if物語

アンさん

文字の大きさ
上 下
37 / 74

人間×森人 ①

しおりを挟む


人間   「ラティス」   ×   森人   「ライ」



誰かに、こんなにも愛された時が今まであっただろうか。


転生魔術を使う前だって、一途に愛された時など無かった。


俺が…俺だけが、想い続けるだけの関係ならあったけれど…今の状況を超える感情の昂りは無かった筈だ。


「ライ、大丈夫か?」


行為の最中にこうやって声を掛けて貰える事だって無かった。


ただただ、そう、ただただ終わりを待つだけの痛みを伴う行為だったから。


それが、今はどうだろう。


縮こまり震えていただけの時間だったのに、体が勝手に跳ね逃げ出したいと思う程の快楽に晒される時間になってしまっている。


萎えるから声を出すなと言われていたのに、今は口に指を入れられ唇を噛み締めないようにされている。


顔を見せるなと言われていたから抱き込んだ枕や布に顔を押し付けていたのに、今は上を向かされ何度も口へとキスが降る。


あいつ・・・とは何もかもが違う行為に、頭の中はこんがらがった。


あいつと比べるなんて非常識なのだろう。


でも、俺の基準は、あいつだったから。


俺だけを見ていて欲しくて身体を使っていた浅ましく卑しい前世とは違うこの関係は、正しく俺が望んでいた「恋人」や「夫婦」の在り方だ。


「あ、ぅん、ん…だ、じょぶ、じゃ、な」


抱き込まれ熱と匂いでおかしくなりそうな頭ではもう何をどうすれば相手が喜ぶのかを考える余裕が無い。


「ライ」


名前を呼ばれながら行われる行為に、これ程恥ずかしいと感じるものなのだなと初めて知った。


前世とは絶対的に違う、望んだものが叶えられる幸せな時間の筈なのに。


口から出るのは否定的な言葉ばかりだ。


でも、それをラティスは笑っていなしていく。


彼曰く、これが正しい反応なんだと。


分かって・・・・いるからこそ、受け止められるのだと言っていた。


「気持ち良いな、ライ」


聞こえる低音は、俺の事を気遣ういつもと同じ優しい声色で。


目に溜まった涙が滴り落ちていく。


こんなに幸せな夢ならば、覚めないでほしい。


「は、あぁっ…あ、おく、あたっ…ぁて、る」


「ライ、ライ」


優しく頭を撫でてくれる手も、何度も俺を呼んでくれる声も、笑いながらも欲を孕むその目も、全部…全部、俺のモノだ。


「あ、ぁふ、おれ、の…ぜ、ぶ…おれの、おれ、だ…けの……ら、てぃ」


手でラティスの頭を、足でラティスの身体を抱き込み旋毛に口付ける。


「ああ、全てお前の物だよ、ライ」


胸元で聞こえる声に、縋りつくように強く抱き締める。


頭の中で響く醜い欲望。


渡さない。


諦めたりしない。


俺は、もう。


もう、あの日の様な間違いは犯さない。


だから、どうか。


今、だけは_______________。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...