ペットになった

アンさん

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クロは黒

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うゆうゆと鳴いた後俺を見てぐるう?と首を傾げたクロの頭を撫でてやりながら何度か頷くと、クロは鼻を鳴らして匂い玉を俺に渡した。


付けろって事だろう。


なら、気に入ったという事で良いよな?


黒のリボンには青い筋と赤い筋が交差していて蝶々の様にひらりと揺れるソレは目を引く。


ユラユラ、ユラユラと風を受け揺れるチョーカーと、それに倣い漂うバニラの匂いを想像しひとつ頷く。


ああ、良いじゃないか、とても。


「とてもお似合いです。どうですか?」


嫌だったら自分で外してしまうクロは、鏡を見たきり動かない。


「ああ、これにする」


ずっと見つめるほど気に入ったのだろう。


頭を撫でてやると鏡をさっさと店員に返し俺に抱きついた。


抱き上げ顔を見ると、満足そうにうっとりとしている。


匂いにまた酔いしれているのか…好きだなバニラ。


チョーカーを買い上げ、他の店を覗きつつクロに合う物が無いか確認しながらゆっくりと歩く。


これから寒くなるからな。


出来るだけ暖かく過ごせるように何かあれば…。


「いらっしゃい、いらっしゃい!あ、おにーさん!可愛いヒト連れてますね!店内見てってくださーい!きっとお似合いのもの見つかりますよー!」


元気のいい店員の促すまま店内に入り物色を始め、初めに目に付いたのは防寒具。


マフラーとネックウォーマー…クロはどちらを選ぶだろうか?


一旦クロを降ろし、試着用のマフラーを首元に巻いてやる。


「どうだ?」


グイグイと布を引っ張る仕草から嫌だと判断して外してやり、次にネックウォーマーを付けてやる。


口元まで隠したクロは、ふはぁと深く息を吐いた。


どうやらネックウォーマーの中で匂い玉の匂いが充満しているようで離そうとしない。


そのネックウォーマーは試着品なんだ。


クロの好きな黒色の物を買ってやるから、1回離しなさい。


初めてごねるクロから悪いとは思うが無理矢理取り、ネックウォーマーの陳列棚へと足を向けた。


鼻を鳴らし不機嫌そうなクロに見えるように棚の前に立たせる。


「んゆ、るるー、るっ」


沢山並んだネックウォーマーから、クロはどんな物を選ぶのか。


右へ左へと身体を動かし頭は上から下を吟味している。


ぐるぐる鳴きながら真剣に選ぶクロに、少しばかり笑ってしまう。


ヒトなら獲物しょくじを前にする行為を…まさか獲物ネックウォーマーを前にするとは。


店員が棚の向こうからチラチラとコチラを伺っているのが目に入った。


口輪を付けずリードだけで管理されているヒトが商品を品定めするのは、さぞかし可笑しくそれでいて気が気でないだろう。


クロはどうやら何個かに絞ったようで、その前をウロウロとしている。


黒を基調とした紫の花柄が小さく刺繍されている物は分かったが、後はどれだ?


「クロ」


手を出すと、俺の手を握ったクロにまた笑ってしまう。


片手を陳列棚に向け「どれだ」と問うと、やはり紫の花柄を持ってきた。


それを受け取りもう一度指すと、今度は無地を、その次に白い花とクローバーの描かれたものを持ってきた。


他に興味は無いらしく、俺の手の中にあるネックウォーマーを見つめている。


3つだけか…まぁ、また追追足りなければ買えば良いか。


クロの手を取り隣の棚に移動し、イヤーマフをあてがうと試着品をすぐに外して返してきた。


イヤーマフは嫌いか。


だが、クロの耳に毛は生えていないし、寒いだろう?


「おにーさん、イヤーマフはダメだったの?」


どうやら棚の向こうから覗くのはやめたらしい店員が、カゴを手渡してくれながら話しかけてきた。


「ああ、そのようだ」


「じゃぁ、こっちのなんてどう?耳もカバーできるよ?」


そう言って差し出してきたのは、垂れ耳ウサギのような帽子だった。


ああ、これなら寒くないかもな。


クロに被せてやると、少し頭を振ったがどうやら嫌ではないようだ。


「種類はあるか?」


「もちろん!コッチにたくさん並んでるよ!」


尻尾を振りながら案内してくれる店員の尻尾を目で追いかけるクロ。


…こういう遊び道具があっても良いのかもな。


クロはまた黒色を選び、今度は2つ持って何か悩んでいるようだ。


どちらも買うのに、何に悩んでいるのか。


服装に合うか考えているのだろうか?


案外クロはセンスが良いからな。


まぁ、黒色ばかり選ぶが。





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