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アンさん

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妖怪×妖怪 大天狗×オニ ⑭

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「あつい、あついっ…あ、ああ゙、あー……」


「大丈夫だ。アオは耐性が有るだろう?」


「あっ、あ゙ー……あああ゙、あづっ、あっ…」


身悶えるあつさは、熱さか暑さか。


正常位で手を握られ押し倒されるこの制限された可動域内で、僕は何も出来ず全てを受け入れていた。


妖力が多く含まれる体液ほど熱いものは無い。


色欲を孕んだこの行為に優る暑いものは無い。


二つの耐えきれないあつさに、僕は逃げようともがいては押し付けられ身体が勝手に跳ねる。


「愛してる、アオ。大丈夫だ。大丈夫」


「アゼツ、アゼッ……あ、イッ、っあ…」


揺れる腰にアゼツは笑みを深め何度も口付けを行う。


何が大丈夫だ。


何があったんだ。


何で、こんなにも、アゼツないんだ。


「アゼツ、っ、どう、した……なに、が…あっ、あ」


「何が、とは」


「アゼツ、らしく…ない、って……は、ぁぁ」


「ああ、成程……悪いと、思っていたのだ」


そう言ってアゼツは中に埋まった堅物を抜き僕を抱きしめて寝転がった。


「は?」


未だイッていないくせに、何をしているんだ?


と云うか、こんな中途半端な状態で止めるなんて……熱でもあるのか?


「天狗の常識を、押し付けてしまった。今までずっと…アオが何度も俺の前から消える度、俺はずっとアオを責め続けてきた」


痛い所を突かれたと思ったが、何か違う気が?


「どうしたんだ?気にしなくていい。僕が弱い、それが原因だ。アゼツは何も悪くない」


「そうやって、アオはアオを卑下して俺を上げる。悪い癖だ」


「アゼツ、妖は強者が正しい。天狗の在り方が妖の在り方と言っても相違無い。どうしたんだ、アゼツ。何があった?」


見える黄昏色の瞳は、僕を見つめるだけで既に欲を孕んでいない。


「俺はアオを失いたくない。だというのに、何度も同じ過ちを繰り返して、視点を変えられなかった俺を、アオはまだ庇うのか?」


「アゼツ、どうした?本当に、何があった?」


アゼツがアゼツを責める必要等何も無いのに。


「アオ。失いたく、ないんだ。ずっと、永遠に、共に在りたい。もう、間違いたくない」


「アゼツ。何をそんなに…アゼツ、らしく……らしく?アゼツ、もしかして…悩んでいるのか?」


「アオの事なら、何でも知っておきたいのに……アオに負担等、かけたくない、のに」


「アゼツ、僕は頼りないか?頼られない程僕は信用が無いか?」


「そんな事ない」


「アゼツ、アゼツ。僕は、アゼツと共に在ると、その言葉に嘘は孕ませていない」


「……?」


「アゼツ。オニの常識を知る必要は無い。僕も天狗の常識を全て理解していない。何も、無理をしなくていい」


「その甘言に俺は乗せられて何度もアオを失いかけた」


「アゼツッ、甘言では無い。事実だ」


「そう言ってアオはいつも俺を立てようとする」


「どうしたんだ?何も責める事など無いだろう?」


「そうやって、アオは……俺は、ずっと苦労をかけてきた」


「何が、何があったんだ?アゼツ、僕に言えない事か?僕じゃ「アオ」」


「アオ。今暫く、俺を許してくれ」


本当に何があったんだ?


僕が寝ている間に……何かあったのか?






