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アンさん

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人間×人間 将軍×元敵軍人 ④

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戦時中の孤児に名前は無い。


本名というのは親が付けた名前を指すが故に、偽名は持てど本名を持たない冒険者は少なくない。


戦争で親を亡くした子供ならまだ名前を持っていることはあるが、捨てられ孤児になった子供の大半は新生児で名前を貰えない。


貰っていたところで、自分が認知しなければ名として成立しない。


俺も例に漏れず本名を持たないが、偽名は四つ程持ち使い分けている。


……偽名は別に、悪い物では無いはずだ。


リウロ・ジュガナー、アージェン・ピリック、トヴィ、ソラウィス。


どれも俺の名前であり偽名だ。


拘りは無く、教会で適当につけてもらった。


所詮名前など個体を識別する為の物で、本名などさして重要では無い。


「ソラ」


でも、何故か…何故か、このソラウィスの名前は、大事に思ってしまう。


それはきっと……。


「ソラ、寝ているのか?」


「なんだ」


「起きていたか。体の調子はどうだ?」


「全くもって何一つ大丈夫では無い。指一本動かないのだが」


「ああ、ソラはすぐ居なくなるからな。動けない様にしておいた。何、体調が良くなるまでの間だけだ」


「……チッ……腹が減った、喉が渇いた、風呂に入りたい」


「分かった。すぐに準備しよう」


何が体調が良くなれば、だ。


コイツ、頭イカれてんのか。


紋様の効果の意味知っていてこれか?


冗談だろう?






グギギと自分より大きく硬いシーヴィの関節を全力で締める。


「いだだだだ!!痛てぇ!離せ!この粗チン野郎が!!」


「俺のは慎ましやかなだけだわ!この凶器野郎!」


「はぁ?!ちいせぇんだよ!お前のは!」


「煩せぇんだよ!巨根が!」


「認めろよ!事実だろうが!」


「俺の体でお前みたいなの付いてたら恐怖だろうが!ただでさえ俺は背が伸び悩んでいるのに!他の事にまで気が回るかよ!」


「ばーか!ばーっだぁぁぁ!!」


「煩いのはこの口か?!縫い付けてやろうか!無駄な事しか喋れねぇならよぉ!」


「いでで!いっだぁぁぁ!はなせぇぇ!」


「お前の!所為で!こっちは!大変だったんだぞ!この粗大ゴミがぁぁ!」


「折れる!折れる!折れる!」


「折れたら治してやるよ!タダでな!感謝しやがれ!」


「折らなかったら治さなくていいんだよ!いででで!」


「じゃぁ折れねぇ力で締めててやるよ!」


「いらねぇぇー!!」


「はぁ、元気ですね、2人とも。仲がいいのも困りものですね」


「どこをどう見たら仲が良く見えんだよ!この陰険メガネ野郎!」


「はぁ?!仲良しも仲良し、ニコイチだろうが!お前まさか反論出来る立場だと思ってねぇだろうな?!」


「出来るわ!バカが!ニコイチなんてキメェこ「おっと、手が滑った」いっでぇぇぇええ!」


「ざまぁみろ!この巨木野郎が!」


「てめぇぇぇ!!マジふざけんなや!」


ギャイギャイと騒がしい中に、ぽつりと聞こえた声に俺とシーヴィは衣を正し地面に座った。


「シーヴィ?あんまり煩いと、分かってるよね?それで?イチモツが、何だって?」


「ソラ、口を塞ぐぞ」


「いや、あの、その……何でも、無い、っす」


「…………~~っ…!!」


「おい!ソラウィス、てめぇも少しは…何面を押さえてんだ?」


「しっ、しーっ」


「ああ?何だって「シーヴィ?」ういっす」


「良い判断だ、ソラ」


公衆の面前で面を外されるぐらいなら静かにするに決まってるだろ!


コイツ紋様を共有した瞬間から俺の面外せるようになりやがって……。


そうじゃなければキスの一つや二つ気にもしないのに!


面を外すなんて……全裸で街を歩いているようなもんじゃないか!


絶対に嫌だぞ!


『面を外されたくなければ、大人しくするべきだぞシーヴィ』


『はぁ?いやまさかこんな外で』


『面を付ける風習が無い場所で育った奴にとって、どこで外そうが関係ねぇんだよ』


『…は、あ?…黙るのが吉だ』


念話で話し合い、アイギスの目を見た俺とシーヴィは面を押え口を閉じた。


「よく分かってるじゃないか。さて、ソラウィス?」


「何」


「俺は、生きててくれて嬉しく思うよ。例え、ソラウィスの死に場を奪ってしまったとして…後悔はしていない」


「先が見通せないほど、俺は馬鹿じゃない」


「気付いてた、かな」


「アイギスがシーヴィと共鳴・・した時に、一本道だった未来に分かれ道ができた。未来視は絶対だ。俺自身に出来ていてもおかしくない」


「共鳴?共有ではなく?」


「……共鳴だ。アイギスと俺はな。ソラウィスは現時点で共有状態だ」


「どういう意味?聞いてないけど」


「はあ?だか「余計なことは言うな!この!この!」いっでぇぇぇ!!お前が先に言ったんだろうが!」


「良いんだよ!細かく言わなくて!」


「はぁあ?!そんな差ねぇんだから良いじゃねぇか!」


【体の関係持てって?!お前アイギスとの関係こんな場所でぶっちゃけようなんて趣味悪ぃぞ!】


【誰が!……ん?いや、そうなるのか?】


【しかも受け身だって公言するようなもんだぞ!俺は嫌だ!気持ち的に!】


【そうじゃねぇか!あぶねぇ!言うとこだった!】


「シーヴィ?ソラウィス?」


【じゃぁなんて言うんだよ!あの顔見ろ…アイギス切れる寸前だぞ】


【無理に決まってんだろ!】


「だーかーらー…ああ、もう時間の問題だろ!諦めろよ!」


「嫌だ!時間が解決すんのは分かってても口にしたくない!面を外す次に嫌だ!」


「俺も嫌だ!アイギス今回は諦めてくれ。命に関わらねぇし、な?」


「ふぅん……隠し事するんだ?」


「う……分かった、夜。夜に言う。ソラウィスもいいよな?」


【公衆の面前じゃ無ければいい】


「ソラ、私には?」


「ぐ…うう、う……時期が来たら言う」


「今」


「今?!今口にさせたら俺は今日中にこの国出るからな!」


「そこまで?!」








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