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ちょっと待って。
しおりを挟む「どこ?」
何も考えずに移転した俺は、目前の光景に声をもらした。
行った場所にしか空間移動できないから、行った事のある場所のはず。
一面の草原。森の中。近くには小川・・・
初めてこの世界に来た時の場所だと暫くして気づいた。
花がないとこういう景色になるんだ。
城に戻る気にもなれなくて、俺はそのまま草原に寝転んだ。
近くを精霊が飛び回ってて青や黄色の光がキラキラしてる。
前回は気づく余裕がなかった。
「嫌な態度だったな・・・」
嫉妬 した。
こんな醜く暗い感情、知らなかった。
知りたくなかった。
きっと酷い顔をしていると思う。
そんな顔を見られたくなかった。
楽しかった気持ちが一気に冷めた。
「・・・・最低だ」
本当に最低だ。オーランドさんにも凄く失礼な事をしてしまった。
謝らないと・・・・
でも、あの場所には戻りたくない。
あのお姉さんといるのを見たくない。
「・・・・いやだよ」
虹色の太陽は心と正反対に清々しい程綺麗だ。
「どこから来た?」
影が落ち、誰かが覗いているのだと目を開ける。
オーランドさんじゃない。
「・・・・エルフ?」
左右の髪以外は短く切りそろえられた、アッシュブロンド、俺よりも長く尖った耳。
人形みたいに整った顔の・・・ハイエルフがいた。
25.6歳くらいの美青年。
「こんな浅い場所で何してる」
「・・・後悔と日光浴を・・・・」
「・・・・・」
俺の答えに呆れた雰囲気が伝わる。
ハイエルフは感情の起伏が乏しく表情がない・・・・か。
「霊薬が群生した事があると聞いて、時々見に来ていた」
「そうですか・・・・」
初めのアレですね。
既に散って消えてしまいました・・・多分あの一度きりかと思います。
トゥルキと名乗った彼は、ずっとずっと奥深くの森にいるそうだ。
俺が魔王城で過ごしていると聞いて、初めて顔色が・・・というか眉間が僅かに動いた。
「魔人族と一緒にいる、だと?」
「皆、凄くいい人達なんです」
思い出して、顔が綻ぶのを、信じられないという空気が伝わってくる。
「私と一緒に行こう」
「え?」
「ハイエルフの里で過ごすんだ」
「あの・・・」
「本来外に出るべきではない。」
ぐいと腕を引かれ、その有無を言わさぬ強さに焦る。
「ちょ・・・ま・・・待って下さい」
オーランドさんと離れる? キーランさん達とも? 絶対に嫌だ!
振りほどけない腕に、移転で逃れようとするが、魔法が発動しない。
「なんで・・・・」
トゥルキさんの目を見た途端、グラリと眩暈が起き力が抜けていく。
何?これ・・・
「な・・・んで・・・」
オーランドさん・・・・
「目覚めた時には里にいる。大丈夫だ」
「・・・ゃ・・・・だ・・・」
会えないのは、嫌だ。傍にいたい・・・・オーランドさん・・・
神様・・・・これは愚かな嫉妬をした罰なのでしょうか・・・
崩れ落ちる体をがっしりと強い腕が抱きとめて、安堵感に目を閉じた。
「返してもらう」
「魔人・・・・」
ビリビリとした空気が肌を刺す。
息をつくオーランドさんは空間移動したのか飛行魔法できたのかわからないけれど、焦って、怒っていた。
また・・・怒らせてしまった・・・・本当にごめんなさい・・・
オーランドさんにすり寄った俺を見て、トゥルキさんの雰囲気が変化するのがわかる。
「・・・騙しているんじゃないんだな」
「そんな事するか」
「・・・傷つけたりしていないだろうな」
「・・・大事にする。本気だ」
「・・・・そう・・・・そうか。」
暫くオーランドさんと睨みあった?後、トゥルキさんは俺の手に木の実らしきキーホルダーを渡した。
「いつでも戻ってくるといい。呼べば迎えに行く」
「そんな日は来ない」
「さぁ?」
一陣の風と共に、トゥルキさんは姿を消した。
力の抜けた俺はどうなっていたのか見れなかったけれど、何事もなく別れたようで良かった。
「・・・イツキ」
ぎゅっと抱きしめられて、もう大丈夫だと、俺は意識を手放した。
これからもオーランドさんと一緒にいられる。良かった・・・・
ただ、お仕置きだけは、やめて下さい・・・・
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