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アンさん

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魔王の側近×猫型獣人? ②

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猫型獣人   「リク」  ≠   人間   「トオル」




『あーあ、マコトは捕まっちゃったかー』


森の向こう側で聞こえる、馴染みある声の絶叫。


山特有の平らでない坂道を走りながら、ポツリと言葉を落とす。


正直言って、さっさと捕まって沙汰を待つのが普通だろうが…。


そんな悠長な事言ってられない現実に、速度が上がる。


『死ぬ、かもなぁ。でも、マコトはもう大丈夫そうだし』


ぴょんぴょんと木の根を飛び越え、ある場所に向かって走り続ける。


『やれる所まで、やってみるかぁ』


遠くに見える、赤と登色の揺らめき。


その場所に向かって、俺は山を突っ切った。




ガァンッと扉を蹴り開け入ると、中に居た魔族たちはこちらを見て眉をひそめた。


「何者だ」


この部屋の中で、最も強い者が口を開き威圧を放つ。


「何、少しばかりお前に会いたくてな」


ニヤリと笑い、足を進める。


「…名を名乗れ」


部屋の真ん中で足を止め、強者の目を見る。


「俺の名前は、トオル。ただの人間だよ」


俺の周りが不死鳥の火で囲まれる。


ちりちりと肌を焼く様な痛さを無視して手をかざすと、風が吹き火が消えた。


驚いた魔族たちは部屋の隅へと移動し、俺と強者の近くには誰も居なくなった。


「何用だ」


「遊びに来た」


あの身体より弱く、力を出し切れないだろうが…まぁ、少しは森を焼く炎は止められるだろう。


距離を詰め、強者の顔面へと拳を振り下ろす。


焼けるような痛さを無視して何度か追撃をかけると、強い風に襲われた。


「おや、弾き飛ばされちゃったか」


火傷のように赤くなった拳を一瞥し、強者を見る。


「…っ、と」


目を見開き、こちらへ一瞬で距離を詰めた強者は、俺へと手を伸ばしてきたため、後方へ飛ぶ。


あの目、疑いだしたか。


流石に、マコトと魔王の逢瀬を隠し続けるのは難しい…か。


部屋に充満していた熱く感じる魔力が落ち着き出した。


「トオ、ル?トオル」


「何かな」


「リク、じゃない、のか?」


赤い瞳が、俺を見つめる。


「リク、ねぇ」


押さえつけていた魔力を解放し、羽織っていたローブを脱ぎ捨て腰に着けている双剣に手を置き、腰を落とす。


「遊ぼうや、不死鳥」


「っ、リク」


見た目が当てにならない事を知っている。


魔族が魔力で相手を認識している事も知っている。


ただ、番契約が肉体同士を結び付けるものだと思っていたから、知らなかったんだ。


魂の繋がりだなんて、馬鹿らしいと思っていたから。


でも、今なら。


「言っただろう?また、ここへ来ると」


そう言って双剣を抜き不死鳥へと斬りかかる。


「何故っ」


「俺の番は森を焼かないし、赤い目でもない!故にお前は、俺の番ではない。強き不死鳥と遊ぶのに、何故と問われても答えはないな!」


互いの魔力がぶつかり合い、部屋の中に暴風が渦巻く。


「リク」


「俺はトオル。リクでは無い」


不死鳥に物理的攻撃が効かないのは分かっていたから魔力を解放したが…流石にこの身体だと耐えるのが限界か。


相手の動きは目で追えるのに、身体が全く動かないからやっぱり双剣装備でよかった。


双剣の刃をそれぞれ片手掴んだ強者が能力を使い、見慣れた部屋へと俺ごと転移した。


「っ、は、何」


転移した時特有の酔った感覚に襲われ、双剣から手が離れ、床へと落ちそうな所を抱きとめられた。


「ぅあ」


片手で口を覆い、強者の腕から逃れる為に身体をよじる。


それを許さず、そのまま俺をベッドへと運び布団に押し付けられる。


「トオル、トオル」


見えた不死鳥の目は、いつも見ていた黄色に近い登色だった。



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