと親から言われたが、何か関係しているのだろうか…

「鎮魂巫女の器となる者は必ず玉の芯にある光玉を手に握って産まれるのだ。心当たりがあるだろう?」

「確かに俺は…玉をもって産まれたけど…」

「そういう事だ!」

鬼神サマは目を輝かせてウンウン嬉しそうにと頷いている。
いや俺は嬉しくねぇ~~~!!

「凪斗は好きなものがあるか?呼び出しに応えた褒美として叶えてやろう!」

「いや勝手に呼び出されただけて俺なにもしてないんですけど、、?!強いて言うなら女の子が好きですね!」

「女子か!なら安心だな。お主を抱いて女子にしよう!どうだ?素晴らしいだろう?」

「アァァァァァア!!!!」

俺の叫びはおそらく屋敷中に響いただろう。
もう発狂するしか無かった。そして俺は本当に発狂した。これは手が付けられない奴だと確信して項垂れる。

「そんなに嬉しいか!呼び出した甲斐があると言うものよ」

なんなんだコイツはポジティブシンキング野郎なのか?話が通じねえもう勘弁してくれ……
そこで俺の意識はゆっくりと闇の底に沈んだ。
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