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信じられない 1※
しおりを挟む寮に到着した俺は、2人部屋の扉を開けた。
そして信じられない光景が目に飛び込んでくる。
「んぁっ……そこ、もっと突いて……ああっ!」
部屋に広がる水っぽい音。そして肌と肌がリズミカルにぶつかり合う音。
2人の男はリビングのソファで1つに繋がっていた。
甘えるような声と、フサフサと揺れる金色の髪。そのほっそりとした腰はもう1人の大男にがっしりと掴まれ、激しく揺さぶられている。
俺はいつの間にか拳を握っており、わなわなと震わせていた。
「おまえら……」
ようやくこちらの存在に気がついたのか、2人は動作を止めるとこちらを見る。
「あ、緒里おっかえり~」
仰向けで横たわっていた悠里は起き上がると、いい笑顔で俺に手を振る。
東は俺を一瞥するも、興味なさげに己のブツを1度悠里の中から抜く。そして悠里を四つん這いにさせると再びその中に挿入した。
「んぁ……」
その動きに連動するように、悠里も腰をくねらせる。
どうかこれが夢であって欲しい。
しかし俺の思いとは反し、規律の良い抜き差しが再開される。
悠里は我慢ができないかのように喘ぎ声を漏らすも、視線はしっかりと俺の方に向けている。
「はぁ、い……おりも……まざる?……んんっ、あっ……きもちいいよ?」
頬が紅潮し、息が途切れ途切になっていることから本当に気持ちいいのだろう。
東があいつの乳首をつねる度に体をビクビク震わせている。
だが俺は正直ブチ切れそうだった。ヤるのは悪くない。だがヤるなら他所でヤれ!
自分の兄弟のセックスなんて誰が見たいんだ。グロすぎるだろ。
「10分で終わらせろ。そして跡形もなく綺麗に片付けろ、いいな?」
それだけ言い残し、俺はすぐさま部屋を出た。
後ろから悠里の不服そうな声が聞こえたが、無視一択だ。
せっかく部屋のある5階まで上がってきたが、気分転換で外に出るために再びエレベーターで降りた。
なんて最悪な転校初日なんだ。
悠里のやつ、絶対わざとだ。何を企んでいるのか知らないが、俺が後から帰ってくることを知っててあそこでヤッてたんだ。東の寝室にでも入ればいいのにそうしない。
パッツンの言葉を思い出した。
『あのビッチは頭が切れて厄介だから手こずってたけど、こっちはそうでもなさそうだな、安心した』
あいつの言う通りだ。悠里はただのトラブルメーカーではない。頭がいいのだ。
これまで数多くの問題を起こしてきたが、純粋なイタズラもあれば、目的のあるイタズラもしてきた。
それに毎回俺は四苦八苦し、振り回されている。
俺が尻拭いをしてはいるが、それは兄であるからであって、あいつより優れているからではない。
そう理解しているため、今回は何をやらかすんだとヒヤヒヤしてしょうがない。
本日ウン回目のため息をつき、寮の外に足を運ぶ。重い足取りで向かう先は、道を覚えたての中庭。
帰るのに30分もかかってしまったのは違う道を通ったり、迷ったりしたからであって、普通に行けば10分もかからない。
落ち着いて道をたどると、色々なものが見えてくる。
昼間の騒がしい校舎とは打って変わって、夜の静けさをまとった校舎はもの寂しくもあり、不気味でもある。
しかし窓から射し込む月光は神秘的で柔らかく、先程の過激な絵面を浄化してくれているような錯覚さえ覚える。
少し先には微かな機械音を放つ自動販売機があり、そのボタンがひとりでにピカピカと赤色に光っている。
「ドリンクでも買っていこうかな~」
そう思って値段を見ると、通常の数倍もする値段に目玉が飛び出そうになる。
え?小さいボトルで500円?ぼったくりすぎじゃない?
