ばぁちゃんのアンケートに答えたら、異世界へ転生するはめになった。【連載版】

4年経ちました。

俺がこの世界に来て4年が経った。

神様とは未だ出会えていない。
《夫》⇒《妻》に早く変更しないとそろそろ不味いぞって、俺の危機センサーが黄色から赤色に点滅し始めたのを感じる今日この頃。

周りの、小動物を見て可愛い～って眼差しが、変わってきたような･･･
自意識過剰かもしれないが、何かこう…とにかくゾワゾワが増してるんだ。
女性陣は何も変わらないのに。何故だ。
それもあってか、時間はあるというのに俺は少し･･･どころでなく焦っていたりする。
神様への祈願にも熱が入り、最近では偶に白銀の花が咲いたりするようになった。
今まで見た事もないそうで、激レアだと、どこかに保管されたらしい。



あれから各地を周り、魔王様の住む城へと入った。
戦争のない平和なこの世界は力を持つ魔王様も穏やかでとてもいい人だ。
黒髪に赤目、30代後半～40代始めあたりのイケオジ様。
魔王様の保護の元過ごす事となった俺は安全な城の一室を与えられ、生活を送っている。
ご飯も日本とそう変わらず、美味しくて言う事なしだ。
偶に日本の料理を作って皆に振舞ったりしている。
家賃は咲かせる白い花でいいと言われた。
どうやら薬になるようで、高価なものだったらしく、返せるものがあって何よりとホッとした。
余りだと渡された大量の金貨に挙動不審になったのは記憶に新しい。
これが毎月･･･因みに年月は地球と同じだった。
今では収納空間の一角が金貨の山でキラキラしている。



なかなか魔法を発動できない俺に、魔王様直々に教えてもらう事となったのだが、練習場だと連れ行かれた砂漠で初めて放った水魔法は、そこを広大な湖へと変えてしまった。
慌てて蒸発させようと火魔法を使ってみたら、溶岩地帯と変り果て････見るも無残な光景となってしまった。
その時の魔王様の顔があまりにも蒼白で愕然としていたので、これはダメなやつなんだと悟り、魔法はほぼ諦めた。
少しでも調整できるようになればと何度も試したが、ダメだった。
これ以上地形が変形するのも、魔王様の引き攣った顔を見るのも、耐えられない。
どれも規格外で使い物にならないのだ。
軽く放っただけでも、とんでもない規模の魔法になってしまうのは明らかに異常だ。
エルフの得意とする植物魔法で森にしておいたけれど、ジャッ〇と豆の木　みたいな巨大な木がズラーッと･･･上にいけば誰かに会えるのか？
もしかして神様に会えますかね？　登るべきですか？

唯一良かったのは生活魔法のクリーン
自分にかけただけなのに、何故か修復機能も加わって城全体を新築同様にし感謝された。
一度行った事のある場所ならば移動できる空間魔法と生き物以外の収納ができる収納魔法だけは問題なく使えた。
飛行魔法は超音速となり、ばぁちゃんの元へ逝きそうになったので一度きり。
治癒とかもできるかもしれないけど、変な機能が加わったりして、もし墓の中の死者が甦るなんて事があったら･･･とあり得なくもない可能性に試す事ができないでいる。
あれだ、神様の加護のせいだ････焦って加護つけてったから調整してないんだ････多分。
出だしからミスだったから、修正されずに重なった何かがあるとしか思えない。
全属性使える人は今までいないらしいから、絶対に加護のせいだ。
気づかずに冒険して魔法使ってたら、環境破壊しまくって歴史に名を遺す破壊者になってるとこだったよ。

神様、そろそろ連絡もらえませんかね？





毎日欠かさず行われる熱心な祈願に、世界神ヘリオスは気づいたのだが、その世界神を生み出した創世神の加護を持つイツキに、自分が応えられるわけがないと見事にスルーされているなど知る由もなく。
俺は今日も祈りを捧げている。





「イツキ、暖かくなってきましたし、旅に出ましょうか」
そう言って部屋に入ってきたのはレナルドさん。
魔王城に入ってからも毎日のように会いに来てくれる。それはオーランドさんやキーランさんもだ。
本当にいい人達だ･･･
記憶のない俺を旅に連れ出て、少しでも何か思い出せれば、知っているハイエルフに会えればと思ってくれているようで、申し訳なくて神様に転生させられた事を話した。
アンケートの事は話していない。話せるわけがない。
だが、３人はそれでも変わることなく声をかけてくれる。
この世界をもっと楽しんで好きになって下さいと言って。
３人の事も色々と知った。


レナルドさんは完璧そうに見えて、結構うっかりしてるところがある。家事はできなくて、部下達がいつもやっているらしい。
その人柄から皆に好かれ、とてもモテるので、ちょいちょいつまみ食いをしているとか。
痴情のもつれがないのは、王子様所以というところだろうか。
性に対してオープンなようだから、問題にもならないのかな？　他２人も同様に凄くモテるけれど、浮いた話は聞かない。
本当に穏やかな優しい人で、微笑みが絶えたのを見た事がない。
魔法が凄く上手で、指南しているのを何度か見た事がある。俺も教えてもらおうとしたけど、ゾワゾワが襲って身につかなかった･･･何でだ。

オーランドさんは外見と想像がつかないけれど、家事は全て出来る。ちょっと強引でガサツなところもあるけれど、とても優しく誠実な人だ。笑った顔は太陽のようでこっちまで温かくなる。
今も変わらずガシガシと頭を撫でられるのは、結構お気に入りだったりする。
一度、剣を交えた模擬戦を見せてもらった事があるけれど、圧倒的な強さは惚れ惚れするほど恰好よかった。
よく自宅に招いてくれて、そこでご馳走になる手料理はどれも絶品だ。
特にお菓子は今まで食べてきた甘物のなかで一番かもしれない。チーズケーキが特に････また作ってもらおう。

キーランさんは凛とした雰囲気のまま、頑固なところもあるけれど、周りを観察し的確な判断を下すデキル人。
心を許した人にはとことん優しく懐に入れてくれる。やっぱり落ち着く人だ。
一人っ子だった俺の、欲しかった兄のようで、つい甘えてしまう。
一番年下ながら時期魔王候補とまで言われているのを耳にした。３人の中で一番強いのか？人はみかけによらない。
家庭教師をしてもらっているけれど、教えるのが本当に上手い。
褒められたくて頑張ってしまう。

仕事は･･･何してるのか知らない。
3トップといわれているくらいだから重要な仕事をしているのだろう。
種族も違う俺が何かできるものでもないし、向こうも話さないから聞かない事にしてる。






魔力に反応してか、俺の容姿は早々17.8歳に。身長は170㎝くらいになった。
伸びた髪を短く切りたいのだけれど、皆が今のままがいいと言うのでそのままにしている。
オーランドさんくらいに短くしたいと言ったらレナルドさんが初めて泣きそうな顔をしたっけ。
微笑み以外の顔、この１回だけ見てるな。もの凄い罪悪感に襲われた･･･


今まで出会ってきた女性陣にはことごとく相手にされずにきたが、成長したこの姿ならば。
「あの方達（レナルド・オーランド・キーラン）との事、応援してます」
って精神ガリガリ削られるのは終わりにするんだ！
今度の旅で彼女を見つけるんだ！


収納魔法があるので荷物は必要なく、身一つで旅に行ける。
新たな出会いに胸躍らせて、俺は魔王城から旅立った。