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第一章
第91話
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高坂は昨夜、帰って来てから何もしないで入浴後、直ぐに朝まで寝てしまった。最近の高坂は精神的に疲れていたので、自分の中では精神状態をニュートラルに持って行こうとして様々な試みをしていたが、男性は仕事が一番なので、何をやってもスッキリしないでいた。
まずは起きてシャワーを浴びながら歯磨き、その後髭を剃って洗濯をした。このような日常生活が苦も無くできるのは前妻が何もしない人だったから逆に良かったと思っていた。
バスタオルで体を拭いてパソコンの電源は入れたままで寝ていたが、熟睡していた所為か気付かなかった。
見ると昨夜から愛美からメールと留守電が入っていた。
大久保愛美
こんばんは、帰宅して母と話しをしました。
「何で高坂さんにあんなに冷たくするのか」と訊いたら、
「冷たくした覚えがない」と言ったので、娘の私から見ても、
「失礼千万だと思う」と言うと、
「愛美、ダメよ。貴女、茂雄さんと結婚しているのよ」と言われました。
私は「ママ、何を考えているの?」と言ったところ、「高坂さん、高坂さんって煩いからよ」と言われて、その後は話しになりませんでした。
役に立たずにすみませんでした。
高坂
おはようございます。
昨夜、疲れて寝てしまったので返信できなくてごめんなさい。
やはり専務は答えませんでしたね。
分かっていた事なので、愛美さんは気にしないで下さい。
色々とお気遣いありがとうございました。
留守電を訊くと、「愛美です、こんばんは、もう寝ちゃったのでしょうか、この後にメールしておきます」だった。
※
毎朝、ホテル周辺を箒と塵取りを持って歩き、最後にお社の周りを清掃して、「幸福になりたい」「災難は避けたい」と願ってはいるものの神様は、「お前は人生の修業が足らん、もっと修業せぇ!」と言われているかのように、災難が降っては沸いている高坂だった。
人それぞれに幸福や災難を測る物差しを異にするにしても願う気持ちは共通している。世の中は嫌な事があまりにも多過ぎて、良い事には中々巡り逢えない。少なくとも悪い巡り合わせには巻き込まれないようにといつも願っていた。交通事故、火災、パワハラ、苛めなど増える一方ですし、事件も多様化していると良く耳にする。
既に毎日のように身に覚えのない事で経営者から苛められていた。まるで悪性のウイルスと紙一重で生活しているようなものだ。
反対に呼び込みたい「福」は、それらのウイルスを自身に近付けたくない事だ。健康を維持して、日々楽しく生きる事ができればこんな幸福な事はないのだが、中々平凡には生きていけないものだ。
高坂は東京で必死に仕事に明け暮れていた時期が懐かしかった。
「過去を振り返るな!」とは良く耳にする言葉だが、今は過去の楽しかった日々を思い、歯を食いしばって生きている高坂だった。救いは、愛美の優しさだ。
「さぁ、今日も頑張って仕事しますか!」と自分を鼓舞したと日記に書いてあった。その足で、妻に声をかけてホテル外の清掃に出掛けた。
まずは起きてシャワーを浴びながら歯磨き、その後髭を剃って洗濯をした。このような日常生活が苦も無くできるのは前妻が何もしない人だったから逆に良かったと思っていた。
バスタオルで体を拭いてパソコンの電源は入れたままで寝ていたが、熟睡していた所為か気付かなかった。
見ると昨夜から愛美からメールと留守電が入っていた。
大久保愛美
こんばんは、帰宅して母と話しをしました。
「何で高坂さんにあんなに冷たくするのか」と訊いたら、
「冷たくした覚えがない」と言ったので、娘の私から見ても、
「失礼千万だと思う」と言うと、
「愛美、ダメよ。貴女、茂雄さんと結婚しているのよ」と言われました。
私は「ママ、何を考えているの?」と言ったところ、「高坂さん、高坂さんって煩いからよ」と言われて、その後は話しになりませんでした。
役に立たずにすみませんでした。
高坂
おはようございます。
昨夜、疲れて寝てしまったので返信できなくてごめんなさい。
やはり専務は答えませんでしたね。
分かっていた事なので、愛美さんは気にしないで下さい。
色々とお気遣いありがとうございました。
留守電を訊くと、「愛美です、こんばんは、もう寝ちゃったのでしょうか、この後にメールしておきます」だった。
※
毎朝、ホテル周辺を箒と塵取りを持って歩き、最後にお社の周りを清掃して、「幸福になりたい」「災難は避けたい」と願ってはいるものの神様は、「お前は人生の修業が足らん、もっと修業せぇ!」と言われているかのように、災難が降っては沸いている高坂だった。
人それぞれに幸福や災難を測る物差しを異にするにしても願う気持ちは共通している。世の中は嫌な事があまりにも多過ぎて、良い事には中々巡り逢えない。少なくとも悪い巡り合わせには巻き込まれないようにといつも願っていた。交通事故、火災、パワハラ、苛めなど増える一方ですし、事件も多様化していると良く耳にする。
既に毎日のように身に覚えのない事で経営者から苛められていた。まるで悪性のウイルスと紙一重で生活しているようなものだ。
反対に呼び込みたい「福」は、それらのウイルスを自身に近付けたくない事だ。健康を維持して、日々楽しく生きる事ができればこんな幸福な事はないのだが、中々平凡には生きていけないものだ。
高坂は東京で必死に仕事に明け暮れていた時期が懐かしかった。
「過去を振り返るな!」とは良く耳にする言葉だが、今は過去の楽しかった日々を思い、歯を食いしばって生きている高坂だった。救いは、愛美の優しさだ。
「さぁ、今日も頑張って仕事しますか!」と自分を鼓舞したと日記に書いてあった。その足で、妻に声をかけてホテル外の清掃に出掛けた。
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