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【本編】~その後の2人~

一緒にいたい。

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オーランドさんと両想いになって年月が流れた。

その間に人族では王が何代か変わった。
俺は精霊王と知り合って祝福をもらったり、伝説と呼ばれる最古龍と友達になって皆に驚かれたりと色々あったけれど、魔王城は以前と変わる事ない時が流れている。
魔王様、キーランさん、レナルドさん、オーランドさん他の面々も変わりなく元気に過ごしている。
そう、変わりなく・・・



「早く結婚したい・・・」
抱擁し、恋人との限りある時間を過ごす午後、オーランドさんが口癖になった言葉を呟いた。
首元に顔を埋め、甘えるように擦り付けられて俺は笑みを漏らした。
「魔王様も、キーランも・・・いつまで経っても認めてくれねぇ」

あれから300年近くが経った今も俺は魔王城暮らし。
魔王様も、キーランさんも、レナルドさんも、まだ早すぎるから駄目だと言う。
何の考えもなく、ダメだという人達ではない。 
この世界に来てからずっとお世話になっている俺は大切な保護者の言葉に頷くしかない。
ちょっと・・・寂しい思いもしているけれど。
毎日会っているけれど、二人きりになれる時間はあまりない。



「ん・・・」
以前と変わらぬ口づけは心を今日も温かくする。
「・・・・・・忍耐・・・・・我慢・・・」
広い胸元に顔を埋める俺に、呟きが落ちてくる。
魔王城では、恋人同士の触れ合いはしないよう注意されている。
主にオーランドさんが。
一緒にいたいなら、オーランドさんも魔王城に住めばいいと魔王様は笑ったけれど、自邸で2人きりで過ごしたいから嫌だと即答してた。
だから毎日逢引だけ。
例え魔王城に泊まっても、一緒の部屋で眠る事は禁止されているし、周りに誰かいるからこっそり抱擁と、キスくらいで今と変わりない。
どうしても一緒に寝たいなら、皆で一緒に寝る事になっていて、それは絶対に嫌だとオーランドさんは泊まる事はない。
俺の寝顔を見られたくないのだとか・・・
キス止まりの逢引がオーランドさんは辛いようだ。
・・・そのせいでお泊りの時、激しいんじゃないのか?という思いもあるけれど、俺も魔王城では遠慮したい。
以前、魔王城近くの泉で・・・致してしまった時、またもキーランさんに見られてしまった・・・。
熱に浮かされ洩れ出た魔力が媚薬のような甘い空気を発してしまったらしく、軽い騒ぎが起きたらしい。
何で・・・
旅行する時はレナルドさんかキーランさんが一緒だし、そういった事はダメですよ~って空気を発してるからオーランドさんはヤキモキしっぱなしのようだ。
そのオーランドさんを見て楽しんでいるように俺は見えるんだけど・・・言わない方がいいだろう。
俺も皆の近くでは・・・ね。
あまり、外ではその・・・精霊達が見てるかもしれないし、恥ずかしいから部屋がいい。
結界が張られ侵入する者もいないし、二人きりで嬉しいし・・・

深い口づけの後、熱い吐息をついてオーランドさんが名残惜し気に離れた。
「おやすみ」
「・・・・おやすみなさい」
離れる体温に、寂しさを感じる。
もっと・・・長くオーランドさんといたい。
傍で感じていたい。
年月が経ったのに、気持ちは大きくなるばかり。
身体を重ねるのは、好きだ。
求められて、凄く大切に想われてるんだって、自分はこの人のものだと、この人がとても大切で愛しいと、幸福感でいっぱいになる。
ただ・・・快楽が深過ぎて未だに慣れなくて・・・
俺の体力がもつようになった分、回数も多くなった。
翌日には回復して動けるんだけど・・・連日はつらい。
それに・・・その状態に慣れてしまうのが怖かったりする。
オーランドさん無しじゃ生きていけなくなりそうで、限りなく求めてしまいそうで・・・
一緒に過ごせば過ごしただけ、どんどん気持ちが膨れ上がる一方で、溢れて溺れてしまいそうで、そんな自分が怖い。
好きで、好きで、堪らなく大好きで・・・愛してるという一言で片づけてしまうのは足らなくて。
そんな言葉じゃ追いつかない。
オーランドさんと出会わなかったら一生知らなかっただろう感情。



「・・・イツキ?」
無意識にオーランドさんの手を掴んでいたらしく、俺は視線を彷徨わせ離れた。
「・・・おやすみなさい」
「・・・あーっ!ダメだ!」
強く抱擁され、オーランドさんが自棄な声を出す。
手を引かれ、向かうのは魔王様の部屋。
いつかと同じような行動にまさかと思うけれど、オーランドさんは少し乱暴に扉を開いた。



「イツキと結婚させてくれ!もう限界だ!」


「・・・また今度、話を聞こう」
「認めてくれ・・・頼む」
まっすぐに魔王様を見据え、真剣な眼差しで頭を下げるオーランドさんに、読んでいた本を置いて魔王様は微笑んだ。
「思っていたよりもずっと我慢できたな」
「イツキを絶対に護る。絶対に悲しませない。命ある限り幸せにすると名に誓う」
「名に誓うか・・・そこまでしては認めるしかないねぇ」
自身の名をかけて誓うのは、それに命を捧げ契約するのと同じ事。
違えば、その身は滅びを迎えてしまう世界との重い契約でもあると聞いた。
「っなら!」
「でも、まだ駄目だ」
スウと、魔王様の瞳が細められて、オーランドさんは沈黙した。
話は終わりだと空気が告げている。
押し黙ったオーランドさんに、俺も何も言えない。

「魔王様・・・オーランドさんのところに泊まってきてもいいでしょうか」
「・・・2週間後の予定だったが、行っておいで」
俺から普段でない言葉に、魔王様も苦笑して頷いてくれ、部屋を後にする。

魔王城を離れ、結界の外に出るまで空間魔法は使えない。
ずっと手を繋いで歩くオーランドさんは足早で、でも俺に無理のないペースで。
「オーランドさん」
「ん?」
くいと引き留めれば、いつもの優しい笑みが返された。
「今日はその・・・シないで寝るだけで、いい?」
「・・・・あぁ」
暫しの沈黙の後、オーランドさんは小さく笑んで頷いてくれた。
ごめん。
でも、ただ、温もりを感じて眠りたい。
一緒にいたい。

擦り寄った俺を優しく抱きしめて、その夜眠りについた。
穏やかな時間。
幸せで温かな時間。
オーランドさんは少し強張ってたけど・・・俺はそのまま目を閉じた。


「オーランドさん」
「ん?」
「・・・大好き」
「っ!」
「おやすみなさい」
微睡ながら呟いて眠りへ落ちる。





「・・・生殺しだ・・・・」

一晩中、オーランドさんが起きていただなんて、幸せな夢に旅立った俺は知る由もなかった。







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