153 / 177
第3章
22話 義母の付き添いで
しおりを挟む「下ろせって言ってるだろ」
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる