if物語

アンさん

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人間×人間

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人間   「蒼弥そうや」   ×   人間   「凛河りんが


ガリャリと開いたドアの音に、スマホから目を離しそちら側を見る。


「ただいまー、蒼弥」


手に持ったカバンを部屋の隅に置きながら、こちらに笑顔を向ける凛河。


「おかえり、凛河」


笑い返し、アプリを閉じたスマホを机に置き、立ち上がる。


ギュッと凛河を抱き締め、首元に顔を埋める。


「蒼弥、今日はね、寒いから鍋にしよう」


抱き返してくれた凛河の頭を撫で、息を吸い込む。


「お風呂行こ」


いつも思うけど、凛河から俺以外の匂いがするのが気に食わない。


凛河はまだ学生だから、学校に行かないといけないのは分かってるけど…。


でもやっぱり、気に食わないものは気に食わない。


早く卒業して、ずっと2人で引っ付けれたらいいのに…そしたら、凛河から変な匂いも感じないし、俺が全部管理してあげられる。


「えー、先にご飯食べようよ」


「一緒に入る」


「え、ええ?じゃぁ、お風呂行く」


抱き締めながら風呂場に向かって引きずって行くと、慌てたように首に手が回った。




「ねぇ、蒼弥、今日はどこか行ってたの?」


「どこにも行ってないよ」


「本当?」


「どうしたの?」


スンスンと鼻を鳴らしながら俺の服の匂いを嗅ぐ、一生懸命な顔の凛河。


右手で凛河の頬を撫でると、その手を掴まれた。


「だって、匂うよ。香水の匂い。ねぇ、どこにも行ってないなら、ここに誰か呼んだ?」


先程と違い、目に光のなくなった凛河が俺を見上げる。


「さぁ、知らないな」


ニヤリと笑うと、凛河は何の迷いも無く俺の手に噛み付いた。


血が滲むほど強く噛まれた手が、ジンジンと痛む。


「ねぇ、浮気?どこのどいつ?女?男じゃないよね?許せないんだけど。ねぇ、聞いてる?」


「聞いてるよ」


顔を近付け、鼻先にキスを落とす。


「騙されないよ。誰って聞いてるの」


あぁ、可愛い、俺だけを見てる凛河。


「早くお風呂入ろ」


脱ぎかけだった服を全て脱ぎ、浴室へと入る。


「ああ、男ならそいつのアレ切り落として目の前で燃やしてやる。女なら二度と俺の蒼弥に手出せないように…」


ブツブツと独り言をぼやく姿をほくそ笑みながら見つめ、凛河に噛まれ血がプクリと出た手を舐める。


ああ、本当、可愛いなぁ。


凛河の身体に付いた歯型や鬱血痕を見て、ドクリと心臓が強く動いた。


俺の、俺だけの、凛河。




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