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アンさん

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妖怪×妖怪 大天狗×オニ ⑤

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「は、あぁ、あ」


この堅物を受け入れるのは、これで何度目だろうか。


滲み出る汗を拭いもせず、アゼツはいつもよりゆっくりとした抽挿を繰り返す。


普段の様な早く追い詰められるものではなく、ジワジワと攻め入ってくる快感に身体の表面を電気が走っているかのように感じる。


「はぁ、あ、あん、ん」


腰の辺りが痺れ、足の指が丸まる。


一体、何故、こんなにも肌を焼くような妖力を放ち僕を見下ろしているのだろう。


「な、にに、おこ、って、おる」


「何に、だと?昼間の事を忘れたか?」


昼間?


鬼に対して怒った事か?


手を振り払った事か?


「他の番を、認めるだと?」


「ははぁ、瑣末、事か」


天狗族は一夫多妻制だ、それが事実だろう。


アゼツの腹を右足で蹴り、動きを止めさせ少し身を起こす。


「のぉ、アゼツ。我はな、オニ族よ。故に我が選ぶ番は1人だけ、云わばアゼツのみ。だが、だがの」


オニは一夫一妻、互いのみしか受け入れられぬ身、それもまた事実だ。


堅物を抜き、アゼツの肩に手を置き押し倒す。


サラリと僕の長い髪が床に広がる。


「アゼツは大天狗。子を遺さねばならぬ身よ。多くの番を囲い、多くの子を産ませ、多くの者を導く者よ。我だけでは荷が重い」


アゼツの頬を撫ぜ、腹に腰掛ける。


「我はな、まだ弱い。故に、アゼツと共にあるには、程遠い者よ。それが今の関係に至ったは、誠に嬉しき事」


少し眉間に皺が寄ったアゼツの喉から胸元を撫でる。


「正直に申すとな、我は少しばかり悩んでおる。百年経てば、我も子を宿せるであろう。兄上のように、万全ではなく…母上のように子を遺し儚くなるやもしれんが」


ガリ、とアゼツの鎖骨を爪で引っ掻く。


「それが、番というモノと理解しておる。それでも、我はアゼツと共にありたい、と思う…故に子を産む事を考えねばならん。我は、我とアゼツの子を見たい、抱きたい、成長を見届けたい」


爪に付いた血を舐めとり目を瞑る。


「我はな、我は…これでも色々と、悩み抜いた故に言うておるのよ。だが、それも…アゼツには、不要であったな」


昔思い描いたのは…何だったのだろう。


「他の番は必要、これは例えアゼツであろうと変えられぬモノよ」


ギリギリと歯軋るアゼツは、間違いなくその事を分かっているのだろう。


「時間は有る。今は良くとも、先を考えねばならん」


「俺には不要だ。アオ以外は要らん。だが、そうだな」


起き上がり、僕を膝の上に乗せたアゼツは、少し眉を上げ口元を綻ばせた。


「もし、これ以上他の者をと言うならば、この地位を捨てアオと共にアオの里で暮らそうか」


「…ん?」


…地位を捨てる、と聞こえたのだが。


「要らぬモノを寄越されても迷惑だ。今も先もどうでも良い。アオ」


「む、何か」


嫌な予感がする。


「子など気にするな。アオさえ居れば良いのだ」


「だが」


「まぁ、聞け。アオが望むなら…今から子作りの練習でもするか」


「…うん?ん?待て待て待て」


練習、練習だと?


匂い付けだけで限界なのに、子作りの練習、だと?


「よしよし、これから沢山練習して、元気なややこを産めるようになろうな」


「ひ、必要ない、不要だと言うておる。触るでない、何を我のお尻に擦り付けておるのだ、離せ」




一晩中抱き潰したくせに、疲労の色を見せず仕事へと向かったアゼツに、床を1つ叩いた。


あやつ、何故あんなにも絶倫なのだ。


腰が立たぬなど、恥でしかないわ。


ああ、本当に…。


「これで子など…産めるものか」


握りこんでいたシーツを離し、上向きに寝転がる。


「子など…か。アゼツは…分かっておるのだろうか」


開けられた襖の向こうに見える空は晴天。


数拍空いた後、オニは立ち上がり鬼火と暁を残して、屋敷を去った。




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