「ばあや、アゼツに何があった?」


「何が、とは」


「あのアゼツが、何を悩んでいる?」


「ばあやは何も「ばあや」はい」


「アゼツが、何故今更オニの在り方を知ろうとする?何故天狗の最上位種が、たかが一種族のオニに肩入れをする?」


「アオ殿」


「僕が、オニだからか?僕に合わせようなんて、考えていないよな?アゼツは、大天狗だぞ?」


「アオ殿も最上位種でございます」


「たかが群れる程度の存在だ。裁する事はあっても、率いる事は無い、そんな存在だぞ」


「アゼツ様が選ばれた唯一の存在であります」


「今は、だ。これから何ぞ、誰も知り得はしない。例えサトリであろうとだ」


「…………」


「何故、何故だ?僕が寝ている間に何があった?長い事寝ていたから、怒っている、という感じでもなかった。冗談を言えるほど、余裕があったはずだ」


「アオ殿」


「あんなにも何かを考えアゼツ自身を責める何かが、あったなら、教えてくれたら…いや、僕じゃ何も出来ないかもしれないが、少しぐらい……」


「アオ殿。ばあやも謝る必要がありそうです」


「は?天狗のばあやが何も謝ることなど無い。妖の「アオ殿」なんだ」


「アオ殿。どうか、ご自身を卑下しないでください。貴方様は大天狗の番であります」


「それがどうした。僕はオニだ。大天狗はアゼツであり、僕は付属品だ」


「その考えを、天狗族は理解しております。ですが、オニ族には無いものでありましょう?」


「嫁ぐ、とはこの事だ。同等の立場であろうが、主立つのは僕じゃない。何をそんな事に気を向ける必要がある」


「アオ殿。我らも変わらねばならぬ時が来たのです」


「今か?今こんな時勢で変える事か?天狗族の好きにすればいいが、あそこまで何かを考えるアゼツなんて、初めて見たぞ。まぁ、僕も長い時を一緒に暮らしている訳じゃないし、知り得ない事の方が多いけど」


「アオ殿。長き目でお待ち下さい。アゼツ様は必ずや結果を出しますから」


「……何だか、置いてけぼりのようだ。まぁ、いい。天気がいい以上、僕は待つ事にする」






「僕とアゼツの力量差があれば、あと四人は嫁を探せる。アゼツの仕事が終わるのが先か、僕の嫁候補産出が先か……楽しそうだ。そう思うだろ?ばあや」


「アオ殿」


「何だ。文句か?言っておくが、僕はアゼツに少なくとも三人嫁を宛てたい。子沢山の家庭はきっと楽しいぞ」


「オニ族は子が好きでしたね」


「ああ。それに僕は元は鬼族だからな。子供の肉も好きだ。柔らかくて臭みが無い。生きていれば可愛がるが、死ねば食う。鬼族の子は死んでも残るが、天狗族の子はどうなるんだ?場合によっては、生きる妖を探さないとな……」


「食べ、られるのですか」


「食葬と言ってな、食べて弔うんだ。肉を好む鬼族の欲を孕むこの弔い、最高だろう?」


笑う僕に、ばあやは少し視線を逸らした。


「アゼツの腕を食ったが中々に美味かった。生肉は正直嫌いだが、高位種以上は極上だな。兄上や兄様は、僕が肉を生で食うと怒っていたけど」


「オニ族には無い文化だからですか?」


「腹を下すからだ。僕は鬼の時あまり食事をとっていなくてな…頑丈な筈なのに、腹だけは弱くて生食はダメだといつも言われていた。今はオニになったから、そういう事はもう無いけど、名残か、時折食い物には気を付けるよう言われる」


「……それは、そうでしたか」






「アオッ」


「何ぞ?」


「嫁を宛てると聞いたが」


「ああ、アゼツにな」


「要らぬと言った」


「知らぬ」


「アオ」


「アゼツは我一人で良いかも知れぬがな、我一人では荷が重いと常々言うておろうが」


「アオ、俺はアオ以外を受け入れるつもりはない」


「アゼツ。五月蝿いぞ」


「なっ」


「我を放っておいて、何やら企んでおるアゼツの意見等聞きはせん。我が相応しい相手を見繕うておるのだ、待っておれ」


「その手の中にある紙束は何だ」


「嫁候補。それ以外に何があると?安心せよアゼツ。我が一番アゼツをわこうておる、何も悩む必要など無い」


「そのような物…切り裂いてくれる」


「触るでない。我が集めた優秀な苗床よめこうほぞ?大人しくそこに居れ」


「アオ、何故俺の言葉を聞いてくれないのだ」


「アゼツが言うたのであろう?我の言葉は今聞きとうない、と。ならば、我も同じ様にして何が悪い?」


「アオ、悪かった」


「アゼツがアゼツの考えを優先し我の何もかもを否定している以上、我は我の思うままに行動する。天狗族の常識は知らなくともいいのだろう?オニの我は何も気にしなくともいいのであろう?」


「……アオ……」


「極端なのだ、お主達天狗族は。妥協を知らず、それでいて共存をしようなど……今まで通りが一番性に合っていただろう?性急にしようとするから失敗すると、なぜ気付かん?」




「勝手に好きにするといい。我も好きにする。一つ言うておく。我にも限界があるぞ。今までは当然であった事を変えようとするのであれば、必ずしも他も変わる。周りを見よ。何もかも思い通りに進むのは、圧倒的強者である天狗だから故。我は最後まで見届ける為に言葉挟まん」









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