コーヒーを見てみると、見たことがないメーカーだった。
高級豆ってことでおっけー?じゃなきゃここの坊ちゃんたち超ぼったくられてることになるぞ。
お金の心配はいらない。
母さんがいくらでもお金が出てくるカードを渡してきたからね。
ただ庶民派の俺の感覚的にはこれをポチッと押してしまうことに抵抗がある。
……いや、買おう。
あいつらのあんな姿を忘れるために飲んでやる。
ボタンを押し、カードでサッと支払うと、コーヒーが1本ボトンと落ちた。それを取り出そうとすると、おもむろに自動販売機から軽快な音楽が流れる。そして「あたり~!」と元気な女の人の声がすると、もう一度ボトンと下に落ちる音がした。
もしかして?
取り出し口を覗くと、なんと2本のコーヒーが横たわっている。
人生初の当たり!
ていうか金持ち学校の自動販売機にも当たりのシステムとかあるんだ……
まあなんでもいっか。
細かいことは置いておき、俺はウキウキとした気分でコーヒーを手に取る。
もはや俺をいたわってくれるのはこの自動販売機しかない。
よしよしと自動販売機のボディーを撫で、心の中で女神と呼ぶことにした。
そんな女神とはお別れし、歩くこと数分。目的地の中庭に到着した。空には薄い雲がかかっているが、月はちょうどそれに被っていない。
月明かりに十分に照らされて、夜にもかかわらず植木や花が鮮明に見える。雲がなければ星も綺麗に見えたかもしれない。
とりあえずベンチにでも座ろうと思い、空に向けていた視線をベンチに向けると、思わぬ光景に心臓が跳ね上がった。
人がいた……!
なんと、こんな時間に先客がいたのだ。顔ははっきりとは見えないが、恐らく生徒だろう。男は黒っぽいTシャツに、緩めの長ズボンを履いている。部屋着だろうか。
月明かりがちょうど彼の手元を照らし、照明の役割を果たしている。そしてその手には本が。
なるほど、中庭で読書か。優雅なやつだな。
もし俺が隣に座ったら読書の邪魔になるよな?でもベンチあの1つしかないんだよな……金持ち学校のくせになんでここでケチるんだか。
俺はここでふと手元に2つのコーヒーがあることを思い出す。
そうだ……
俺は読書中の男にそっと近づく。ちょうど月の光が俺によって遮られ、男の手元には影ができる。
「あの、こんばんは……?」
そう声をかけると、男はゆっくりと顔を上げる。
……驚いた。
こんなに美形な人初めて見たかも。
男の顔はどこらかどう見ても俳優かモデルのようにしか見えない。色白で、ハッキリとした二重に密で長いまつ毛。自前の涙袋によって甘い印象を与える目元は、見つめられるとつい逸らしてしまいたくなるほどだ。
鼻筋も通っており、小鼻もスッキリとしている。唇はややカサついているが、男なんてそんなものだろう。しかし、それでも不潔な印象は一切与えない。
それに遠くから見たら分からなかったが、脚がかなり長い。恐らく立ち上がったら180センチ以上はあるだろう。
芸能人か?
俺が目の前の美形に驚いていると、その男の綺麗な眉間にやや皺が寄る。
「……悠里……?」
低いが柔らかい声音から聞き慣れた名前が出てきて俺は一瞬言葉に詰まった。
「えっ……あ!違います!俺緒里って言います。悠里の双子の兄です」
「双子?」
「そうです……」
「ふーん」
それだけ言うと、男は視線を再び手元に戻す。
俺は慌てて立つ位置を変え、本に月光が当たるようにする。
この人、悠里を知ってるってことはまたあいつのセフレ……?
