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人間×森人 ①
しおりを挟む人間 「ラティス」 × 森人 「ライ」
誰かに、こんなにも愛された時が今まであっただろうか。
転生魔術を使う前だって、一途に愛された時など無かった。
俺が…俺だけが、想い続けるだけの関係ならあったけれど…今の状況を超える感情の昂りは無かった筈だ。
「ライ、大丈夫か?」
行為の最中にこうやって声を掛けて貰える事だって無かった。
ただただ、そう、ただただ終わりを待つだけの痛みを伴う行為だったから。
それが、今はどうだろう。
縮こまり震えていただけの時間だったのに、体が勝手に跳ね逃げ出したいと思う程の快楽に晒される時間になってしまっている。
萎えるから声を出すなと言われていたのに、今は口に指を入れられ唇を噛み締めないようにされている。
顔を見せるなと言われていたから抱き込んだ枕や布に顔を押し付けていたのに、今は上を向かされ何度も口へとキスが降る。
あいつとは何もかもが違う行為に、頭の中はこんがらがった。
あいつと比べるなんて非常識なのだろう。
でも、俺の基準は、あいつだったから。
俺だけを見ていて欲しくて身体を使っていた浅ましく卑しい前世とは違うこの関係は、正しく俺が望んでいた「恋人」や「夫婦」の在り方だ。
「あ、ぅん、ん…だ、じょぶ、じゃ、な」
抱き込まれ熱と匂いでおかしくなりそうな頭ではもう何をどうすれば相手が喜ぶのかを考える余裕が無い。
「ライ」
名前を呼ばれながら行われる行為に、これ程恥ずかしいと感じるものなのだなと初めて知った。
前世とは絶対的に違う、望んだものが叶えられる幸せな時間の筈なのに。
口から出るのは否定的な言葉ばかりだ。
でも、それをラティスは笑っていなしていく。
彼曰く、これが正しい反応なんだと。
分かっているからこそ、受け止められるのだと言っていた。
「気持ち良いな、ライ」
聞こえる低音は、俺の事を気遣ういつもと同じ優しい声色で。
目に溜まった涙が滴り落ちていく。
こんなに幸せな夢ならば、覚めないでほしい。
「は、あぁっ…あ、おく、あたっ…ぁて、る」
「ライ、ライ」
優しく頭を撫でてくれる手も、何度も俺を呼んでくれる声も、笑いながらも欲を孕むその目も、全部…全部、俺のモノだ。
「あ、ぁふ、おれ、の…ぜ、ぶ…おれの、おれ、だ…けの……ら、てぃ」
手でラティスの頭を、足でラティスの身体を抱き込み旋毛に口付ける。
「ああ、全てお前の物だよ、ライ」
胸元で聞こえる声に、縋りつくように強く抱き締める。
頭の中で響く醜い欲望。
渡さない。
諦めたりしない。
俺は、もう。
もう、あの日の様な間違いは犯さない。
だから、どうか。
今、だけは_______________。
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