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魔王の側近×猫型獣人 ①
しおりを挟む側近 「ヴィジューラ」× 猫型獣人 「リク」
机を挟んでお茶を飲み、息をつく。
「それで、聞いても?」
早速と言わんばかりに口を開いたヴィジュに、少し笑みが漏れる。
「シンについて、出来る限り教えろ」
眉間に皺を寄せ、何とか理性を保っている魔王がこちらを向いて口を開いた。
「何が聞きたいの?」
「何故、あいつは消えた」
ヴィジュは頭を傾げ、ポチャリと紅茶に角砂糖を落とした。
「ん?」
「何故か、と聞いている」
少し目を伏せ、思考遮断を使って向こうからは思考が読めないようにしてから思案する。
消えた、ね。
まさか、俺より早く行ってしまうとは思わなかった。
実際は誤差だったけれど。
俺が伝えようとした瞬間に部屋に飛び込まれるとは思わず、少し叫んで攻撃してしまったのは申し訳ないと思うが、そんなに睨まなくてもいいと思う。
それに…消えた訳では無い。
元々、俺もアイツもこの世界の者では無いから、元に戻ったというのが正しい。
と言っても、分からないよな。
「まぁ、なるようになった、とだけ」
「意味が分からん」
「俺は、何も知らないよ」
クッキーを摘み、それをお茶で流し込む。
喉が痛い。
何度も伝えようとして、その度に呑み込んでしまったからだろうか。
…俺は、はやくアイツの元に行きたいのに…このままじゃ、伝えるにも、タイミングがな…。
「ほぉ?」
渦巻くようで突き刺さるような魔力を当てられ、少し眉間に皺が寄った。
「…シンは、居る。ここに、(リクも)居る。それが、全てだよ」
「アイツは俺の知ってるシンでは無い」
静観していたヴィジュがこちらを見て少し目を細めた。
「ねぇ、リク」
「何」
「リクも、ああなるのかな?」
気付いているのだろう。
今のシンに。
「どうだろうね」
カップを置き、窓枠へと移動し腰をかける。
「おい」
瞬きを1つ、吸い込んだ息を吐き出す。
「ふふ、うん、悲しいな」
窓から見える月は不運にも満月だ。
窓に手を当て、森を見下ろす。
「忘れられるのは、悲しい。でも、俺らにはどうしようもない」
2人に視線を向け、能力を全て解除する。
「リク?」
「…もし、もう一度、叶うのなら」
アイツの姿を思い浮かべ、知らずに握りこんでいた手を開き、ヴィジュの目を見つめる。
「俺は…俺らは、ここへ来るよ」
頭を傾げるヴィジュと、イライラとしている魔王が俺を見ている。
ヴィジュに近寄り、後ろから抱き締める。
思い浮かべるのは、あの日、この世界に来た日と、もう1つ。
「ヴィジュ、俺は、後悔したくなかった」
「うん?」
「アイツもそうだと思う」
「アイツ?」
手を伸ばし、俺の頭を撫で、自慢の毛並みの耳を触るヴィジュ。
「アイツも言っただろう?「ーー」だと。俺も、そう思う」
「…っ、お前!」
こちらに手を伸ばす魔王。
「俺と、出会ってくれてありがとう」
暗くなっていく視界と、最後の想い。
顔の見えない黒髪の子供2人が口を開いた。
『ありがとう、さようなら』
プツリ、と何かが切れた。
瞬間に赤く光った4つの目。
カップを投げ捨てた者と、もたれ掛かる身体を投げ飛ばした者は立ち上がった。
「「逃がさねぇ」」
絶対的強者は、地が揺れる程魔力を解き放った。
それでも見つからない相手に、更に魔力は膨れ上がる。
魔族の番が、どういうものなのか。
それを理解していなかった2人は、ここには居ない。
故に、この2人を宥める者も、止めれる者も居なかった。
→魔王×人間
→側近×人間
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