でもあまりそんな雰囲気しないけど……
そんなことを疑問に思いながら、図々しくも隣に座る。
もうあの部屋では事が終わっているだろうけど、まだ戻りたくないからな。お邪魔するよ美形君。
「……」
「……」
静かにパラッと本をめくる音だけが響く。
悠里について聞きたいけど、さすがに今じゃないよな……
俺は持っていたコーヒーを1つ美形君の横に置く。そしてもう1つはキャップを開け、自分で口につけた。
これは……高級豆なのか??俺にはわからん。
首を捻っていると、美形君が口を開く。
「このコーヒーは?」
「ああ、あげますよ。当たりで1本ついてきたんです」
自分の横に置いてあったコーヒーに気が付いた美形君は、それを手に取ってまじまじと見つめる。
が、みるみるうちに眉間にシワが寄り始める。
お?どうした?
不思議に思っていると、美形君はそのコーヒーを俺の方に寄せてきた。
「いらない」
「コーヒー嫌いですか?」
「人からもらったものは口につけない。何が盛られてるか分からないからな」
そう言うと、俺に疑わしげな視線を向けてくる。
まさか俺がコーヒーに薬でも盛ったと思ってるのか?それはさすがに考えすぎだぞ!
「まだキャップも開けてないコーヒーに何をどうやって盛るんですか?」
「それは盛った人しか知らない」
「な……」
道理がないじゃないか!
まあいいや、何がなんでもコーヒーをあげたいというわけでもないし。女神から俺へのおすそ分けだし。
まあこれだけの美形がこんな学園にいたら、薬のひとつやふたつ盛られることもあるのだろう。とんでもない学園だ。
俺はしばらくそのベンチに座った後、さすがに時間を潰すのにも飽きてきたため寮に戻ることにした。
美形君には軽く挨拶をしたが、目も合わせずに「ああ」と返事を返されただけだった。まあ反応してくれるだけありがたいけど。
**********
★悠里視点
緒里のご要望通り、桂士朗との楽しい時間をさっさと終わらせ、ぐちゃぐちゃになったソファやらシーツやらを整える。
「桂士朗、念のため窓開けて換気しといて」
「ん」
桂士朗は言われた通りに素直に窓を開ける。しかしその表情は不満そうだ。
俺は脱ぎ捨ててあったワイシャツを拾い上げ、袖を通しながら笑う。
「なんでこんなところでヤったんだろうって思ってるでしょ?」
「わざとだろ?」
さすが桂士朗。俺を理解している。他のセフレとは比べ物にならないほど利口だ。
俺は思わずニヤリとする。
「もちろんわざとだよ。緒里に見せつけるために」
「なんのために?」
なんのために、か……
俺は少し考える。
小学生の頃からずっと感じている緒里への違和感。それ以前は感じなかった。なぜなら俺たちは同じだったからだ。
なのにある日を境に緒里は変わった。何が緒里を変えた?本来なら緒里もこっち側だったのに。
「緒里を目覚めさせるために、かな?」
「なんだそれ」
桂士朗は長い前髪の奥に隠れる切れ長の目を細める。
可愛いな、真剣な表情しちゃって。
俺は桂士朗を前から抱きしめると、その首元にキスをする。
「緒里が元に戻ったら、俺たち3人でいいことしようね♡」
「よくわかんねーけど、俺はおまえしか抱くつもりはないよ。おまえの兄には興味無い」
それを聞いて気分が下がる。
抱きしめていた手を離し、シャツのボタンを留める。
「俺はね、緒里が大好きなの。小さい頃は何をするのも一緒だったんだ~。今の緒里もいいけど、やっぱり一緒に楽しんだ方がいいじゃん?だから、頼んだよ桂士朗。俺と緒里、どっちも抱いて。桂士朗が嫌なら、他の人に頼むから無理にとは言わないけど」
「……」
何か言いたげな桂士朗だが、気が付かないふりをする。
俺は緒里優先だからね。
あーあ、早くエッチな緒里を見たいな~きっと俺と同じように可愛いんだろうな~
そのためにはこれからちょっとずつ仕掛けていく必要があるけどね。そのためにこの学校に転校させたわけだし。
ほんと、これからが楽しみだな♡
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