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獣人×獣人 狼×豹 ③
しおりを挟む今までなら、薬を飲めば耐えられた。
副作用として酷い腹痛と頭痛に襲われるけれど。
仕方がない、俺はΩだから。
いつか、誰かの子を宿すために嫁ぐことになっても、それが役目なのだと思っていた。
今はどうだろう?
あの家から解放され、愛してくれる家族がいる。
諦めていた人生を、変えてくれた最愛の人がいる。
Ωだから、と諦めたくない。
βだと言った最愛の人となら、過ごしていけると思った。
αなら、こんな面倒な俺じゃなくて他の誰かの所に行ってしまう。
Ωなら、ずっと2人では居られない。
β、そう、βの彼だから傍に居れたのに。
「俺ね、後天性のαなんだって」
その目はα特有の赤い目で…絶望に襲われた。
…行ってしまう…俺じゃない、誰かの所へ…。
「あ、ぅああ、ああ」
向かい合わせに抱かれたまま、後ろを弄られ声が漏れる。
ヒートの最中故に腸液は普段よりも分泌され、グチュグチュという水音が聞こえてくる。
触られてもいないのに緩く立ち上がっている性器からも液体が出ていて、まるで全身が濡れている様な感覚に襲われ干からびてしまいそうだ。
何が気に入らないのか、むぅはずっと俺の首輪を爪でかき何度も噛み付く。
「外して、これ、邪魔」
そんな声が聞こえ、ああ、そうか、カギ…と目線がベッド脇にある机に向かった。
「これ?」
手を伸ばしたむぅは、机の上に置かれた鍵を手に取った。
その問い掛けに頷き、息を吐き出す。
暑い、熱い、あつい。
薬を飲まないでヒートを過ごすのは初めてだ。
体が全部発熱しているみたいで、頭が茹だってしまったかのようで…手が震え視界が滲む。
息はずっと荒いし、心臓は破裂してしまうのではないかというぐらい強く脈動している。
外された首輪を床に捨てたむぅは、俺をうつ伏せにベッドに寝かせた。
「むぅ?」
「大丈夫、すぅ。俺にはすぅだけだから」
何が大丈夫か分からないけれど、むぅは笑っているから、多分、大丈夫…なんだろう。
グチリとまた後ろに指が入り、俺は近くにあった枕を抱き寄せしがみついた。
「あ、ああ、あ」
背中にむぅの唇が何度も寄せられる。
「ふ、ぐぅ、う」
指が増え、行為は激しくなっていく。
何度も項にキスをされ、跡が残らない程度に噛まれる。
だめだ、だめだ、そこはだめ。
頭の中に警鐘が鳴り、両手で項を隠す。
「隠さないで」
「や、あ、あぁ、っあ、ん、だ、あ、めだって」
「すぅ、噛ませて」
「うぁあ、あ、あ」
部屋中に俺とむぅのフェロモンが広がり、息を吸うだけで腹の熱が増したかのように感じる。
「ねぇ、すぅ。番になるんでしょ?なりたいよね?ねぇ、手を退けて?」
「う、うぅ、いぁ、あ、こ、あい、こわい」
もう十分すぎるほど気持ちいいから。
これ以上やっては、ダメになってしまう。
…番になるのが、怖い。
だって、だって。
「すぅ、俺だけの、すぅ。大丈夫、すぅだけ」
縛りたくない。
俺なんかと一生一緒に居るなんて。
「すぅだけなんだ。すぅ、信じて」
縋るかのような声に、俺は手を離した。
「う、あぁ、あ、むぅ」
でも、もういいか。
だって、うん。
αなら、別に。
俺が縛られるだけなら、良いじゃないか。
俺以外のΩを迎えても、俺は笑っていられるようになればいいだけだ。
だって、俺にとって、むぅが全てだから。
ヘラリと笑い、首元に顔を埋めるむぅの頭を緩く撫でる。
ああ、俺、今が1番、「しあわせ」だ。
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