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第30話 心を焦がし愛し愛されて

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 瑛太が杏奈と結婚して彼女から学んだ事は、結婚生活を上手く行かせる為の基本的なルールは、いかに伴侶に心配を掛けないようにするかという事を念頭に置いて日々の生活をする事だった。

 そして、派手で甘美な生活を目指すのではなく、いかに日常の中で小さな喜びを感じそれこそが幸せだと認識して生きていけるかという事だ。周りの人を大切にして、小さな喜びを感じていく結婚生活が必ず、二人を幸せにする。

 何かの障害にぶつかって苦しくなったら二人で寺社に行き、自然を見に行き空気を吸う。その時に自分は一人ではない事に気が付く。そして、子供ができたら子供と一緒に自然に目を向ける。自分は多くの人のお陰で生きている事に気が付き、再度感謝の念を抱く。

 今、瑛太は一生懸命に生きていた。そして、杏奈や息子、沢山の人たちに支えられて生きている事に心から感謝している。

 瑛太は子ども食堂の経営者として、恵まれない子供たちに無料とは言わないが杏奈が拵えた料理を百円で食事をさせている。その百円も出せない子たちには、陰で百円を返して上げている。

 そしてボランティアの講師たちが勉強も見てくれている。更には放課後等デイサービスをも経営して身体・発達・精神などの障害に関わりなく子供たちとその保護者たちに対して献身的にお世話させてもらっている。

 そう瑛太の人生は杏奈が敷いたレールの上を、尻を叩かれながらひた走ってきた。男にとって、そして夫にとって、それこそが幸せな生き方なのかもしれない。今もなお、時々に弱音を吐く瑛太を杏奈は支えている。二人が幸せになった理由はお互いの違いを理解し尊敬できているからかもしれない。

 夫婦の幸せで一番大切なのはお互いの違いを理解し尊敬できるかどうかで、完全な人間はいないのだから足りない部分はお互いが補うそんな夫婦が幸せに一番乗りになると瑛太は思っていた。

 五十歳代に入った杏奈は昔と少しも変わらない素敵な女性だ。今も瑛太は杏奈にいつまでも恋をして尊敬し愛している。そして、杏奈もまた瑛太のそういった素直さと寛容さが好きで、未だに二人は心を焦がし愛し愛されて生きている。

― 了 ―
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